故人を偲び、冥福を祈るために行う「四十九日法要」や、「一周忌」「三回忌」などの「年忌法要(ねんきほうよう)」。
列席者から「御仏前」「御供物料」をいただくことが多く、施主としてはお返しの準備が気になるところです。
今回は法事のお返しにお悩みの方へ
- 法事の知識とマナー
- お返しにふさわしい品物
- お返しの品物金額の相場
- 掛け紙の選び方や表書き
など、施主側の注意ポイントを分かりやすく解説。困ったときのQ&Aも紹介します。
ご列席いただいた方に感謝の気持ちをお伝えできるよう、失礼のないお返しマナーを確認しましょう。
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目次
法事では「お返しの品」を用意する
法事では列席者が「御仏前(ごぶつぜん)」「御供物料(おくもつりょう)」などの現金や、お花・線香などの品物を備えてくださいます。
施主は、列席者からの心遣いに対して「お返しの品」を用意するのがマナーです。
お返しの品は大きくわけて2通りあります。
- 当日、法事に招いた方に差し上げる手土産「引き出物」
- 法事に列席せず、御仏前(供物料)のみ届けてくださった方への「返礼品」
法事では「お返し」「香典返し」どちらが正しい?
法事の準備をしていると、「お返し」が「香典返し」と呼ばれるのを聞いたことがある方もいるでしょう。
実は法事のときに列席者からいただく現金は、正式には「香典」とは呼びません。
香典は“死者の霊に供える香の代わりの金銭”という意味なので、四十九日の忌明け法要以降は「御仏前」と書かれた不祝儀袋をいただきます。
そのため、法事後に渡すお返しの品も「香典返し」ではなく「お返し」とと呼ぶのが一般的です。
正式な言い方と通称が違うのでわかりにくいですね。
正式には「香典」は葬儀のときに霊前に供える金銭なので、そのお返しを「香典返し」といいます。
四十九日を迎えると仏様になるので、仏前に供える四十九日以降の法要に香典はあてはまらないのですが、葬儀や法事で包む金銭のことを通称「香典」と呼び、葬儀や法事で使う不祝儀袋を通称「香典袋」と呼ぶことが多いようです。
また、「引き出物」は宴会のときなどに主人から招待客に贈る手土産をさし、慶事・弔事を問いません。
最近は「引き出物」というと慶事の印象が強いので、弔事のときは「引き物」と呼び分けることもあります。
年忌法要の際は、いただいた「御仏前」のお返しというよりも、法事に招いた方に差し上げる手土産という位置づけですが、実際には「御仏前」のお返しになっています。
▼引き出物と香典返しの違いについて、くわしくはこちらの記事で解説しています。
「法事」と「法要」、似ているが意味が違う
「法事」と「法要」は同じような意味で使われることがありますが、違うことばです。
「法要」とは、僧侶にお経をあげてもらい焼香をするなど、故人の供養のために行う仏教の儀式を指します。
法要の後には、故人を偲びながら一同で会食をするのが一般的です。
「法事」とは、法要から会食までを含めた行事のことをいいます。
年忌法要はいつ、何年ごとに行うのが正式か
年忌法要は年回法要ともいい、節目の命日に故人の冥福を祈って行う法要のことをいいます。
亡くなった翌年は一周忌ですが、それ以降は亡くなった年も入れて数えるので、満2年で三回忌となります。年忌法要は一周忌以降は3と7の数字が付く年回りでおこなうのが基本です。
一周忌、七回忌、十三回忌までは欠かせないとされており、それ以降は十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌と続き、一般的には三十三回忌をもって完全に成仏したと考え、“弔い上げ”として供養を終えることが多いようです。
年忌法要 | |
一周忌 | 翌年(満1年目の命日) |
三回忌 | 満2年目の命日 |
七回忌 | 満6年目の命日 |
十三回忌 | 満12年目の命日 |
十七回忌 | 満16年目の命日 |
年忌法要の日程は、故人の命日(祥月命日)にあわせるのが一般的です。
親戚が集まりやすいタイミングで前倒しに行っても構いませんが、命日より遅らせることはしないので注意が必要です。
また、法事を重ねることで故人を偲び、故人との別れから遺族が立ち直るためともいわれています。
一定期間で行うことが遺族にとっての節目になっているのです。
法事のお返しの相場は2,000円〜5,000円
