ずくだせ農場(ずくだせのうじょう)
【事業者概要】
長野県上田市に本社を置く株式会社ずくだせ農場は、お米や大豆を無農薬で栽培し、加工・販売する企業。在来品種の大豆「こうじいらず」を農薬・除草剤・化学肥料を一切使用せずに育て、安心・安全な食品を生産しています。定番商品『信州桃太郎みそ』をはじめ、醤油やお菓子など、設立後10年足らずでラインナップを拡充してきた同社。代表取締役の永山一男社長は農業未経験からのスタートだったそうで、素材と天然醸造へのこだわりゆえに困難の連続だったそうです。 アーツセレクション取扱商品の魅力や、ずくだせ農場誕生秘話をお聞きすべく、取材スタッフは自然豊かな上田市を訪れました。
代表取締役社長
永山 一男 さん
プロフィール
1959年、長野県上田市生まれ。アイリスグループCEO。東京工科大学客員教授。2013年、ボランティアで知り合った有志と共に「ずくだせ農場」を設立する。
「こうじいらず」は初めて耳にしました。どのような品種なのかをお教えください。
永山: 味噌を作るときは麹(こうじ)を入れますよね。「こうじいらず」は、名前の通り、麹を入れる必要がないほど甘みがある大豆なんです。古くから上田市にあった在来品種で、ずくだせ農場の商品のほとんどは「こうじいらず」で作っています。『信州桃太郎みそ』、『極旨醤』という醤油、『おこびれ豆』というお菓子、これらはみんな「こうじいらず」が原材料です。ただ、農薬や除草剤などを一切使わないことは最初から決めて始めたものですから、とにかく軌道に乗るまでが大変でした。
── なぜあえて無農薬栽培という難しい道を選ばれたのでしょうか?
永山: 身体によい安全な農作物をどうしても作りたかったからです。当社が設立したのは2013年。それより前から、自分が生まれ育った上田市に何かのかたちで恩返しができないかと考えていました。私は建設会社や不動産業などいろんな仕事をしてきたのですが、50歳を機に、気持ちの中で地元への貢献が芽生え始めまして。それで、農業の活性化と後進育成を目指し、農業をやってみようと一念発起したのです。
── 永山社長、それまで農業のご経験は?
永山: ないです(笑)。当時、私は地元の登山道の清掃ボランティアに力を入れていて、そのときに知り合った仲間2人を引き入れて「いっちょ、農業やろか!」と。メンバー全員が農業未経験という、いま思えば無茶なスタートでした。
当時のご苦労話や印象的なエピソードをお教えください。
永山: 実際には会社設立の3年ほど前から農作物の生産を始めたのですが、なにぶん素人ですから知識も方法論も何もない(笑)。しかも、手間がかかるため作り手が減っている「こうじいらず」を無農薬で作ろうとしている。どうやって作るかわからないから知り合いの農家さんに相談すると、「そりゃとんでもない話だ。やめなさい!」と全員からダメ出しされました。素人が何を言ってんだと。それで逆に火が着いちゃって(笑)。
── 後戻りできない状態(笑)。しかし、大豆は一年に一度しか収穫できませんよね?
永山: 起ち上げメンバー3人、ずっと貯金を切り崩して働いていました。少しでもわからないことがあれば農家の方に教えてもらって、自分たちで試行錯誤して。その繰り返しです。ただ一つブレなかったのは、農薬や除草剤、化学肥料を使わないということ。そこは絶対に譲れませんでしたね。
甘みに富んだ幻の大豆「こうじいらず」
── 『信州桃太郎みそ』のパッケージには「幻の地大豆使用」とありますね。
永山: そう表記できるほど、とにかく栽培が大変なんですよ。一番苦労したのが雑草との闘い。ひと雨ごとに草がぼうぼうになります。それを這いつくばって手で取るわけです。真夏は直射日光で熱中症の危険がある。で、どうしたかというと、段ボール箱を分解して広げ、自分の背中に紐でくくりつけて日除けにしました。しかしそれも限界があったようで、あるとき除草中に心筋梗塞で倒れちゃって。救急車で運ばれました。それでも復帰できたのは、きっと神様が「もっと頑張れ!」と励ましてくれたということでしょうね。
天然醸造で作ることのメリットは何でしょうか?
