ビールのスタイルにIPAというものがあります。
「IPAってどんな味なの? おすすめの飲み方は?」
など、購入前に知っておきたい基本情報を解説します。
IPAの深い味わいを知れば、よりビール通になれるはず。
手軽なアレンジ方法も紹介しますのでぜひお試しください。
目次
IPAってどんなビール?
クラフトビールの人気とともに、見かけることが増えてきた「IPA」。
IPAとはどんなビールなのか、味わいや特徴について解説します。
ホップの苦味がガツンとくるビール
IPAとは「インディア・ペール・エール」の略称で、18世紀にイギリスで生まれたといわれる種類(ビアスタイル)です。
IPAの特徴として、「苦味を楽しむビール」と言っても過言ではありません。ほかのビールと比べても、特にホップ独特の苦味を強く感じられるスタイルです。
この苦味はIPAの発祥に秘密があります。
18世紀当時、イギリスはインドを植民地支配していました。
インドで暮らすイギリス人に本国からビールを送るため、長い船旅でもビールの品質が落ちないように、防腐剤の役割も持つホップを通常より大量に使用して作られたのがIPAです。
そのため、ホップの香りと苦味がとても強い味わいになっています。
使用するホップによって、感じられる香りは異なってきます。瑞々しい青い香りから、甘さも感じられるフルーティーな香りなど、ホップの違いが銘柄の個性に繋がるのです。
自分好みの香りの一本を探すことも、IPAの楽しみ方の一つといえるでしょう。
IPAに国ごとのさまざまな個性が反映
IPAの中でもさまざまな種類(ビアスタイル)に分類されます。
大まかに分けて、イギリス発祥のオーソドックスなIPAと、アメリカ発祥の進化したIPAに二分する考え方があります。
アメリカに渡ったIPAは高い人気を誇り、独自の進化を遂げました。
その代表的なものが、イギリス本国のIPAよりアルコール度数を抑え、ホップの使用量を減らして飲みやすくした「セッションIPA」です。
一方、通常よりも多くのホップを使用して苦味をより強くした「ダブルIPA」などもあります。
また、2010年代半ばから人気が高まってきた「ヘイジーIPA」は、アメリカ東海岸のニューイングランド地方で生まれたといわれています。
発酵が終了した段階でホップを投入する「ドライホッピング」という製法により、苦味は抑えて香りが強いのが特徴です。
IPAは、クラフトビールの中でも人気が高いため、バリエーションが豊富。苦味や香りなど、自分の求めるポイントでスタイルを選んでみてはいかがでしょうか。
IPAビール、飲みやすいおすすめ品をピックアップ
IPAは、ホップの香りと苦味の強さが特徴です。
一口に「香り」と言っても、青い爽やかで豊かな香りから、柑橘系のフルーティーな香りまでさまざま。
たくさんのIPAの中から、日本のブルワリーが生み出した、職人技が光るIPAを紹介します。
IPA初心者の方も飲みやすく、初めてのチャレンジにおすすめの銘柄です。
伊勢角屋麦酒「IPA」
伊勢角屋麦酒が王道と誇る「IPA」は、飲みごたえの良さに定評のある一本。アメリカンスタイルをベースにしています。
3種のホップをブレンドすることで生まれる、メロンのような甘い芳醇なフルーティーさと、かすかなスパイシーさ。
飲み終えた後に口の中に残るしっかりとした苦味とうま味で、ホップ本来のおいしさが楽しめます。
IPAらしい苦味と飲みごたえのバランスの良さから、IPA初心者にもおすすめできる銘柄。ごくごく飲める王道のIPAを探しているなら、ぜひ試してみてください。
OH!LA!HOビール「雷電カンヌキIPA」
OH!LA!HOビールの醸造所がある東御市出身の力士「雷電爲右エ門」から名前を取った「雷電カンヌキIPA」。
名前のインパクトから受ける印象とは違い、軽やかで飲みやすいアメリカンスタイルのIPAです。
疾走感あふれる缶のデザインのように、ひと口めに駆け抜けていく南国の果物のようなフルーティーなホップの香り、そして後から感じるホップらしい苦味が続きます。
のど越しも良いため、どんどん飲める一杯になっています。
京都醸造「一意専心」
京都醸造はベルギー産の酵母とアメリカ産のホップを使用するブルワリー。
京都醸造のビールの中でも「一意専心」はベルギーとアメリカどちらのスタイルのかけ橋ともいえるIPAです。
ベルギー酵母特有のフルーティーさと、アメリカホップの持つすっきりとした柑橘の味わいがベストマッチ。パッションフルーツやマンダリンのような華やかな香りも特徴です。
旨味と香りのバランスが良く、季節やシーンを問わずおいしく飲むことができます。
香辛料やスパイスが強い料理との相性がバツグンなので、ガパオライスなどのタイ料理や、ガツンとした濃い味のスペアリブのお供にもぴったりです。
ヤッホーブルーイング「インドの青鬼」
ヤッホーブルーイングの「インドの青鬼」は、柑橘系の香りのあるアメリカ産ホップを使用したIPAです。
グレープフルーツのようなホップの爽やかな香りの後に、ガツンと来る強い苦味と深いコクがポイント。
アルコール度数も通常のビールより高めの7%のため、味が濃くてスパイシーな料理とよく合います。チョリソーやキーマカレーなどがおすすめ。
存在感の強いビールが好きな人に飲んでほしい一本です。
▼おつまみにおすすめ!
