「満中陰志」とは、葬儀でいただいた香典へのお礼の品(香典返し)のことです。
礼節を持って贈るべき返礼品のため、品物選びや贈り方のマナーには細やかに気を配る必要があります。
しかし、家族葬の増加により葬儀に参列する機会自体少なくなっている昨今では、
「満中陰志の品物に何を選べばいいのかわからない…。」
とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、喪主や遺族の方に向け、満中陰志の選び方のポイントや、相手別のふさわしい品物について詳しく解説します。
▶満中陰志の由来やマナーについて、詳しく知りたい方はこちらもご参照ください。
目次
満中陰志の品物 選び方のポイント
まずは、満中陰志の品物選びの基本となるポイントを解説します。
大切なのは、以下の2つです。
- 満中陰志の「予算相場」を押さえて選ぶ
- 「消えもの」を基本とし、相手の負担にならない品を選ぶ
葬儀に列席してくださった方に失礼な印象を与えないよう、ぜひ押さえてください。
【予算で選ぶ】満中陰志の相場は「半返し」
満中陰志の品物を選ぶ際は、はじめに予算を設定します。
満中陰志の相場は、いただいた香典の「1/3〜半額」でお返しする「半返し」です。
<半返しの例>
- 1万円の香典をいただいたら3,000円~5,000円程度
- 5,000円の香典をいただいたら1,500円~2,500円程度
相場より安い品はもちろん、高い品を贈ることも失礼にあたるため注意してください。
お名前と香典の金額、満中陰志の予算をリストにしておくと漏れがなく安心です。
【消えものが基本】満中陰志の品物 選び方
「不祝儀を後に残さない」という考えから、満中陰志をはじめとする弔事のお返しは「消えもの」を選ぶのが基本です。
お菓子や日用品など、消費したらなくなってしまうものを選びましょう。
加えて、相手の負担にならない配慮も必要です。
<品物選びの基準>
- 1か月以上日持ちするもの
- 個包装のもの
- 常温で保存できるもの
相手に消費を急がせる「生菓子」や「個包装でないもの」、保管に困る「冷蔵・冷凍品」は避けてください。
タブーは「おめでたいもの」「四つ足生臭もの」
満中陰志には、タブーとされる品物もあります。
<満中陰志に避けるべき品物>
- 四つ足生臭もの…殺生を連想させる「お肉(四つ足)」「生魚(生臭)」などの生もの。
- 慶事を連想させるもの…お酒、かつお節、昆布など、慶事に贈られる品
- おめでたいことを連想させる意匠…「紅白」「鶴亀」「松竹梅」など
品物そのもの以外に、パッケージにも注意が必要です。
赤や金など華美な色を基調としたデザインを避け、「グレー」「銀色」「薄紫」「白」などの落ちついた色を選びましょう。
【定番6選】満中陰志に人気の品物TOP3
ギフト専門店で満中陰志によく選ばれている品物を紹介します。
迷ってしまいがちな品物選びですが、実際に多くの人から支持を集めている品物ならば安心です。
世代や性別を問いにくい、どなたにも安心して渡せる定番品ばかりですのでぜひ参考にしてください。
同僚や友人への満中陰志に贈ることが多い、予算1,500円〜3,000円前後の品物を取り上げます。
1位 カタログギフト
近年「カタログギフト」は満中陰志として定着してきています。
お相手が好きな品物を選べるため、失敗する心配が少ない品物です。
ひと口にカタログギフトといっても、コンセプトのはっきりした総合カタログや、グルメに特化したカタログなど、数多くの種類があります。
予算や贈る相手によって贈り分けをすると、より気に入っていただきやすいでしょう。
カタログギフトには「四つ足生臭もの」と呼ばれる肉・魚や、食器や雑貨など消えものではない品物が掲載されていますが、これはマナー違反にはあたりません。
贈るのはあくまでもカタログであるため、安心して贈ってください。
2位 お菓子
日持ちのするお菓子は昔から、満中陰志の定番です。
個包装の詰め合わせなら分けやすく、食べ切りやすいためどのような家族構成の方にも満足していただきやすいでしょう。
弔事には和菓子のイメージが強い方も多いかもしれませんが、最近では洋菓子もよく選ばれています。
上品で落ちついた印象の品物であれば、和菓子・洋菓子に関わらず満中陰志にふさわしいといえるでしょう。
