この記事では、退職祝いの「のし(熨斗)紙」にまつわるマナーを解説します。
慶事の贈り物には、紅白の水引が描かれたのし紙が欠かせません。
「退職祝い」そのものが慶事といえるかどうかで迷う人もいるようですが、結論をいえば「のし紙」を掛けるのが基本です。
ただし、一口に「退職」といっても、定年・転職・起業・結婚・出産など、理由は様々にあります。
中には、お祝いの言葉がふさわしくない退職理由のケースもあるでしょう。
贈り物に掛けるのし紙の書き方も、そのときどきの事情に配慮する必要があります。
そこでギフト専門店「ギフタ」が、退職理由別に、ふさわしいのし紙の書き方やプレゼントの贈り方マナーを解説します。
退職し新たなステージへ向かう人へ、送り出す側から感謝と励ましを伝える退職祝い。
お相手に気持ちよく受け取っていただけるよう、贈答マナーを確認しておきましょう。
目次
退職祝いにはのし紙を掛けて礼を尽くそう
のし紙は日本の伝統的な贈答文化であり、正式な贈り物であることを示すものです。
のし紙を掛けた贈り物は、贈り主からの敬意と礼を尽くす姿勢を先方へ伝えます。
贈り物の名目に合わせてのし紙や水引(飾り紐)を使い分けるのは、贈答マナーの基本中の基本。
ふさわしくないのし紙を使うと、相手によっては「常識がない人なのかな」と判断されてしまうかもしれません。
のし紙のうっかりミスを防ぐために、本来の意味を知っておきましょう。
「のし」の本来の意味
そもそも「のし」とは、「熨斗鮑(のしあわび)」を略した呼び方です。
あわびは日本古来より、神事のお供え物として用いられてきた縁起物。
「熨斗鮑」は、あわびの身を薄くスライスし、さらに押し伸ばして乾燥させ、日持ちするようにした保存食です。
長生きする鮑を押し伸ばして加工することから、「慶びが長く続くように」「長寿をもたらすように」との願いを込めて、熨斗鮑を祝い事の贈り物に添える風習が生まれたとされています。
熨斗鮑を紅白の和紙で包んで水引で結んだものを「折熨斗(おりのし)」といいます。
かつては、慶事の贈り物に折熨斗を付けて贈る風習がありました。
現在では簡略化され、「略式の折熨斗と水引を印刷したもの」を「のし紙」として、贈り物に掛ける習慣が広まっています。
退職祝い、基本ののし紙(水引)は「紅白・蝶結び」
のし紙の水引(飾り紐)は、おおまかに分けて以下の3種類の結び方が代表的です。
- 結び切り(本結び)……一度きりが望ましい贈答に用いる(慶事なら婚礼など。その他弔事全般)
- あわじ結び……結び切りの発展形といわれる結び方。結び切りと同様の意味であり、より豪華な印象を与える。
- 蝶結び(花結び)……何度繰り返してもめでたい慶事に用いる(出産など)
退職祝いに掛ける水引は「紅白」「蝶結び」が基本とされます。
蝶結びの水引は引っ張るとほどけますが、すぐ結び直せることから「何度も繰り返してもめでたい祝いごと」を表すとされます。
一方、結び切りやあわじ結びは水引を引くとさらに固く結ばれるため、「一度きりにしたいお祝い」の象徴とされます。
結び切りをさらに複雑にしたのがあわじ結びで、応用範囲が広く、西日本では慶弔両方の贈答に広く使われています。
退職祝いに使う水引は「蝶結び」が基本ですが、会社を去る理由は人それぞれ。
中には「退職祝いと結婚祝いを兼ねた贈り物」のように、どののし紙(水引)を使うべきか迷うケースもあるでしょう。
以下の段落で、具体的な退職理由ごとに、ふさわしいのし紙と表書きの例をご紹介します。
【退職理由別】のし紙の水引・表書きの使い分け
退職祝いののし紙の表書き(贈り物の名目)は「御礼」が基本です。
そのほか、以下のような表書きを使うことも可能です。
- 御祝
- 感謝
- 贈呈
- 祝定年退職
- 御贐(おはなむけ)
- 御餞別
- 心ばかり
上記の表書きの中には、目上・目下の関係性を踏まえて使い分けないと失礼に当たるものもあるので注意しましょう。
たとえば、「別れのしるしとして贈る金品」を意味する「御餞別(おせんべつ)」の表書きは、部下から上司へ個人的に贈るには適さないとされています。
上司へ個人的に退職祝いを贈るなら、「御贐(おはなむけ)」または「御礼」の表書きにするのが無難です。
