エールビールの特徴は、豊かな香りと深い味わい。
日本人が一般的に思い浮かべるラガービールとは、味わいも醸造方法も異なります。
エールビールの基本情報と魅力を知れば、晩酌に上手に取り入れたり、パーティで使ったりと、ビールの楽しみ方が広がるでしょう。
おすすめ銘柄も紹介します。
目次
エールビールとは?
エールビールは、主にイギリスで発展してきた歴史があります。
フルーティーな香りとコクのある味わいが大きな特徴。色合いは、銅色・琥珀色・白・黒などバリエーション豊か。見た目にも個性が際立っています。
一般的なラガービールとの違いや、エールビールの基本について解説します。
味わい深さと香りを楽しめる「エールビール」
エールビールは、口が大きめのグラスに注いで香りを楽しみながら、ゆっくりと味わうのがおすすめ。
ラガービールのように爽快さを求めてゴクゴクと飲むのとは違った楽しみ方ができます、
エールビールを冷やしすぎると、本来の風味を感じにくくなってしまいます。豊かな香りを感じたいなら、少しぬるめの13℃程度で飲むのがおすすめです。
じっくり楽しむ飲み方はワインに通じるものがあります。初めて飲んだ人は「これってビールなの?」と新鮮な驚きがあることでしょう。
爽快なのど越しが魅力の「ラガービール」
日本の大手メーカーが販売しているビールのほとんどがラガービールです。
日本人にとってビールというとラガービールの味わいを思い浮かべる人が多いでしょう。
「ラガービール」は、6℃前後までよく冷やしてゴクゴク飲めば、爽快なのど越しが楽しめるのが魅力。
炭酸の刺激が体を駆け抜けていく感覚が味わえるでしょう。
「エールビール」と「ラガービール」は発酵方法が異なる
「エールビール」と「ラガービール」は、使用する酵母や温度などが異なります。
それぞれの特徴をみていきましょう。
上面発酵の「エールビール」
エールビールは、エール酵母を使って20度前後の高温環境下で数日間発酵させます。
発酵が進んでいくと酵母が麦汁の表面に浮かんでくることから「上面発酵」と呼ばれるようになりました。
高温環境下では細菌の活動が活発になるため品質管理が難しく、少量生産に向いているビールです。
少量生産であるがゆえに、醸造所ごとのアイデアや原材料へのこだわりが反映されやすいのもエールビールの特徴。国や地域・醸造所によって異なる個性が楽しめるでしょう。
下面発酵の「ラガービール」
ラガービールは「下面発酵」という方法でつくられます。
ラガー酵母を使い、5度前後の低温環境下で1カ月ほど発酵させます。
発酵が進むにつれて酵母が醸造タンクの底に沈んでいくことから、下面発酵という名前が付けられました。
低温下では細菌の活動が抑制され、品質管理がしやすいというメリットがあります。
そのため大量生産に向いており、コンビニやスーパーなどで見かける大手メーカー生産のビールのほとんどがラガービールです。
押さえておきたい! エールビールの代表的な種類(ビアスタイル)
「エールビールに興味がわいた」という人に、ぜひ押さえてほしい代表的な種類(ビアスタイル)を紹介します。
一口にエールビールといっても、さらに細分化されたさまざまなスタイルがあります。
エールビールの中でも特に人気のあるスタイルと、その特徴についてみていきましょう。
「ペールエール」
「ペールエール」は、18世紀頃のイギリスで生まれたとされるビアスタイルです。
淡色モルトを使って醸造するため、金・銅色といった美しい色合いをしています。
当時飲まれていたビールは濃色のものが多かったことから、ペール(=淡い)という名前が付いたそうです。
モルトのコクやホップの強い香りが特徴ですが、後味は非常にすっきり。何杯でも飲めるバランスの良いビールとして人気を集めるようになりました。
その後、ペールエールは世界に広まり、国ごとの個性あるスタイルに派生していきます。下記の3つが、派生系ペールエールの代表的な種類です。
- アメリカンペールエール:柑橘系の香り豊かなアメリカンホップを使用
- ベルジャンペールエール:ベルギー酵母由来のオレンジ系のフルーティーさと、スパイシーな味わい
- IPA(インディアンペールエール):高めのアルコール度数と、大量に投入されたホップが生み出す苦味が魅力
「IPA」のスタイルは多種多様
強いアルコールとパンチの効いた苦味で、世界のビール通に愛されてきたIPA。
ペールエールから派生した種類の中でも「IPA」はさらに複雑に枝分かれしながら進化してきました。
各地の醸造家たちによって、日々新しいIPAが生み出されているのです。
【地名の付いたIPA】
- イングリッシュIPA
- ニューイングランドIPA
- アメリカンIPA
- ベルジャンIPA etc..