ただし、パッケージやお菓子自体が華美すぎる品は満中陰志にふさわしくないため避けてください。
3位 タオル
満中陰志の贈り物のタオルには「悲しみをつつみこむ」という意味があります。
弔事にタオルが贈られる理由にはさまざまな説がありますが、故人の白装束にちなんで、昔からよく白いタオルが贈られていたそうです。
そのため色柄は白の無地とするのが望ましいとされていますが、ほかにもグレーやクリーム色、紺色など、主張の強くない色が選ばれています。
タオルは価格帯によって、肌ざわりや機能性が大きく異なる品物です。
満中陰志には、普段使いの品よりも高品質の品を選ぶと、相手への感謝の気持ちが伝わりやすいでしょう。
同じ予算ならたくさん入った詰め合わせより、1〜2点入りでも質の高いものを選ぶのがおすすめです。
【年配の方へ】満中陰志にふさわしい人気の品10選
ここからは、満中陰志にふさわしい品物を相手別に解説します。
目上の親族や会社関係の方への満中陰志は、華美さをできるだけ排し、品のある落ちついた印象の品物を選ぶことが大切です。
年配の方は贈答マナーを気にされることも多いため、パッケージも含め慎重に検討しましょう。
年齢や健康への気遣いがあると、より親切です。
上品な和菓子
和菓子は上品な印象があり、甘すぎないため年配の方にも気に入っていただきやすい品物です。
「故人の好きだったお菓子」を選べば、生前の人柄が偲ばれ、心に残る満中陰志となるでしょう。
老舗や有名店の品など、上質さや高級感を感じさせる品物なら、より安心してお渡しできます。
80代以上など年齢の高い方へ送る場合は、かみ砕きやすく、飲み込みやすいものを選ぶなど「食べやすさ」に配慮しましょう。
和菓子の中でも大福や練り切りなど、「生菓子」に分類される品は賞味期限が短いため避けてください。
弔事のお返しの定番 お茶
満中陰志にお茶は、昔から定番です。
かつて境界を区切るように植えられたことから、お茶には「あの世とこの世とを区切り、故人との別れを受け入れる」という意味があるとされています。
最近ではティーバッグが人気ですが、年配の方は急須で茶葉からお茶を淹れる習慣がある方も多いでしょう。
とくに礼を尽くして感謝を伝えたい方には、味や香りが本格的な茶葉タイプの品を選んではいかがでしょうか。
食卓に上げやすい海苔
海藻である海苔は、精進料理によく用いられたことから、弔事のお返しの好適品とされてきました。
毎日の食事に使いやすく日持ちもするため、持て余す心配がない点も、選ばれる理由の一つです。
満中陰志には、普段使いの品よりも、「有明海産」や「瀬戸内海産」など、産地にこだわった品を選ぶと満足していただきやすいでしょう。
ごはんのお供に 梅干し・佃煮
日本の伝統的な食品で、ごはんのお供に最適な梅干しや佃煮は、年配の方にとって日々の食卓で使いやすい品です。
しっかりと食事をとり、健康でいてほしいという気持ちも伝わるでしょう。
満中陰志には、質が高く高級感のある品物選びが大切です。
【若い世代の方へ】満中陰志にふさわしい人気の品10選
昔から「満中陰志の定番品」とされる品は、若い世代の方にとっては使いづらく、持て余してしまうこともあります。
若い方には定番とは少し違った、目新しい品の方が気に入っていただけることも多いでしょう。
とはいえ、華やかすぎるものは満中陰志にはふさわしくありません。
弔事のマナーを逸脱しない範囲で、贈りやすい品を紹介します。
休憩に最適 コーヒー・紅茶
日持ちのするコーヒ―や紅茶は、満中陰志として定着してきています。
最近では、日本茶を飲む習慣がなく急須を持たない人も増えているため、若い方に飲み物を贈るならコーヒー・紅茶が最適でしょう。
手軽に飲める「インスタント」「ドリップバッグ」「ティーバッグ」がよく選ばれています。
手軽に栄養をとれる スープセット
缶詰やレトルトのスープは、普段の食事に取り入れやすく日持ちも長いため、満中陰志に適した品です。
手軽に栄養をとれるため、忙しい中でも健康や美容に気を遣う方に気に入ってもらいやすいでしょう。
保管しやすいため「備蓄」としても重宝します。
ただし、冷蔵・冷凍品は保管場所の問題があるため贈らない方が無難です。
肌ざわりのよい国産タオル
今治タオルなどの高品質な国産タオルは、実は若い世代の方にも贈りやすい品物です。