法事当日の差し上げる引き出物は、いただいたお供えの金額に関係なく、一律で2,000円〜5,000円程度の品物を準備します。
- 法要後、会食ありの場合
- 法要後、会食なしの場合(持ち帰り用の折詰弁当あり)
いずれも、いただいた「御仏前」の金額から、「引き出物」+「食事代(折詰弁当代)」を差し引いた金額が7~8割になるよう、予算を組むとよいでしょう。
お寺の僧侶への引き出物も同様の金額で問題ありませんが、食事を辞退される場合は「御膳料5000円~10000円」が必要です。
法事に参加せず、御仏前のみ届けてくださった方には、1/3~半返しで返礼品を贈りましょう。
高額の御仏前・お供えをもらったときの相場金額は..などケースごとの対応を、こちらの記事で詳しく解説しています。
法事のお返しを渡すタイミングは会食後
法事当日は、以下の通りに進行するのが一般的です。
引き出物をいつ渡すのかも合わせて確認しましょう。
<当日の進行>
- 僧侶(お坊さん)のご入場
- 施主のあいさつ
- 僧侶の読経
- 焼香
- 僧侶の法話
- お墓参り(お墓が自宅から遠い場合は省略)
- 施主のあいさつ
- お斎 (法要後の会食のこと。※読み:おとき)
- 会食後または会食の終盤に引き出物を手渡し
- お見送り
お返しは「会食の後」または「会食の終盤」に手渡しするのが基本とされています。
ただし、人数が多い場合には列席者を待たせてしまわないよう、会食前に席に配置しておいてもかまいません。
会食がない法事では、施主のあいさつが済んだあとお帰りの際に手渡しするようにしましょう。
法事のお返し品物|消えもの・軽いものが基本
法事の引き出物は、消費すると形に残らない「消えもの」が基本です。
以下の点を押さえて品物を選びましょう。
- 軽くてかさばらず、持ち帰りやすいもの
- (食べものなら)一カ月以上日持ちするもの
- 「グレー」「銀色」「薄紫」「白」など、落ち着いた色のパッケージ
好適品は、以下のような品物です。
お菓子は個包装になっていて、日持ちするものを選べば、もらった側が消費期限を気にすることなく余裕をもって味わえるでしょう。
その他の食品では、
なども昨今人気を集めています。
日用品では洗剤や石けんが定番ですが、重いものなるべく選ばないよう配慮しましょう。
近年の一番人気は「カタログギフト」
近年カタログギフトをお返しの品物として選ぶ方が増えています。
かつては”選ぶ手間を惜しんでいる”といったマイナスイメージもありましたが、
- 相手の性別・年齢層や好みを問わない
- 贈られた相手がカタログの中から、今、必要なものを自由に選べる
というメリットがあるからでしょう。
さらに施主側としても、忙しい準備の中、お返しの品選びの負担を減らすことができます。
- 2000円前後~数万円程度のものまで、希望の価格帯から選びやすい
- 質の高い割引カタログなら、予算内でより上質な品を贈れる
- カタログのテーマが多様で、相手の年齢や性別、好みを考慮した贈り分けも可能
「被ったり、不要なものを贈るのを避けたい」「若い人、子どもにも喜ばれる引き出物を探している」といった方にこそ、カタログギフトはおすすめです。
タブーは四つ足生臭もの・おめでたいもの
引き出物には、タブーとされる品物もあります。
以下の品は、品物選びの際に避けましょう。
<法事のお返し タブーの品>
- 「四つ足生臭もの」…肉や魚などの「生もの」
- 慶事を思わせる品…昆布やお酒、かつお節など
- 松竹梅、鶴亀、うさぎ、ふくろうなど、縁起のよいモチーフ
人気の「商品券」は相手を選ぶので注意
商品券は金額が調整しやすく、何かと使い勝手が良いため重宝されるでしょう。
引き出物には全国で利用できる商品券を、「4」や「9」といった数字を避けた金額で用意します。
お渡しする際には封筒や箱などに入れ、掛け紙(のし紙)もかけましょう。
ただし、地域や年代によっては「お返しに商品券はふさわしくない」「目上の人に商品券を贈るのは失礼」という考えもあるので注意が必要です。
商品券を法事のお返しに選びたい場合は、周囲の人とも相談しながら、状況に合わせて判断してください。
四十九日・一周忌・三回忌。法事ごとの品物選びのコツ
法事は、葬儀の後日「初七日」や「四十九日」の法要が行われ、その後節目の年に「年忌法要」が続いていきます。
一周忌、三回忌…三十三回忌と、年数を重ねていきますが、お返しの選び方は同じでしょうか?