【味わいや原材料から名前が付いたIPA】
- ダブルIPA
- ブリュットIPA
- フルーツIPA
- コーヒーIPA etc..
「ホワイトエール(白ビール)」
「ホワイトエール(白ビール)」は、原材料に小麦麦芽や小麦を多く加えているビールのこと。
小麦に含まれる「グルテン」というたんぱく質が、長持ちする泡とヨーグルトのような独特の酸味を生み出します。
ホワイトエールをさらに分類すると、ドイツ発祥の「ヴァイツェン」とベルギー生まれの「ベルジャンホワイト」という代表的な2種類に分けられます。
「ヴァイツェン」
小麦麦芽を50%以上使用したエールビール。
バナナのようなフルーティーな香りと口当たりの柔らかい泡が特徴。
ホップが少なめなので苦味がほとんどなく、ビールが初めての人でも飲みやすい。
「ベルジャンホワイト」
麦芽化する前の小麦を原材料に使うのが基本。
オレンジピールとコリアンダーを加えることで生まれる豊かな香りが特徴。ヨーグルトを思わせる柔らかい酸味がある。
「黒ビール」
黒ビールは、濃色の麦芽を原材料に用いてつくる黒い色合いのビールです。
濃い色の麦芽を原材料の一部に使うことで、印象的な黒い色とチョコレートやコーヒーを思わせる濃厚なコクを生み出しています。
イギリスで生まれた「ポーター」「スタウト」の2種が代表的な黒ビールの種類です。
「ポーター」
18世紀頃のイギリスのパブで流行していた黒ビール。
甘い風味を持つチョコレートモルトやカラメルモルトを原材料に使うことで、チョコレートや焦がしキャラメルを思わせる味わいになっている。
「スタウト」
ポーターを参考に、アイルランドのギネス社創業者アーサー・ギネス氏が生み出した黒ビール。
焙煎した麦芽が生み出す香ばしいロースト香と強めのアルコールが特徴。
スタウト(=どっしりとした)という名前の通りの飲みごたえがある。
「セゾン」
「セゾン」はベルギーで古くからつくられているビアスタイルです。
もともとは、夏の農作業の休憩時にのどをうるおす水がわりとして、期間限定でつくられていました。
セゾンビールの特徴は、グレープフルーツやライムを思わせるフルーティな香り。リフレッシュできる味わいが特徴です。
ベルギーの伝統的ビアスタイルでしたが、アメリカでクラフトビールがブームになった際、注目を浴びるようになりました。現在は世界のビールファンの人気を集めています。
【GiftA(ギフタ)厳選!】エールビールのおすすめクラフトビール
「エールビールを実際に飲んでみたい!」という人に、ぜひ試してもらいたいおすすめ銘柄を紹介します。
いずれも日本国内のブルワリー(醸造所)が材料と技術にこだわってつくった「クラフトビール」です。
あなた好みのビアスタイルを見つける参考にしてみてください。
定番から飲みはじめたいなら「ペールエール」がおすすめ
ペールエールは、エールビールの中でも定番といえるビアスタイル。
豊かなホップの香りとしっかりとした苦味がありつつも、すっきりした後味で飲みやすい仕上がり。
エールビールの魅力を感じるのに最適といえるでしょう。
国産クラフトビールの「ペールエール」おすすめ銘柄を紹介します。
ヤッホーブルーイング「よなよなエール」
長野県の醸造所”ヤッホーブルーイング”の「よなよなエール」。
アメリカンペールエールスタイルの銘柄で、フワッと広がるグレープフルーツのような柑橘系のホップ香が特徴です。
心地良いホップの香り、ほんのりとした苦味と甘味がやってくる味わいは、爽やかで刺激的!