タオルは消耗品ではあるものの、最近では肌ざわりやインテリアとの調和を求める人が多いといわれています。
髪や肌にやさしいさわりごこちで、見た目にも高級感のある国産タオルは、美容やインテリアへの関心が高い方にも重宝されるでしょう。
部屋になじみやすい、ナチュラルな色を選ぶのが鉄則です。
食事を豊かにする調味料
調味料は、実用的で日持ちする品が多いため、満中陰志に向いています。
20代の方には、ひとり暮らしを始め、自炊に精を出している方もいるでしょう。
レシピの幅を広げ、味付けのバリエーションを増やせる高品質な調味料は、料理上手な方はもちろん、始めたばかりの方にも最適です。
ただしあくまで弔事の贈り物のため、ドレッシングなどは色が鮮やかすぎる品を選ばないよう、注意しましょう。
【子どものいるご家庭へ】満中陰志にふさわしい人気の品10選
子どもがいる方への満中陰志は、家族みんなで分け合える品や、両親の助けになる品がよいでしょう。
仕事や家事に忙しく過ごす相手の暮らしによりそう品物を意識して選んでみてください。
家族で食べやすい焼き菓子
クッキーやフィナンシェなどの焼き菓子の詰め合わせは、子どものいるご家庭への満中陰志に好適です。
家族で分け合って食べやすいほか、両親が忙しさの合間にほっと一息つくときのお供にも最適でしょう。
切る手間がなく、職場などにも持って行きやすい「個包装」の品を選びましょう。
調理が簡単な乾麺
「うどん」「そうめん」「パスタ」「そば」など、乾麺は保存がきくため満中陰志に向いています。
乾麺はいずれも、手軽に食べ応えのある一品ができあがるのが魅力です。
料理に割く時間を減らせるため、仕事に、家事にと忙しい家庭の助けになるでしょう。
時間のない日にも食べやすい 高級お茶漬け
家事の合間のお昼ごはんや、帰りが遅くなった日の夜食に、あると重宝するのが「お茶漬け」です。
調理の手間が少なく、サラッとした口当たりのため、時間のない日や疲れている日も食べやすいでしょう。
贈り物にふさわしく、具材や出汁にこだわった高級感のある品を選びましょう。
実用的な台所用洗剤
満中陰志として贈る「洗剤」には「悲しみを洗い流す」という意味があります。
使用感や香りの好みが分かれやすい洗濯洗剤にくらべると、台所洗剤は誰にでも贈りやすい品といえるでしょう。
手肌にやさしい品や、スポンジやふきんとセットになった品など、食器洗いの量が多い子育て世代の方をサポートする品を選んではいかがでしょうか。
満中陰志を贈る時期 「忌明け」後一か月以内が基本
「満中陰志をいつまでに贈ればよいか」について解説します。
満中陰志を贈る時期は、四十九日法要(満中陰法要)を終えた忌明け後、1か月以内が基本です。
仏教において「中陰」とは亡くなってから49日間のことを指し、「満中陰」とは「中陰が満ちた=四十九日の忌明けを迎えた」ことを意味します。
満中陰志は「香典へのお返し」であると同時に「四十九日法要が無事に終わった報告」をす
るための贈り物だと認識しておきましょう。
ただし最近では、当日に香典へのお返しをする「即日返し」も増えてきています。
即日返しには「軽くてかさばらないもの」が鉄則
最近では、遺族の負担を軽減するために当日に香典への返礼品を贈る「即日返し」の葬儀が多くなっています。
即日返しにする場合、あらかじめいただく香典の金額を想定して、品物を準備をしましょう。
いただく香典は「5,000円」「10,000円」が相場のため、半返しで「2,000円~3,000円」の品を用意するのが一般的です。
※ただし金額には地域差もありますので、葬儀スタッフや目上の親族に確認することをおすすめします。
1万円以上など高額の香典をいただいた方には、後日改めて追加のお返しを贈ります。
即日返しの品物は、当日列席者が持って帰るため「軽くてかさばらないもの」を選びましょう。
飲み物や軽いお菓子などが最適です。
即日返しは「満中陰志」とは呼ばない
葬儀の当日に返す香典返しは「満中陰志」とは呼びません。
「満中陰志」とは忌明けを報告するための贈答品です。
葬儀の当日は忌中ですので、お返しの品はあくまでも「香典への返礼品」として渡しましょう。
お渡しするときに「満中陰志です」と伝えたり、のしに「満中陰志」と書いたりしないよう注意してください。