永山: 化学的なものは一切使いませんから、簡単に言うと乳酸菌と酵母菌にずっと“仕事”をさせている状態です。うちの味噌は乳酸菌や酵母菌が中で生きています。生きた状態で味噌を支配しているわけですから、余計な腐敗菌が入ってきません。普通の味噌は放置すると、どんどん腐ってダメになっていきます。しかし、『信州桃太郎みそ』は3年ぐらい経っても、ずっと常温で置いておいても腐りにくいんです。逆に数年経ったほうが味わい深いものに変わっていく。そこが天然醸造の最大のメリットといえます。
── それは味噌だけでなく醤油にもいえることですか?
永山: そうですね。醤油も一貫して天然醸造で生産していて、中で酵母菌が生きています。発酵を止めていない状態です。だから、醤油の栓を抜くと少し吹き出すこともあります。酵母菌が生きている証拠なんです。工業製品なら、人工的に夏の状況にして化学薬品を使い、発酵熟成させれば時間もかかりませんよね。でも、それはうちがすることではありません。
パッキングも一つひとつ丁寧に
── なるほど。手間はかかるけれども天然醸造でよいものを作り続けたいと。
永山: 考えてもみてください。大昔は農業というと、そのやり方しかありませんでしたよね? 単純に、昔ながらのやり方に戻ればいいだけの話なんです。ちなみに、「ずくだせ農場」の「ずく」は長野の方言で「根気」「やる気」を意味する言葉。要するに余計なものを使わずに自分たちの根気ややる気さえあればできるんだよ!ってことですね。
信州6次産業化事業者に認定とあります。これは?
永山: 生産だけでなく加工や流通、販売にも関わっている事業者に与えられる認定制度です。この地域には、うちを含めて3社しかありません。販売を始めたのが2017年から2018年でしたので、ようやくここまできたかと感慨深いですね。
味噌から大豆茶まで豊富な商品群
── 当社アーツセレクションでも販売がスタートしました。おすすめの食べ方はありますか?
永山: 先ほども申し上げましたが、一番のポイントは味噌の中で菌が生きているということ。ですから、たとえばお味噌汁で召し上がるなら、お湯の温度は60℃以上にしないほうがいいですね。菌が死んでしまいますので。先にお野菜を煮込んで最後に味噌を入れると、よりいっそう美味しいし、身体にもよいですよ。それと、そのまま野菜と一緒に食べていただくのもおすすめです。私は生のキュウリにつけてよく食べます(笑)。
── 無性に食べたくなってきました(笑)。本日は、どうもありがとうございました。
永山: NHKの大河ドラマ『真田丸』の放映中は、明治神宮の宮司さんも上田に来られて『信州桃太郎みそ』を大変気に入ってくださりました。お値段は普通のものに比べて少し高めですが、そのぶん品質は保証付きです。お中元やお歳暮にも喜ばれています。安心・安全には徹底的にこだわり、精魂込めて作っておりますので、ぜひ大切な方への特別な贈り物にお選びいただければ嬉しいですね。
味噌汁は毎日飲んでいる
ギフトコンシェルジュ 新垣
味噌といえば大豆とお米で作られるイメージがありますが、他にもいろいろ種類があるのですか?
また、熟成期間によって味は変わっていくものでしょうか?
ずくだせ農場さんの取材後、撮影スタッフと共に地元の食堂へ行きました。インタビュー中に何度も「味噌」という言葉を耳にし、完全に「味噌汁の口」になっちゃいまして。日本人の性(さが)ですね(笑)。とはいいつつも、味噌の種類については詳しく知らなかったので調べてみました。味噌は原料によって「米味噌」「麦味噌」「豆味噌」「調合味噌」の4つに分けられます。このうち国内で生産されているものの大半は米味噌。麦味噌は米ではなく麦が使われていて、豆味噌は大豆と塩が原料です。調合味噌は、他の味噌を複数調合して作られます。
ちなみに、ずくだせ農場さんの定番商品『信州桃太郎みそ』は米味噌です。国内産有機100%の大豆「こうじいらず」と、同じく国内産有機100%の米、食塩で作られます。同商品については「1年産」(赤ラベル)と「熟成」(黒ラベル)の2種類あって、後者は3年熟成させたもの。熟成が進んでいるため深い旨みとコクが楽しめます。一般的には、長期間寝かせた天然醸造のほうが栄養価は高く、健康にもよいそうです。そういえば、永山社長も「味噌は腸内環境を整えてくれる」とおっしゃっていました。美味しい味噌で作る日本食は、やっぱりホッとしますね。私もギフト用に買おうと思います!
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