仕事で疲れた日のリフレッシュにおすすめの一本です。
伊勢角屋麦酒「ペールエール」
三重県伊勢市の醸造所”伊勢角屋麦酒”の「ペールエール」。
2019年にビール界のオスカー賞とも呼ばれる「The International Brewing Awards」にて金賞を獲得した、世界的に評価の高い銘柄です。
グラスに注いだ際に立ち上がる、ホップ由来の爽やかな香り。味わいは、フルーティーさの後にしっかりとやってくる苦味が印象的です。
インパクトのある味わいですが、消えるような後味の良さで何杯でも飲めそう。
どんな食事とも合うので、毎日の晩酌時におすすめです。
松江ビアへるん「ペールエール」
「日本人の味覚に合わせること」をモットーにしたビールづくりを行っている松江ビアへるん。
松江ビアへるんの「ペールエール」は、芳醇な香りで知られるアメリカ産アロマホップ品種「カスケードホップ」を原材料に使用しています。
豊かな香りと苦味が穏やかなバランスで調和しているので飲みやすさが抜群!
初心者にやさしいペールエールから飲み始めてみたい人に、特におすすめの銘柄でしょう。
癖になる苦味や香り「IPA」のおすすめ
強烈なホップの苦味と、高めのアルコールでパンチの効いた味わいを持つIPA。
これからIPAを試してみたいという人にも安心しておすすめできる、心地良い苦味と香りを持つIPA銘柄を紹介します。
京都醸造「一意専心」
職人のまち・京都のクラフトビール醸造所”京都醸造”。
「一意専心」は、ベルギー酵母を使用したベルジャンスタイルのIPAで、苦味をまろやかにし、フルーティーな柑橘系の香りをより楽しめる一本になっています。
ベルギー酵母由来の酸味も加わった味わい深さが特徴的なIPAです。
伊勢角屋麦酒「ヘイジーIPA」
三重県伊勢市”伊勢角屋麦酒”が届ける「ヘイジーIPA」。
ヘイジーIPAとはIPAビールの一種で、ヘイジー(=にごった)の名前の通り、にごった見た目が特徴的です。
伊勢角屋麦酒の「ヘイジーIPA」は、オーストラリア産ホップが生み出すパッションフルーツのような華やかな香りの一本。
苦味は抑えめで爽やかな味わいなので、IPAが初めての人でも安心して飲むことができるでしょう。
ヤッホーブルーイング「インドの青鬼」
「インドの青鬼」というネーミングと、青鬼の顔がアップになったパッケージが印象的なビールです。
グラスに注ぐとグレープフルーツのように爽やかな香りを感じ、のど越しを楽しんだあとにガツンと強烈な苦味がやってきます。
「ニガッ」と声が出るような苦味ですが「これがあるからうまい」というファンもいる、癖になる味わい。「これぞIPA」というべきスタンダードな一本です。
女性人気が高く飲みやすい「ホワイトエール」のおすすめ
ホワイトエールは、小麦由来のやさしい泡立ちと苦味をほとんど感じないという特徴から、特に女性を中心に人気を集めています。
国産クラフトビールの中から個性やアイデアの光る「ホワイトエール」銘柄を紹介します。
伊勢角屋麦酒「ヒメホワイト」
三重県伊勢市”伊勢角屋麦酒”の「ヒメホワイト」。
通常ホワイトエールの原材料に使われるオレンジピールのかわりにゆずの皮を使用し、和風でさっぱりとした香りに仕上げられています。
ゆずの爽やかさとほのかな甘みが調和した味わいで、飲み口はホワイトエールらしくとても軽やか。
華金の夜など、気分をリフレッシュさせたいときにおすすめのビールです。
ヤッホーブルーイング「水曜日のネコ」
長野県の醸造所”ヤッホーブルーイング”がつくる、ベルジャンホワイトスタイルの「水曜日のネコ」。
青りんごのようなフレッシュな香りと、コリアンダーシードによるハーブ感のある味わいが印象的です。
苦味はほんのりと感じる程度で、とてもあっさりした飲み口。
一般的なビールの苦味が得意ではないという人でも、おいしく飲める一本です。
常陸野ネスト「ホワイトエール」
茨城県の酒蔵・木内酒造が醸造する”常陸野ネストビール”の「ホワイトエール」。
スパイシーなホップを使用し、ナツメグやオレンジ果汁などが加えられているのが特徴。
そのため、香ばしさと柑橘系の爽やかさが調和した、独特の味わいに仕上がっています。
木内酒造は意欲的に海外展開しており、「常陸野ネストビール」はアメリカをはじめ数々の海外ビールコンテストで1位を獲得しているブランドです。
世界に認められた国産クラフトビールといえるでしょう。