四十九日や一周忌では、定番が安心
品物選びの基本はいつの法事でも変わりませんが、列席する方は回を重ねるごとに変わっていきます。
<法事の一般的な列席者>
- 四十九日・一周忌…家族、親族とごく親しい友人
- 三回忌…家族と親族のみ
- 七回忌以降…家族(・ごく近しい親族)のみ
※地域や家庭によっても異なります。
四十九日や一周忌の法事で故人の友人やお世話になった方が列席する場合には、より格調高い品物が安心です。
「老舗のお菓子」や「高級感のある国産タオル」などが好適品でしょう。
▼お菓子・タオル・食品など四十九日のお返しにふさわしい安心の品物はこちらでもご紹介。
三回忌、七回忌、十三回忌…では肩ひじはらない品物選びも可
三回忌、七回忌、十三回忌…以降の年忌法要では、近しい間柄の方が集うケースがほとんどです。
「みんなお酒が好きだからおつまみにしよう」「子どもも喜ぶクッキーにしよう」のように、マナーの範囲で肩ひじ張らずに選んでもよいでしょう。
▼「一周忌と同じ」にならない品物選び。三回忌以降の引き出物はこちら
小規模の法事|引き出物の有無は「御仏前の有無」で判断
法事では引き出物を用意するのが大原則ですが、判断に迷うのは「ごく親しい身内のみで行う少人数の法事」です。
少人数の法事で引き出物を用意するかどうかは、「御仏前の有無」を判断基準にしましょう。
たとえば七回忌以降、家族のみで法要を執り行い御仏前をいただかないなら、引き出物は省略してもかまいません。
お返しの品には掛け紙(通称:のし紙)やお礼状を
水引の色は「黒白」が一般的ですが、関西では「黄白」を使用する地域が多くあります。
地域や宗教によって習わしが違う場合がありますので、迷ったときは年長者や親族に確認すると安心です。
掛け紙に「蓮の花」が描かれている場合は「仏式」専用です。
「神式」や「キリスト教式」では使えないため注意しましょう。
掛け紙(通称:のし紙)の表書きの書き方
表書きには
- 志
- 粗供養(主に西日本)
- 偲び草(神道、キリスト教)
と書くのが一般的です。
こちらも、地域や宗教によって違うので、周囲の人に確認をしておきましょう。
水引の下側には施主の姓のみ、または姓に「家」をつけます。
施主と故人の姓が異なる場合は、トラブルの元にならないように、事前に家族で話し合って決めておきましょう。
お礼状について
法事を欠席した方から御仏前(御供物料)をいただいた場合は、後日返礼品を送ります。
返礼品には必ずお礼状を添えましょう。
句読点は使わずに、謹啓(または拝啓)から始まり謹白(または敬具)で締めくくります。
法事のお礼状には、時候の挨拶は書きません。
文章作成の際には、故人の名前、いつ何回忌の法要を行ったのか、心遣いへの御礼などを、丁寧に書き記すことが大切です。
お礼状の例文は以下の記事で紹介していますので、参考にしてください。
引き出物の手配は掛け紙・お礼状無料のギフト専門店が安心
法事の引き出物は、百貨店やギフト専門店で手配をするのが安心です。
品物の質の高さはもちろん、包装や掛け紙、お礼状にもきちんと配慮して引き出物を用意できます。
ギフト専門店GiftA(ギフタ)では、ご自宅にいながら品物から掛け紙まで一貫して手配が可能。
掛け紙とお礼状は、無料でご用意しています。
またカタログギフトのほか、対象商品を購入いただくと持ち帰り用の手提げ袋が無料です。
法事までの間、施主は数多くの準備に追われるます。
ぜひネットショップをうまく活用して負担を減らしてください。
注意!法事のお返しQ&A
法事のお返しにまつわる疑問をQ&A方式で解説します。
いざとなると困ってしまうことばかりですので、ぜひ参考にしてください。
「高額のご仏前が包まれていた!」後日の対応は?
