スーパーや酒屋で、ラベルに「きもとづくり」と書かれたお酒を目にしたことはありませんか?
きもとづくりとは、手作業で仕込む日本酒の醸造法で、奥深いコクのある味わいが特徴です。
きもとづくりの工程に関する情報や、おすすめの日本酒を紹介します。
目次
きもとづくり(生酛造り)とは?
「きもとづくり(生酛造り)」のお酒は、日本酒好きの人に広く知られている人気のお酒です。しかし、日本酒ビギナーの中には「どんなお酒かよく知らない」という人もいるのではないでしょうか?
きもとづくりのお酒への理解を深めるために、まずは醸造法や味わいの特徴などをチェックしていきましょう。
昔ながらの手作業で仕込む日本酒の醸造法
きもとづくりは、天然の乳酸菌の力を活用した日本酒のつくり方です。
日本酒づくりの肝となる「酵母」を、自然の力を借りながらていねいに仕込んでいくのが特徴になります。
1. 天然の「乳酸菌」の力を活用して雑菌の繁殖を抑える
2. 日本酒の発酵に必要な微生物「酵母」が活動しやすい環境を整える
寒い時期の夜中に熟練の職人が手作業するという、江戸時代頃に普及した昔ながらのつくり方が特徴。
品質を維持するために、伝統にならって木製の道具を使用するなど、道具にもこだわってつくられています。
酒づくりの技術が発展している現代において、きもとづくりは大変に時間と手間のかかる酒造方法です。そのため、全国千数百あるといわれる酒蔵の中でも、数蔵のみが行っている貴重な製法となっています。
天然酵母ならではの奥深いコクのある味わい
自然の力を生かしたきもとづくりの日本酒は、奥深いコクのある味わいが魅力です。
天然の乳酸菌により活動しやすい環境が整った酵母が酒づくりの間中しっかりと醗酵し続けるため、控えめな甘さと濃厚な味わいが楽しめます。
絶妙なバランスで味を保っていることから、冷やして飲んでも、温めて「熱燗」にして飲んでもおいしく楽しめます。
また、きもとづくりでつくられたお酒は、時間の経過による品質劣化が少なく、特に「吟醸酒」は香りが長続きするといわれています。
近年のメジャー「速醸(そくじょう)」
速醸は、酵母を仕込む際に、乳酸を添加してアルコール発酵を行う製法のことです。明治末期の近代に生まれたとされており、現在は多くの日本酒で取り入れられています。
乳酸を活用して雑菌の繁殖を防ぐという部分は、きもとづくりと似ていますが、大きく違うのは「使用する乳酸」です。
きもとづくりでは、天然の乳酸を使いますが、速醸では「人工の乳酸」を使います。人工の乳酸菌は、乳酸菌を一から培養する手間がかかりません。そのため速醸では、お酒のもとになる酒母をつくる際にかかる時間が、きもとづくりのおよそ半分である15日程度です。
「きもとづくり」は日本酒づくりのどの部分?工程をチェック
きもとづくりは、昔ながらの醸造法と解説しましたが、具体的にはどのように日本酒をつくっているのでしょうか?
精米・酵母づくり・仕込み・発酵など、日本酒づくりのプロセスや、どの工程が「きもとづくり」と呼ばれているのか、大まかに紹介していきます。
【1】玄米を精米する
日本酒づくりは、玄米を磨いて白米へと近づける「精米」から始まります。
ここで、どの程度お米を磨いたかという「精米歩合」や、醸造アルコールを添加する・しないによって、お酒のランクや種類が変わってきます。
精米歩合が60%以下(玄米を40%磨いた状態)である場合や、特別なつくり方をしている場合は、「特別純米酒」「特別本醸造酒」など日本酒の種類に「特別」という文字が付きます。
基本的に、精米歩合が低いお酒は高価な傾向にありますが、だからといって「おいしい」というわけではありません。人によって味の好みは異なるため、精米歩合よりも、そのお酒ならではの風味を重視しましょう。
【2】酒母づくり(しゅぼづくり)★きもとづくり★
精米のあとに、お米を水洗いする「洗米」、窯でお米を蒸らす「蒸米」、日本酒づくりに欠かせない“麹”をつくる「麹づくり」などの工程を挟んだら、次は「酒母づくり」という工程に移ります。
この酒母づくりというのが「きもとづくり」の部分です。
酒母づくりでは、水・乳酸・蒸米・米麹などを混ぜ、糖分をアルコールに転換する乳酸菌を加えて発酵を行います。大量に培養したものが、お酒の母となる「酒母」です。
米麹が蒸米のでんぷん質を糖へと分解し、その糖をエネルギーにして酵母がどんどん増えていきますが、同時に糖が好物の雑菌も増えやすくなります。
職人は雑菌が増えないように、温度や衛生面に気を遣いながら、およそ4週間という長い時間をかけて酒母づくりに取り組みます。
【3】仕込み・発酵
酒母づくりのあとは、酒母をタンクに移し麹・蒸米・水を数回に分けて加え、発酵を促す「仕込み」という作業に移行します。段階を経て、およそ20日~30日かけてじっくりと発酵させたものが、日本酒の前段階となる「もろみ」です。
もろみをつくる際は、仕込み方によってできあがる日本酒の味わいが変わります。
仕込みの回数が多いほど、甘みのある日本酒になり、仕込みに「硬水」を使えばキレ味のいい日本酒になります。
仕込みのあとは、もろみをこして日本酒と酒粕に分けて、搾った日本酒をろ過します。ろ過したら加熱処理を行い、熟成・調合という工程を経て、瓶に詰めたら完成です。
きもとづくりに合う料理は?ペアリングを楽しもう
芳醇な香りとコクのある味わいが魅力のきもとづくりですが、どんな料理と相性がよいのでしょうか?