柔らかな味わいの癒し系「ヴァイツェン」のおすすめ
小麦を50%以上使用することで生まれる柔らかな味わいが特徴のヴァイツェンビール。
苦味はほとんどなく、香りはバナナのようにフルーティーです。
癒されたい気分の夜に飲んでほしい、ヴァイツェンのおすすめ銘柄を紹介します。
銀河高原ビール「小麦のビール」
長野県のクラフトビール醸造所”銀河高原ビール”が手がける「小麦のビール」。
グラスに注ぐと泡がこんもりと盛り上がり、口当たりはとてもなめらかです。
酵母をそのまま閉じ込めた無ろ過製法により、ピーチのような香りと小麦の甘さ、酵母のコクを感じられる味わいが特徴。
『インターナショナル・ビア・カップ』にて2011・2018年 銀賞、『アジア・ビアカップ』において2016・2021年 金賞を獲得。
国外でも認められているやさしい味わいをぜひ体感してほしい一本です。
ベアレン醸造所「ヴァイツェン」(※冬季のみ販売)
岩手県のクラフトビールメーカー”ベアレン醸造所”の「ヴァイツェン」。りんごのような芳醇な香りと甘酸っぱい味わいが魅力です。
ボトルの底にたまっている酵母を全体に混ぜると、味わいが変化するのもおもしろいポイント。
最初はボトルを揺らさずすっきりとした甘酸っぱさを楽しみましょう。
途中でボトルを揺らして底の酵母を混ぜることで、酸味が抑えられたまろやかな味に変化します。
一本で二つの味わいが楽しめる珍しい銘柄です。
フルーティーで爽快な「セゾン」のおすすめ
セゾンビールの魅力は何といっても、その飲みやすさ。
もともと夏の農作業の渇きをリフレッシュするために生まれたビアスタイルで、フルーティーで爽やかな味わいです。
「ちょっと疲れてきたな」というときに試してほしい、セゾンのおすすめ銘柄を紹介します。
京都醸造「一期一会」
“京都醸造”の「一期一会」は、明るいレモンイエローのビールで見た目にも爽やかな一本です。
麦芽・ホップ・ベルジャン酵母がバランスよく調和していて、すっきりとドライな味わい。柑橘系のフルーティーな香りを持ちながら、飲み口は水のようにあっさりとしています。
疲れをリフレッシュしたい気分の人に、ぜひ試してほしい銘柄です。
がつんと濃い芳醇な味わい「黒ビール」のおすすめ
濃色麦芽のコクと、香ばしいアロマ(匂い)が印象的な「黒ビール」。
ナッツやココアを思わせる香ばしさを一口一口味わいながら飲んでほしいビアスタイルです。
そんな黒ビールの中から、おすすめの銘柄を紹介します。
ベアードブルーイング「黒船ポーター」
静岡県沼津市ベアードブルーイングがつくる「黒船ポーター」は、チョコレートやコーヒーをイメージさせるビターな味わいが楽しめます。
しっかりとした苦味が甘味・酸味と調和し、すっきりとした印象のポータービールに仕上がっています。
ペリー来航の黒船にちなんだデザインのラベルを見ながら、ゆっくりと味わいたいビールです。
いわて蔵ビール「黒蔵」
「黒蔵」は、スタウトスタイルの銘柄で、見た目はコーヒーのような黒さ。焙煎麦芽がもたらすコクのある香りが特徴です。
グラスに注いでちびちびと濃厚な口当たりを楽しむのがおすすめ。
チョコレートと合わせて飲むのが、ビールのコクをいっそう楽しめるツウな楽しみ方。
いつもとは違ったビールの楽しみ方をしたいときに、もってこいの一本です。
京都醸造「黒潮の如く」
ココアやチョコレートのような深いコクがありつつも、さっぱりとした味わい。
穏やかな苦味の中に、柔らかで甘い後味が残ります。
しっかりローストした黒色麦芽をベルジャン酵母で発酵させたことで、フルーティーな香り・焦げ感のある香りの絶妙なバランスが生まれました。
香ばしさとフルーティーさのハーモニーをぜひ試してほしい個性的なスタウトです。
自分好みのエールビールのスタイルを見つけてみよう
「エールビール」とは、エール酵母を使い、上面発酵で醸造されるビールの総称です。
エールビールの特徴として華やかな香りと深い味わいが挙げられます。
さらに細かく見れば、さまざまな個性あるビアスタイルが派生しているのが分かるでしょう。
ペールエールやIPAといった味わいが特徴的なスタイルから、黒ビールやホワイトエールのように見た目も特徴的なスタイルまで。
一口にペールエールといっても、ビアスタイルや醸造所によっても違った個性を楽しめます。
いろいろ試して、あなた好みのエールビールのスタイルを見つけてみてください。