葬儀では、参列していただいた方から香典をいただくことが通例です。
地域によって違いますが、香典をいただいた場合、遺族はその金額の3分の1〜半分程度の品で香典返しを行います。
しかし、最近は香典返しをせずに、その分のお金を慈善団体などへ寄付するケースもあるようです。
香典返しを寄付する際、香典をくださった方々へその旨を伝える必要がありますし、寄付について知っておくべきこともあります。
香典返しを寄付に回すことについての注意点やメリットなどをご説明します。
香典返しを「寄付にまわす」という選択肢
香典返しは、葬儀の際にいただいた香典と弔意に対し、感謝の気持ちを伝えるものとして用意するのが慣例ですが、近年、香典返しを寄付に回すケースも多くなっています。
香典返しを寄付するケースの具体例
香典返しの寄付は、故人の遺志によるものや、遺族の意向によって行われます。
故人が生前から寄付を行っていた福祉施設や団体、子供たちの施設などに贈ることが多いようです。
故人が遺書に、香典返しを寄付するようにと記した場合は、その趣旨に沿って行います。
遺書がない場合でも、故人の生前の行いに沿って、お世話になっていた団体や施設などへの寄付を行うことが多いようです。
寄付をする場合に注意しておきたいこと
故人の遺書に香典返しを寄付するようにと書かれていた場合でも、遺族が寄付を選択する場合でも、寄付する団体や組織、施設が信用できるところなのかをまず調べることが必要です。
香典は故人にゆかりのある方々が、ご遺族に対し、葬儀に使ってくださいという趣旨でくださるものです。
その気持ちを無下にしないためにも、寄付予定の施設などについてしっかりと確認すべきです。
また、香典返しを寄付する場合、税制上の優遇措置を受けられることがあります。
各都道府県や自治体によって定められた施設、団体以外に寄付した場合、税制上の優遇措置対象とならないこともあるため、必ず確認してから寄付先を決めることが重要です。
どこに香典返しを寄付するの?
「香典を寄付するように」と故人の遺書に寄付先などが具体的に書かれていればいいのですが、具体的な施設名や団体名がない場合や、遺族が寄付を検討するとき、どこに寄付すればいいのでしょう。
故人ゆかりの団体・組織
生前寄付を続けていた故人なら、いつも寄付していた施設や団体などに寄付しても良いでしょう。
また、故人が仕事上や、プライベートでお世話になっていた団体・施設などに寄付をしても良いでしょう。
社会福祉協議会などの団体・組織
このほかに、社会のために尽力する団体への寄付も考えられます。
社会福祉協議会
故人がお世話になっていた団体や施設などが特にない場合は、地元の社会福祉協議会への寄付を考えても良いでしょう。
社会福祉協議会は、民間の社会福祉のためにさまざまな活動を行っている非営利団体です。
保健・医療・教育など、地域に根付いた活動への協力ができます。
日本骨髄バンク
日本骨髄バンクは、白血病などの血液疾患に苦しむ方々を救済する団体です。
骨髄バンクへのドナー登録への呼びかけを行うなど、一人でも多くの患者さんを救いたいと活動しています。
骨髄バンクへのドナー登録者数は以前よりも増えてきているようですが、それでもまだまだ足りない状態です。
寄付をすれば、ドナー登録を推進する費用に役立てられるでしょう。
病気に苦しむ人を助ける力になれる日本骨髄バンクへの寄付も考えてみましょう。
日本赤十字社
日本赤十字社は紛争や飢餓、病気などで苦しむ人たちを救う活動や生活を支える活動、さらに苦しむ人たちを救う人材を育成する活動などを行っています。
世界の平和を願う多くの方々が寄付をおこなっている団体です。
世界的にも知名度が高い団体ですし、大企業からの寄付も多いことで知られています。
世界で活動を行う日本赤十字社に寄付することで、世界で苦しむ人たちへの協力につながります。
香典返しを寄付する場合の説明
故人が亡くなったことを悲しみ、悼むまごころからいただく香典です。
ですので、それを寄付するとなれば、香典をくださった方々へ、「香典返しを寄付させていただく」ということを伝えるのがマナーといえるでしょう。
香典を贈っていただいた方々へはどう伝える?
香典返しを寄付する場合、香典をくださった方へ香典返しを寄付させていただくと伝えることが必要です。
葬儀の段階で香典返しを寄付することが決まっている場合、会葬礼状に「故人の遺志により勝手ながら香典返しは○○へ寄付させていただきます」と書き添えておきます。
葬儀の後、寄付することが決まった場合は、四十九日など忌明けの法要後、お礼状・挨拶状の中に香典返しを寄付させていただいた旨を書き添えて送ります。
お礼状の文例
お礼状の文例は以下のような内容が一般的です。
決まった形式はないので、感謝を込め、失礼がないようにお礼の気持ちを記しましょう。
先日 亡祖母○○儀 葬儀に際し一方ならぬご厚志を賜り 謹んで御礼申し上げます
〇月〇日に故人の四十九日を滞りなく済ませることができました
生前のご厚情に対し感謝申し上げるとともにご報告申し上げます
誠に勝手とは存じますが ご芳志の一部について故人の遺志により○○へ寄附させていただきご返礼と代えさせていただきました
何卒ご了承いただきますようお願い申し上げます
本来であれば拝眉の上ご挨拶申し上げるところ 略儀となりますが書中にて御礼のご挨拶申し上げます
どこに寄付をしたかをしっかり明記
香典返しを寄付し、香典をいただいた方々へ寄付させていただいたことをお礼状、挨拶状にしたためて送る際、ポイントとなるのが「寄付を行った先」を明確にすることです。
故人、遺族のために贈った香典を、故人の遺志、遺族の遺志とはいえ寄付するのですから、どこへ寄付したのかをしっかりと伝える必要があります。
香典返しの寄付、税法上の扱いは?
香典返しを寄付した時、気になるのは法律上、税務上どういった扱いになるのかという点です。
課税対象などになるのでしょうか。
法律上どうなるのか、これもしっかり理解したうえで寄付を行う必要があります。
寄付をした場合は控除対象に?
葬儀の香典に関しては所得税、贈与税がかからず非課税となり、葬儀にかかった費用は相続財産から控除することができます。
しかし、香典返しに関しては控除対象ではなく、葬式費用に該当しないため非課税となりません。
香典返しを寄付する場合は、所得税法によって寄附金控除対象となります。
寄付をした場合の優遇処置とは
香典返しに相当する金額を団体や施設に寄付する場合、その寄付先が地方自治体の「税制優遇」対象となる団体であれば、さらに住民税における税額控除の対象となります。
例えば住所地の都道府県共同募金会への寄付や、日本赤十字支部への寄付、都道府県・市区町村が条例によって指定している寄附金などなら、住民税の税額控除の対象となるのです。
まとめ
故人が遺言で香典返しについて寄付をと願うこともありますし、ご遺族が香典返しの寄付を決めることもあります。
香典返しを寄付すると決めても、寄付する先について調べることが必要ですし、お礼状の用意など、知っておくべきことがあります。
気持ちのこもった香典に対する香典返しを寄付させていただくのですから、礼儀知らずとならないように、しなければならないことを理解した上で行いましょう。