ペールエールはイギリスで生まれたビールのスタイルです。
ビールと聞くとイメージする国産メーカーの一般的なビールに比べ、香りとコクが強くフルーティーな味わいが印象的。
ペールエールの特徴とおすすめの銘柄7選を紹介します。おいしいクラフトビールを探す参考にしてみてください。
ペールエールとは?
ペールエールは「エールビール」の一種です。
エールビールは、常温で酵母を発酵させる「上面発酵」という方法でつくられます。
それに対し、日本で多く出回っている「ラガービール」は醸造方法が「下面発酵」で、5°~10°前後の低温で発酵させます。
エールビールの大きな特徴は、原材料のモルトのコクや、ホップの香りが強く感じられること。
エールビールはさらに細かい種類に分類されますが、その一つであるペールエールは華やかな香りが印象的な、人気の高いビアスタイルなのです。
イギリス生まれの淡色ビール
ペールエールが誕生したのは18世紀ごろのイギリスです。淡色のモルトを使って醸造することで、金色や銅色などの美しい色合いが生み出されました。
当時、飲まれていたビールは濃色のものが多かったため、ペール(=淡い)という名前が付けられたようです。
ペールエールは、華やかな香りとコクのあるビールですが、それでいてアルコール度数は5%前後と、あまり高くありません。
そのため、何杯でも飲みやすいバランスのいいビールとして人気を集めるようになりました。
ペールエールは海を渡って他国に伝えられ、国ごとの個性あるスタイルが生まれました。
本場のペールエールと他国で派生したペールエールを区別するため、発祥当時のペールエールのスタイルは「イングリッシュペールエール」とも呼ばれています。
各国で生まれたペールエールの特徴をご紹介しましょう。
アメリカ生まれの「アメリカンペールエール」
「アメリカンペールエール」は、アメリカ産ホップを使って造られた、柑橘系の香りが印象的なペールエールです。
ホップ由来の香り・苦味はイングリッシュペールエールに比べて強めですが、モルトの風味は控えめなので、スッとしていて飲みやすいのが特徴です。
塩味の唐揚げやサラダなどの軽い味付けの料理と合わせると、ホップの香りや苦味をよく感じることができておすすめです。
ベルギー生まれの「ベルジャンペールエール」
「ベルジャンペールエール」はイングリッシュペールエールを参考に、ベルギーで生み出されたペールエールです。
18世紀半頃からベルギーの地元のブルワリーが醸造を始めていたとされていますが、現在のスタイルが確立されたのは第二次世界大戦後といわれています。
ベルギー酵母由来の洋梨・オレンジのようなフルーティーさと、コショウ・ナツメグを思わせるピリッとしたスパイシーさをあわせ持つのが特徴です。
鶏ハムやサラダチキンのようなシンプルな味わいの料理と合わせることで、スパイシーさをより楽しむことができます。
インドへの輸送過程で生まれた「インディアンペールエール(IPA)」
「インディアンペールエール」は、18世紀にイギリス領だったインドへビールを輸送する過程で考案されたビアスタイルです。
当時、長い船旅の途中でビールが腐ってしまうのが問題となっていました。その対策として、アルコール度数を高め、防腐剤の役割もあるホップを大量に投入して造られたのが始まりです。
強めのアルコールとガツンとくる苦味が特徴的で、他のペールエールに比べてパンチの効いた味わいとなっています。
現在ではIPAは世界中で人気を集めていて、イングリッシュIPA、アメリカンIPA、ニューイングランドIPAといった派生系IPAが世界中のビール愛好家に楽しまれています。
IPAに合う和食メニューは、しょうゆで味付けした豚肉やハムカツなどの揚げ物など。
濃いめの味付けの料理・おつまみと一緒に飲むことで、苦味やコクをいっそう楽しむことができるでしょう。
ペールエールの飲み方は香りと味わいが際立つ「ぬるめ」で
ペールエールを飲むときは11〜14℃程度の「ぬるめ」がおすすめです。
ビールはキンキンに冷やしてゴクゴク飲むイメージがあるかもしれません。しかし、ペールエールを冷やしすぎると、特徴である華やかな香りと豊かなコクを感じにくくなってしまいます。
ペールエールを飲む前に、冷蔵庫から出してしばらく置いておきましょう。口が大きめのグラスに注ぎ、コクと香りを楽しみながらじっくり飲むのがおすすめです。
ペールエールのおすすめクラフトビール7選
「ペールエールを飲んでみたい」という人にぜひ試してほしい、日本国内のおすすめ銘柄の情報を紹介します。
ブルワリーのビール職人が原料にこだわって造ったクラフトビールから、ペールエールスタイルのおすすめ7銘柄をチョイスしました。
ヤッホーブルーイング「よなよなエール」