ブリュードッグ「パンクIPA」
スコットランドで2007年にスタートした醸造所・ブリュードッグが、世界一のIPAを目指して発表した銘柄が「パンクIPA」です。
採算度外視で作ったとされるパンクIPAは、ホップを大量に使いながらもドライホッピング製法により、フレッシュな香りが楽しめます。
トロピカルフルーツのような香りに、麦芽の甘み、ドライな余韻が「うまい!」一本。心地良い苦味が全体を絶妙なバランスでまとめあげています。
名前の通りのパンクな強さはあれど、飲みやすくて疲れないIPAです。
「セッションIPA」ビールのおすすめ品
IPA特有のホップの苦味が苦手な人に試してほしいのが、アメリカ発祥の「セッションIPA」と呼ばれるビアスタイル。
IPAグループの中でも苦味を抑えたフルーティーな味わいを特徴とするスタイルです。
アルコール度数も低めで飲みやすく、アメリカでは「酔い過ぎずに長く飲めるビール」とも言われています。
セッションIPAスタイルのおすすめ銘柄情報を紹介します。
常陸野ネスト「セッションIPA」
通常、セッションIPAは飲み心地が軽いため、ガツンとした飲みごたえを求める人には物足りなさを感じる人もいるようです。
しかし、常陸野ネストビールの「セッションIPA」は、優しいフルーティーな甘さとしっかりした苦味が感じられる満足度の高い一杯。ビール好きにもおすすめできる味わいです。
アルコール度数は4.5%と低め。アマリロホップというフローラルな香りが特徴のホップが使用されており、セッションIPAらしい軽さを持ちつつも、ホップの苦味や香りを強く楽しむことができます。
IPA初心者から上級者まで幅広い層から好まれているIPAです。
「ダブルIPA」ビールのおすすめ
通常のIPAよりも大量のホップが使われているのが「ダブルIPA」と呼ばれるビアスタイル。
そのため、苦味がとても強く感じられるのが特徴で、「インペリアルIPA」や、「エクストラIPA」とも呼ばれています。
アルコール度数も高めで、7.5%から10%を超えるものまであります。濃いゴールドのような色をしており、ホップの苦味と共にフレッシュさがあるIPAの一種です。
ダブルIPAらしさを持つ国内の銘柄を紹介します。
ベアードブルーイング「スルガベイ インペリアル IPA」
ベアードブルーイングの「スルガベイ インペリアル IPA」は強烈な苦味のある、ダブルIPAスタイルらしい銘柄です。
ビールの苦味を表す基準の一つに「IBU」という数値があります。
市販されているポピュラーなラガービルはIBUが20前後ですが、ベアードブルーイングの「スルガベイ インペリアル IPA」はなんとIBUが90という驚きの苦さ!