以下に、退職理由に合わせた表書き・水引について、詳しく確認していきましょう。
定年退職の場合
定年退職は、基本的に一生に一度のこと。
「贈り物に掛ける水引は蝶結びではなく、結び切りでは?」と思う人が多いようです。
しかし、第二の人生を謳歌して欲しいという願いを込めて、「紅白の蝶結び」にするのが基本です。
定年退職祝いの表書きは、「御退職祝」「御贐(おはなむけ)」「御祝」「御礼」などにするのが一般的です。
他にも、役員や議員などしかるべき職務から退くときは「御退任祝」、国家公務員なら「御退官祝」の表書きも使えます。
定年を迎えて第一線を退く世代の人たちは、人生経験が豊富で贈答マナーにも詳しい傾向にあります。
定年退職祝いを贈る際は失礼にならないよう、特にマナーに気を配りましょう。
結婚で退職する場合
結婚による退職祝いの水引は、「紅白・結び切り」がふさわしいとされます。
「結婚は一生に一度だけが望ましいお祝い事」という意味を象徴し、引っ張るほど固く結ばれる結び切りの水引を用いましょう。
結婚と同時に退職するケースでは、「結婚祝いと退職祝いのどちらを贈ろうか」と迷ってしまうもの。
その場合は、退職祝いよりも結婚祝いを優先するのが一般的です。
結婚祝いに使われる表書きは「御結婚祝」「寿」などが基本ですが、退職祝いも兼ねるなら「御礼」にしても問題はないでしょう。
出産で退職する場合
出産を控えて退職する女性には、退職祝いよりも出産祝いとして贈るべきかと思いがち。
しかし、これは常識的にタブーとされています。
出産には何があるかわかりません。
万が一、出産にトラブルがあったら、相手に悲しい思いをさせてしまう可能性もあります。
どうしても出産祝いを贈りたいのであれば、無事に赤ちゃんが生まれてからのほうが安心です。
出産は何度あってもめでたい慶事であるため、出産による退職祝いには「紅白・蝶結び」の水引を用います。
のし紙の表書きは、万が一のことを考えて「祝」という文字を避けるのが無難。
「御礼」の表書きで、今までがんばってくれた感謝を表すのがベターといえます。
転職や独立・起業など自己都合で退職する場合
転職・独立・起業などの自己都合で退職する際は、「紅白・蝶結び」の水引を用います。
新たなフィールドへ挑戦するために退職する人への表書きは、「御贐(おはなむけ)」または「御餞別(おせんべつ)」などがふさわしいでしょう。
「御贐」という言葉には、「旅立つ人への激励」の意味が込められています。
その昔、道中の無事を祈って、旅人が乗る馬の鼻を目的地の方向に向けてやる習慣があったことから、この言葉が生まれたとされています。
伝統的な表書きには、深い意味が込められているもの。
本人の状況にぴったりの表書きは、新しい門出を後押しするメッセージになりそうです。
リストラや早期退職など会社都合で退職する場合
リストラや早期退職などの会社都合で退職するケースでも、のし紙の水引は紅白・蝶結びで問題ないとされます。
ただし、本人の意に沿わない退職理由だと「お祝い事と同じ水引は心情的に使いにくい」と感じる人もいることでしょう。
その場合、のし紙の替わりに無地の短冊に表書きをし、贈り物に貼る方法もあります。
会社都合で退職する方への表書きは、“ほんの気持ち”を表す「心ばかり」や、一般的な退職祝いと同様の「御礼」がおすすめです。
贈り物が高価だと、表書きが「心ばかり」では不釣り合いになるため、「御礼」のほうが適しています。
とはいえ、本人の希望ではなく会社都合で退職する場合は、本人の心情を汲むことがなによりも優先。
大げさな贈り物を避ける心くばりも大切といえます。
退職祝いののし紙、贈り主(名入れ)の書き方
のし紙の水引の下の部分は「名入れ」とも呼ばれ、贈り主の氏名を書き入れます。
名入れをするときは、間違って贈る相手の名前を入れないように気を付けてください。
個人で退職祝いを贈るなら、名入れ部分に個人名を書きます。
複数人の連名で贈る場合は。贈る人数によって名入れの書き方が異なります。
以下に表書きの書き方を人数別に解説します。
①会社、もしくは同部署の全員で贈る場合
一般的に、会社内や同じ部署内の人たち全員で退職祝いを贈る際は、表書きに「〇〇一同」と略して記載します。