親族や近しい方から、3万円以上の高額の御仏前をいただくことがあります。
法事の引き出物は当日お渡しするため、法事が済んでから「高額の御仏前を頂いた!引き出物の金額と釣り合わない…」となるのはよくあることです。
一般的には当日の引き出物で済ませることが多いのですが、気になるようなら法要後1週間~10日以内に、お礼状とともに追加の品物を送るとよいでしょう。
表書きは「御礼」もしくは「志」と書きます。
▼法事のお返しの相場金額について詳しく解説
葬儀の「香典返し」と四十九日法要の「引き出物」、一緒に贈ってもよい?
葬儀の「香典返し」と四十九日法要の引き出物は、基本的に同じ日には贈りません。
葬儀の香典返しは、四十九日(忌明け)法要後に、挨拶状を付けて贈ります。
四十九日法要にいらした方への一般的な対応は以下の通りです。
- 当日、引き出物を手渡す
- 後日、香典返しを贈る
また、四十九日法要を欠席された方から御仏前をいただいた場合には、先に香典返しを贈り、数日後に四十九日法要の返礼品が届くようにします。
お供え物をいただいたら、お返しはどうする?
親族や近しい方から、お花や盛篭などのお供え物をいただくことがあります。
大変悩ましいところですが、基本的に金銭以外のお供え物にはお返しは不要とされています。
ただし高額の花や供物には、きちんとお返しをしたほうがよいでしょう。
下記で「お供えをいただいたときのお返しマナー」について詳しく説明しています。
法要は宗教や宗派によって違う
ここまでは仏式の一般的な慣例にのっとって解説してきました。
同じ仏教であっても、法要(法事)のタイミングや回数などは、実は宗派によってさまざまです。
仏教以外では、法要に相当するほかの儀式を行います。
仏教の宗派による違いと、神式、キリスト教式の儀式について解説します。
仏教の宗派による年忌法要のタイミングの違い
仏教では、年忌法要のタイミングが宗派によって異なることがあります。
基本的に、一周忌以降は3と7の数字が付く年回りでおこない、「三回忌」「七回忌」「十三回忌」「十七回忌」「二十三回忌」「二十七回忌」「三十三回忌」と続きます。
しかし、二十三回忌と二十七回忌を省略する代わりに二十五回忌を行う宗派もあります。
例:真言宗、曹洞宗、天台宗など ※地域や寺によって異なります
ほとんどの宗派では三十三回忌をもって“弔い上げ”としますが、五十回忌や百回忌を行う宗派もあります。
例:真言宗、曹洞宗、浄土宗など ※地域や寺によって異なります
また、日蓮宗では“弔い上げ”という概念がありません。
神道(神式)の場合
神道で法要にあたるものは霊祭と呼ばれています。
葬儀から50日までは、10日ごとに行うのが正式です。
五十日祭が仏教の四十九日法要にあたり、そのあとには百日祭を行います。
年忌法要にあたるのは式年祭で、一年祭、二年祭、三年祭、五年祭、十年祭を行い、その後は五十年祭まで十年ごとに行うのが一般的です。
年祭の数え方は数えではなく「満〇年」です。仏教とは異なるので注意してください。
キリスト教(キリスト教式)の場合
キリスト教は、おもにカトリックとプロテスタントの2つの教派に分けられます。
カトリックの場合、亡くなった日から3日目、7日目、30日目、1年目に追悼ミサを行うのが一般的です。
プロテスタントの場合は、1カ月後の召天記念日に記念式、1年目、3年目、7年目などの召天記念日に追悼式を行います。
キリスト教では、死は終わりではなく神に召された記念すべきものとされるので、お悔やみの言葉を述べることはありません。
遺族とともに故人の思い出を語り合い、安らかな眠りを祈りましょう。
ミサでは聖書の朗読や聖歌を斉唱するほか、ミサの後、教会の一室や自宅で茶話会を開いて列席者をもてなします。
【まとめ】法事のお返し「引き出物」の基本知識
一周忌、三回忌などの法事で列席者からいただく現金のことを、「香典」ではなく、「御仏前」と言います。
また、お返しの品のことも「香典返し」ではなく「お返し」「引き出物」と言い、一律2000円〜5000円程度の品物が用意されることが多いようです。
従来のお返しの品は消えものであるお菓子や使い勝手の良い日用品などが選ばれる傾向にありましたが、近年では相手の好みを問わず選択肢も幅広いカタログギフトが人気を集めています。
地域によって掛け紙の書き方などが異なるので、事前に慣習を確認しておきましょう。