苦いだけではなく、しっかりとした甘みと深い味わいで飲み口は重めです。フルーティーな酵母の香りも感じる余韻は、すっきりとした後味に繋がります。
甘みもあるこってりとした濃い味の料理にぴったり。豚の角煮やすき焼きと一緒に味わってみてください。
「ヘイジーIPA」ビールのおすすめ
ヘイジーIPAは、IPAの中でも比較的新しく生まれたスタイル。それまでのIPAに比べて苦味が抑えられており、フルーティーでジューシーなホップのおいしさを味わうことができます。
アメリカ北東部ニューイングランド地方の醸造所が作ったIPAが起源とされていることから、「ニューイングランドIPA」とも呼ばれています。
ヘイジーIPAの苦さが控えめなのは、ドライホッピング製法で作られているため。
通常、ホップは熱を加えることで苦味が出ます。
そこで、煮汁を煮沸して発酵が終わった後の段階で、ホップを投入します。
これにより、ホップの香りと旨味が引き出され、トロピカルな味わいを感じることができるのです。
ドライホッピング製法で作られたヘイジーIPAから、おすすめ銘柄を3つ紹介します。
伊勢角屋麦酒「ヘイジーIPA」
オーストラリア産ホップを使用した伊勢角屋麦酒の「ヘイジーIPA」は、パッションフルーツのような華やかな爽やかさと、オレンジのような柑橘系のすっきりとした香りで軽い飲み心地です。
シンプルな麦芽のブレンドにより、口当たりは柔らかいままに、ドライな飲み口を実現しています。
旨味はありながらも飲み口が軽いため、合わせる料理を選ばないのもポイント。ぜひお気に入りのおつまみと一緒に味わってください。
ブリュードッグ「ヘイジージェーンニューイングランドIPA」
ブリュードッグの作るIPAの中でも、アルコール度数5%、IBU25と飲みやすいのが「ヘイジージェーンニューイングランドIPA」です。
レモンのような鮮やかなイエローは、グラスの向こうが見えないほどに濁っています。これはドライホッピング製法によりタンパク質やポリフェノールが増えているため。
口当たりはとても軽やか。苦味が控えめなだけではなく、ホップや大麦の甘みでまるでトロピカルジュースのようなフルーティーでジューシーな飲み口です。
IPAビールのうまさを引き出そう! おすすめの飲み方
「ビールと言えばよく冷やすもの」と思われがちですが、IPAビールをおいしく飲むならぬるめが一番!
IPAの魅力を最大限引き出す飲み方のコツを解説します。
冷やし過ぎない!「ぬるめ」がベスト
IPAは冷やし過ぎずに飲むのがポイントです。
重めのボディらしい香ばしさや旨味を感じるには、冷蔵庫から出して15分ほど経った10~12度ぐらいが飲み頃。IPAらしい香りや苦味をしっかりと感じることができます。
IPAの中でもライトなセッションIPAなどは冷たいままでもおいしく飲めるので、スタイルと温度による違いも試してみましょう。
グラスに注いで香りを堪能
IPAビールをおいしく飲むならグラスにもぜひこだわってみましょう。
IPA特有のホップの香りを楽しみたいなら、グラスの先がすぼまっているものがベストです。
口をつけたとき、鼻先に香りがふんわりと届き、味わいと香りを同時に楽しむことができます。
IPAビール専用のグラスも開発されているので、IPA好きならぜひ手にしてみてはいかがでしょうか。
アレンジして楽しむ方法も
そのまま飲んでももちろんおいしいIPAですが、アレンジすることで一味違った楽しみ方もできます。
簡単なひと工夫で楽しめるアレンジ方法を3つ紹介します。
IPA×ワインのカクテル「ビア・スプリッツァー」
ビールにワインを合わせたカクテル「ビア・スプリッツァー」は、甘めの白ワインと合わせることでIPAの苦味との絶妙なバランスを楽しめるアレンジです。
<作り方>
1.よく冷やしたワインをグラスに半分注ぐ
2.残り半分にIPAを注ぎ入れて軽くかき混ぜる
IPA×アイスクリーム
意外に思えるIPAとアイスクリームの組み合わせですが、ホップの強い苦味がアイスクリームのまろやかさとよく合います。
まるでエスプレッソをバニラアイスに掛けるアフォガードのように、絶妙な苦味と甘みのマリアージュが楽しめますよ。
<作り方>
1.バニラアイスをカップに盛り付ける
2.上からIPAを好きな量かける
アイスクリームと合わせるなら、苦味の強いダブルIPAがおすすめです。
IPA×フルーツ
IPAの持つフルーティーな香りは、もちろんフルーツにもよく合います。
おすすめはマンゴーなどのトロピカルフルーツとのコラボ。一緒に食べてもおいしいですが、ここでは冷凍フルーツを使ったアレンジを紹介します。
<作り方>
1.一口サイズの冷凍フルーツをグラスに入れる
2.IPAをグラスに注ぐ
冷凍フルーツが溶けてくるとIPAにフレーバーがほんのりとうつるので、よりフルーティーさを味わえます。溶けかけのフルーツに染み込んだビールも格別。
合わせるのであれば、軽い飲み口で冷やしてもおいしいヘイジーIPAがおすすめ。見た目も綺麗なので、ビール好きな来客にも喜んでもらえるアレンジです。
おすすめのIPAビールを飲んでビール通になろう
IPAはホップや麦芽など、素材のうま味を味わうビールと言っても過言ではありません。
銘柄によって個性が大きく異なるため、飲み比べる楽しさもあります。
自分が好きなベストIPAを見つけて、ビール通として楽しみを広げてみてはいかがでしょうか。