長野県の醸造所ヤッホーブルーイングの「よなよなエール」。
アメリカンペールエールスタイルの銘柄で、グラスに注ぐとグレープフルーツのような柑橘系のホップ香がフワッと広がります。
飲むとホップの香りが心地よく喉に留まり、ほんのりとした苦味と甘味がやってきます。
フレッシュな気持ちになれるペールエールなので、仕事疲れを癒やしたい気分の時におすすめの一本です。
ベアードブルーイング「ライジングサンペールエール」
静岡県沼津市でビール醸造を行うベアードブルーイングの「ライジングサンペールエール」。
地元静岡のクリーンな軟水から生まれたアメリカンペールエールスタイルの銘柄で、ベリーやりんごを思わせるフルーティーな香りが印象的です。
クリーミーな口当たりで、柔らかい味わいながらも後味にしっかりとした苦味がやってきます。
「毎日でも飲める」うまみと飲みやすさの調和を目指して、醸造家の工夫が重ねられた作品。
定番にしたい一本をお探しの人におすすめです。
松江ビアへるん「ペールエール」
島根県松江市の醸造所松江ビアへるんが贈る「ペールエール」。
豊かな香りで知られるアメリカ産アロマホップ品種「カスケードホップ」を使用した、アメリカンペールエールスタイルの商品です。
香りと苦みが穏やかなバランスで調和しているので飲みやすさ抜群。
松江ビアへるんは、地元の人に親しんでもらいたいという思いから「日本人の味覚に合わせること」をモットーにしたビール造りを行っています。
ペールエールデビューしたい人の最初の一本に最適な銘柄といえるでしょう。
伊勢角屋麦酒「ペールエール」
三重県伊勢市のクラフトビールブルワリー、伊勢角屋麦酒の「ペールエール」。
ビール界のオスカー賞とも呼ばれるイベント「The International Brewing Awards」にて2019年金賞に輝いた、世界的に認められた銘柄です。
グラスに注ぐと、ホップ由来の爽やかな香りが立ち上がるのを感じられるでしょう。口に含むとフルーティーな味わいの後にしっかりとやってくる苦味が印象的。
強めの味わいですが、スッと消えていく後味の良さもあり、何杯でも飲める飲みやすさ。
どんな食事とも相性がいいので晩酌のお供におすすめです。カラフルなパッケージで、ホームパーティーにも喜ばれるでしょう。
OH!LA!HOビール「キャプテンクロウエクストラペールエール」
長野県東御市でクラフトビール造りを行う OH! LA! HO ビールの「キャプテンクロウエクストラペールエール」。
エクストラペールエール(XPA)というスタイルに分類される銘柄で、通常の2倍のホップを投入して生み出される強烈な苦味が特徴です。
飲んでみると最初にトロピカルな香りが広がり、その後にガツンとくる苦味がやってきます。
インパクトの強い味わいですが、IPAほどアルコール度数は高くなく「重い」感じはしないので、飲みやすさがあります。
ビールの苦味が好き、という人にぜひ試してほしい一本です。
伊勢角屋麦酒「エクストラペールエール」
伊勢市のブルワリー伊勢角屋麦酒の「エクストラペールエール」。
グレープフルーツジュースのようなフルーティーな香りと酸味に加え、強めの苦味をあわせ持つ個性的な銘柄です。
香りと酸味が、苦味と程よいバランスをとっているので心地よく苦味を楽しむことができるでしょう。
酸味も苦味も、後に残らずサッと消えていくような後味なので、飲みごたえと飲みやすさが両立した一本といえます。
ペールエールに慣れてきた人へ、次のステップとしておすすめしたい銘柄です。
ベアードブルーイング「わびさびジャパン ペールエール」
再び静岡県のブルワリーベアードブルーイングから「わびさびジャパンペールエール」を紹介します。
「ジャパンペールエール」と称する独自の新しいスタイルを目指し、静岡名産のわさびと緑茶を原材料に取り入れたチャレンジングな銘柄です。
「ビールにわさびと緑茶?」と意外に思えますが、フルーティーな香りとハーブのような爽やかさに、ピリッとしたわさびがアクセントになって、見事に調和しています。
ハーブ系の飲み物が好きな人に、ぜひ試してほしいペールエールです。
いろいろなペールエールを試してみよう
ペールエールはイギリス発祥の淡い(=ペール)色をしたエールビールの一種。コクのある味わいと華やかでフルーティーな香りが魅力です。
アメリカン・ベルジャン・IPAなど、各地の風土や時代背景・歴史によってさまざまなペールエールのスタイルが派生し、世界中で人気を集めています。
ブルワリーが造ったクラフトビールのペールエールは、そのブルワリー独自のこだわりによって、銘柄ごとに個性的な味わいに仕上がっています。
ぜひいろいろなペールエールを試して、あなた好みの一本を見つけてくださいね。