- 「〇〇会社 有志」
- 「〇〇部 一同」
など。
有志だけでなく代表者名を入れたいなら、代表者名を中央に大きく書き、その左に「〇〇一同」と少し小さめの文字で書いて、バランス良く仕上げてください。
②2~3人の連名で贈る場合
仲間内の2〜3人で退職祝いを贈るケースでは、のし紙に全員の名前を書くことができるため、贈り主全員の名前を書きます。
名入れは、右から左へと目上の人から順に書いていきます。
同期などで贈るときは、五十音順で名前を書くとよいでしょう。
③4人以上の連名で贈る場合
4人以上の仲の良かった人たちや有志で退職祝いを贈るなら、のし紙に全員の名前を書くスペースがありません。
このような場合は、代表者1名の名前をのし紙の中央に大きく書き、その左側に小さく「他一同」もしくは「外一同」と書きます。
贈り物をした全員の名前は、別紙に改めて書きましょう。贈り物に添えることで贈る相手に誰から贈られたかが伝わります。
別紙に名前を書く際も、目上の人から順に右から左へと書くのがマナーです。順位が付けられないときは、年齢順、もしくは五十音順でよいでしょう。
退職祝いのマナーQ&A
退職祝いのマナーについて、よくある疑問と回答をまとめました。
Q:のし紙の留め方に決まりはある?
のし紙を品物の裏側で留める際にもマナーがあります。
慶事ののし紙は、左を内側に右を外側にして留めます。
ちなみに弔事用ののし紙は左が外側、右が内側となります。
退職祝いののし紙は、慶事と同じです。
間違っても左が外側になるような留め方にしないように、くれぐれも注意してください。
Q:のし紙とリボンは一緒に掛けていい?
のし紙の上からリボンを掛けて、丁寧な贈り物をしたいと考える人もいるかもしれませんが、それはNGです。
なぜなら、のし紙を付けることですでに「丁寧な贈り物をしている」という気持ちを表しているからです。
そもそも、のし紙は和製のリボンのようなものとして扱われているため、リボンとの併用は違和感のあるものになってしまいます。
退職祝いはのし紙だけで十分です。リボンと併用しないようにしましょう。
Q:退職祝い、1人あたりの予算相場は?
退職祝いの金額を決める際、下記のような要素を考えあわせながら、柔軟に判断しましょう。
- 連名で贈るか、個人的に贈るか
- 連名に参加する人数は何人か
- お相手と自分の関係性(上司・部下・同期・友人・家族 など)
- 役職・立場に見合う金額か
- ご本人の勤続年数
- 今までの退職者へ実際に贈ったお祝い金額
連名で退職祝いを贈る場合、一人の方に対して3,000円~30,000円程度の範囲で予算を決め、参加人数で頭割りして金額を調整するケースが多いようです。
相場金額の幅が広いのは、立場によって判断が異なるためです。基本的に、
【連名で贈る退職祝い相場】
- 目上の方へ贈る・・・相場の範囲で高めの金額(連名の総額が5,000円~30,000円程度)
- 目下・同格の人へ贈る・・・相場の範囲で低めの金額(連名の総額が3,000円~10,000円程度)
これぐらいの相場感で考えておくと無難でしょう。
また、一対一で個人的に退職祝いを贈る場合は、以下を目安にしながら金額を決めるのがおすすめです。
【個人的に贈る退職祝い相場】
- お相手が一般社員・・・3,000円~5,000円程度(定年退職者や特にお世話になった方には10,000円程度)
- お相手が役職のある人・・・5,000円~20,000円程度
ただし、この場合も自分の役職などを踏まえた上下関係によって判断が変わるため、上記の相場はあくまでも目安とお考えください。
とてもお世話になった仲の良い上司など、思い入れのある親しい方へ個人的に贈るなら、相場の範囲内で高めの予算にするといいでしょう。
気を付けておきたい点として、退職祝いに対してお返しを贈ってくれる律儀な人もいることを想定しておきましょう。
そんな退職者にあまりに高額な退職祝いを贈ると、お相手を恐縮させることになり、かえって負担を掛けてしまいます。
贈答の予算は高ければいいというものではなく、一般的な相場内におさめることもマナーのうちです。
Q:退職祝いにふさわしくないものはある?