きもとづくりの日本酒に合う定番料理から、ちょっぴり意外な料理まで、幅広くピックアップしてみました。
ピザ・グラタン・クリームシチューなど乳製品
天然の乳酸を活用しているきもとづくりの日本酒は、ピザ・グラタン・クリームシチューなど乳製品との相性が抜群です。
乳製品ならではのコクのある料理と合わせても味が負けないので、より奥深い味わいが堪能できます。フレンチやイタリアンなどの洋風の料理をふるまう際、食卓に出してみましょう。
また、きもとづくりの日本酒はうまみ成分・アミノ酸が多く、脂っこい料理と合わせると口の中がすっきりとします。ハンバーグやステーキなどの肉料理ともよく合うでしょう。
寿司・おでん・塩焼き
きもとづくりの日本酒は、出汁や旨味の効いた料理とマッチするため、和食ともよく合います。
冷やして寿司と合わせたり、温めておでんと合わせたりするなど、料理によって温度を調節すれば、おいしさが倍増するでしょう。
また、日本酒の定番おつまみである塩焼きのほか、鯖の味噌煮や豚の角煮といった味の濃い料理とも調和します。
幅広い和食と合うので、来客の際に「今日はどんなお酒を出そう…」と悩んだときにおすすめです。
天ぷら・カレー・とんかつ
きもとづくりの日本酒は、天ぷらやとんかつなどの揚げ物の脂っこさを洗い流し、爽快感を与えてくれます。
ちょっとしたお祝いごとや、ホームパーティーなどで、脂っこい料理をふるまう際に活躍してくれるでしょう。
また、驚くべきことに家庭料理の定番・カレーともよく合います。きもとづくりならではの甘味がカレーの辛味をやわらげ、まろやかな味わいにしてくれます。
「きもとづくり」でつくられる「白鷹」の日本酒
きもとづくりの日本酒「白鷹」は、日本で唯一「伊勢神宮御料酒(神々のお供え)」に選ばれている酒蔵です。
江戸時代から酒米の産地として知られる兵庫県吉川町の「山田錦」と、日本酒づくりに適している硬度が高い「宮水」が使用されており、辛口ですっきりとした味わいに仕上がっています。
日本酒本来の絶妙な香りと味わいから、料理の味を邪魔することもありません。日本料理はもちろん、西洋料理にもよく合うお酒です。
「生もと・大吟醸純米 極上白鷹 720ML」
白鷹おすすめの1本です。雑味が少なく、白鷹ならではの絶妙なキレ味が堪能できます。
うなぎや焼き鳥など、たれを使う味の濃い和食だけでなく、ビーフシチューをはじめとした洋食との相性もよいので、毎日の食卓で大活躍してくれるでしょう。
「生もと・本醸造 上撰白鷹菰冠 300ML」
昔からお祝いの鏡開きの際に使われる「こも樽」を家庭で楽しめるサイズにした商品です。
伊勢神宮御料酒に選ばれている白鷹を、お正月やホームパーティーなどで楽しめます。華やかで厳かな見た目が、お祝いムードを盛り上げてくれるでしょう。
「【ミニブーケ入り】白鷹2種飲み比べセット」
コクのある味わいが特徴の「超特撰白鷹」と、軽めの喉越しが特徴の「吟醸山田錦」の2本と、ミニブーケがセットになった商品です。
ミニブーケのかすみ草とソーラーローズの優しい色合いが、さりげない大人の華やかさを演出してくれます。
友人や恋人、家族などの誕生日プレゼントや、お祝いごとにおすすめです。
きもとづくりの日本酒を飲んでみよう
自然の力を借りて、長期に渡って丁寧に仕上げられるきもとづくりの日本酒は、お米のうま味と甘味、そしてコクのある味わいが魅力です。
手間をかけてじっくりと酒と向き合う職人の技と、日本の伝統がぎゅっと詰まっているのがきもとづくりの日本酒なのです。
寿司や塩焼き、おでんなどの和食はもちろん、ピザ・グラタン・クリームシチューなどの洋食とも相性抜群なので、どんな食卓でも料理のおいしさが際立つでしょう。
今回紹介した「白鷹」は、伊勢神宮のお供えとしても選ばれているお酒です。お祝いごとや人へのプレゼントを贈る際の参考にしてはいかがでしょうか。