「即日出荷」が可能な品物が便利
即日返しは、葬儀当日までに数を揃える必要があるため、ネット通販を利用するなら「即日出荷」可能の品物が安心です。
また、当日思ったよりも列席者の方がいらっしゃった場合、品物の数が足りず、後日追加で贈るケースもあります。
即日出荷可能な品を選んでおけば、当日と同じ品を早くスムーズに手配でき、喪主の気持ちも楽になるでしょう。
品物には適切なのしと挨拶状を。ギフト専門店なら安心
満中陰志には、「掛け紙(のし紙)」や「挨拶状(不要なケースも)」の準備も必要です。
掛け紙や挨拶状の書き方に自信がないという方は、ギフト専門店で品物を揃え、掛け紙と挨拶状も一貫して揃えてはいかがでしょうか。
ギフト専門店GiftA(ギフタ)では、包装、のし、挨拶状を無料でご用意しています。
状況に合わせて適切な掛け紙や挨拶状の文面を選ぶことができますので、これまで葬儀に関わった経験が少ない方も安心です。
満中陰志の「のし」は状況に即して選択
掛け紙(のし)の選び方は、贈る時期によって異なります。
<四十九日法要を終えた忌明け後に贈る場合>
- 表書きは「満中陰志」
- 黄色の水引の下に、贈り主の名前を入れる
<即日返しの場合>
- 表書きは「志」
- 黄色の水引の下に、贈り主の名前を入れる
なお、関東などではいずれの時期も「志」に「黒白」の水引が一般的です。
多くのギフト専門店ではさまざまな表書き・水引に対応していますので、状況に即して最適な掛け紙を選びましょう。
満中陰志の挨拶状(お礼状)はテンプレートを上手く利用
満中陰志を手渡しする場合、口頭で感謝の言葉を伝えられるため、挨拶状(お礼状)は不要とされています。
直接お会いできず配送する場合には、必ず心のこもった挨拶状を添えましょう。
挨拶状の作成には、相手に失礼なくお礼を伝えられる、挨拶状テンプレートの利用が便利です。
もちろん一部を編集し、ご自身の言葉をつづってもよいでしょう。
挨拶状の内容や失礼のない文例は、以下の記事も参考にしてください。
満中陰志の品物にまつわる注意Q&A
満中陰志の品物にまつわる疑問にお答えします。
細かいことのようで、いざとなると悩む方が多い内容のため、ぜひ確認してください。
Q.「満中陰志」と「粗供養」の違いは?
A.粗供養とは「葬儀や法要に来てくださったことに対するお返し」のことです。
葬儀における「会葬御礼」や四十九日などの法要での「お返し(引き出物)」に近い意味だと考えてよいでしょう。
同じ返礼品でも、香典へのお返しと忌明けの挨拶を兼ねる「満中陰志」とは意味合いが異なります。
「粗供養」も満中陰志と同じく関西周辺で使われる言葉のため、意味を混同しないように注意しましょう。
Q.供花やお供えにもお返しは必要?
A.基本的に、供花やお供物にお返しは不要です。
いただいた香典(現金)にのみ、満中陰志をお返しをすればよいとされています。
ただし、団体や連名でなく個人から1万円以上の高額な供花・お供物をいただいたような場合には、例外的にお返しを贈ることがあります。
Q.弔問に来たご近所さんへのお返しはどうする?
A.事前にいらっしゃることがわかっていれば、1,000円〜2,500円程度の品物を用意しておくとよいでしょう。
家族葬で葬儀を執り行った場合などには、葬儀に参列できなかったご近所さんが弔問に来られることがあります。
その際、香典やお供え物を持参される場合があるため、その場でお返しできる品物を用意しておくと安心です。
ご近所さんからの香典は3,000円~5,000円程度が相場とされています。
半返し(1,000円〜2,500円程度)の品を用意し、高額の心遣いをいただいたら後日に追加でお返ししましょう。
礼を尽くした満中陰志で感謝の気持ちを伝えて
満中陰志には、弔事にふさわしい上品な印象の品物を贈ることが大切です。
相手の年齢や家族構成にあわせて「贈り分け」をすると、より満足していただきやすいでしょう。
ギフト専門のネット通販では、贈り分けすることの多い満中陰志の品物を一括で手配できます。
満中陰志に適した掛け紙や、挨拶状のテンプレートも無料で用意があるため、相手に失礼のない体裁で贈ることが可能です。
故人を偲び、遺族に心を砕いてくださった皆さまに、心からの感謝が伝わる満中陰志を贈りましょう。