退職祝いに次のようなアイテムは、ふさわしくないとされています。
-
ハンカチ:ハンカチは手切れを想像させるため、特に目上の人には避けたほうが無難です。
タオルは糸を紡いで作られることから縁起が良いものとされていますが、退職祝いではタオルやハンカチはできるだけ避けたほうがいいでしょう。 -
ボールペン:目上の人にボールペンや万年筆といった筆記具を贈ると、「仕事をもっと頑張りなさい」という意味に取られてしまうことも。
誤解を受けないためにも、筆記具はできるだけ避けた方がいいですね。 -
ドライフラワー:ドライフラワーを退職祝いに贈ってはいけないというマナーは、特にありません。
とはいえ、「枯れている」というイメージのあるドライフラワーは、相手が望んでいない限り贈らないほうがベターです。
お花を贈るのであれば、新鮮な生花が良いでしょう。 -
商品券やギフト券:商品券やギフト券などの金券は、自由な用途で使えるため、お祝いの贈り物には便利です。
けれども目上の人に贈ると、「お金に困っている」という意味にとられてしまうことも。
中には快く思わない人もいるため、金券はなるべく避けた方がいいかもしれません。
Q:退職祝いを渡すタイミングは?
早過ぎるタイミングで退職祝いを渡すのはタブーです。
早くとも退職する1週間前か、退職の数日前、もしくは送別会の場などのタイミングで渡すのがベストです。
もし送別会までに用意できなかったとしても、退職日当日は退職する人が挨拶回りなどで慌ただしいため、できるだけ避けたほうがいいでしょう。
退職祝いのプレゼント向き! スマートなカタログギフト
退職祝いで「何を贈ったらいいのか迷う」という人は、相手が自分で欲しいものを選べるカタログギフトという選択肢もあります。
また「連名で高額なギフトを贈りたいが、何にするか決めかねている」というときも、カタログギフトが最適です。
予算に応じて選べるうえ、有名雑誌監修のグルメギフトや旅行体験の高級ギフトなど種類が豊富。
相手が喜んでくれそうな雰囲気のシリーズを選ぶといいでしょう。
もちろん、カタログギフトにものし紙を掛けることは可能なので、購入先のショップに確認してみましょう。
退職祝いののし紙は失礼のない準備を
退職祝いにはのし紙が必要ですが、退職理由によって水引の種類や表書きの書き方が変わるため、のし紙の選び方には注意が必要です。
贈る側の小さなミスで間違ったとしても、贈られた側にとっては気分が悪いもの。
これまでの感謝と相手を思いやる気持ちを心を込めて伝えたいのであれば、のし紙の選び方やマナーには気を付けたいものですね。
退職祝いのギフト選びに迷ったり、のし紙の選び方についてわからなかったりしたら、プレゼントの購入店に相談すれば、良いアドバイスをもらえるでしょう。
特にギフト専門店であれば、のし紙や表書きなどのマナーに精通しているため、安心感を持って購入できます。
ギフト専門の「ギフタ」では、ギフト商品やカタログギフトを豊富に用意しています。
さらに、ギフト関連についてのご質問は、お問い合わせフォームからメールをお送りいただければ、社内のギフト専任スタッフがご対応します。
退職祝いの贈答マナーに迷ったときは、「ギフタ」まで、ぜひお気軽にご相談ください。