親族や知人の訃報を受けて参列する、通夜や告別式。一般的に、香典はその際に持参して、渡すことが多いものです。
でも、遠方で行われたり、出席できないやむを得ない事情があるなど、駆けつけるのが難しいこともありますね。
また最近では家族葬などが増え、香典を渡すタイミングに悩む方も多いのではないでしょうか。
実は、香典やお悔やみ状を郵送しても失礼にはあたりません。
ここでは、香典の具体的な郵送方法や注意点、マナーについて紹介します。
目次
香典は郵送してもマナー違反ではない
なぜ香典を郵送しても良いのか
香典とは、お花やお香・お米などの代わりに、故人の霊前にお供えする現金のことです。
通常は不祝儀袋に現金を入れ、通夜か葬儀・告別式のどちらかに持参して受付で渡します。
また香典は、急な不幸に見舞われたご遺族を経済的に助ける、故人を悼み、遺族とその悲しみを共有するという意味もあります。
ですので遠方であったり、仕事などやむを得ない事情により参列できない場合、香典を郵送して弔意を表すことに問題はありません。
香典を郵送する場合は、必ず現金書留で
葬儀が遠方で行われたり、事情があって通夜・葬儀に出席できない場合、香典を現金書留で郵送することができます。
ただ、香典のみを送れば良いというわけではありません。
注意点として、
- 必ず郵便局の現金書留封筒で送る
- 現金をそのまま封筒に入れず、必ず不祝儀袋に入れる
- 自宅へ送る場合、宛名は喪主にする
- 一筆箋などでも良いので簡単にお悔やみを伝える手紙を添える
が挙げられます。
不祝儀袋の選び方や書き方、手紙の文例、郵送マナーを一つひとつ解説していきましょう。
郵送するタイミングと注意点>
では、いつ送れば良いのでしょうか?
香典を郵送するタイミングは、送り先によって違います。
葬儀場に直接送る
通夜や告別式まで時間があるのなら、葬儀会場に直接、現金書留封筒を送ることもできます。
その際は葬儀場の住所+葬儀場名のあとに「気付」と入れ、続けて喪主の名前を書きます。
気付とは、郵便物を宛名主の住居ではなく立寄り先に送ることを指します。
また投函から到着まで通常1~2日かかるものとし、日付指定も忘れないようにしましょう。
ただし昨今では、現金書留の受け取りに対応していない葬儀会場もあります。
念のため葬儀場に電話をかけ、香典を郵送しても良いかどうか問い合わせすることをおすすめします
自宅に郵送する
通夜や葬儀に間に合わない場合は、喪主の自宅に郵送します。
葬儀後は何かと慌ただしい時期ですので、葬儀から2~3日後の到着がベストです。
喪主は四十九日の法要までに、香典返しを行います。
葬儀から時間が経ってしまうと遺族の二度手間になることも考えられますので、到着のタイミングには十分配慮しましょう。
不祝儀袋の選び方と注意点
ここからは、不祝儀袋の選び方と選ぶ際の注意点を解説します。
表書きや水引にも注意が必要
香典を入れる不祝儀袋は、相手の宗旨や宗派に沿ったものにします。
基本的に白無地の包みで、蓮の絵柄のあるものは仏式以外には使用しません。
水引は「不幸が二度とこないように」とのことから、結び切りを使用しますが、キリスト教にはつけません。
表書きの「御霊前」は、各宗教とも共通で使うことができます。
香典を入れる不祝儀袋は宗旨で違う
不祝儀袋はどの宗旨でも共通しているわけではない、ということも注意が必要です。
仏式
水引は黒白か双銀の結び切り。
表書きは「御霊前」「御香典」などです。
四十九日法要以降は「御仏前」(ただし、浄土真宗の場合は通夜・葬儀でも「御仏前」)
神式
水引は黒白、双銀、双白の結び切り。
表書きは「御霊前」「御玉串料」「御榊料」などです。
キリスト教
水引のない白無地の包みか白封筒。
十字架や白百合が印刷されたものもあります。表書きは「お花料」。
カトリックは「御ミサ料」も使います。
不祝儀袋の書き方
中袋の表の中央に「金〇〇円也」と漢数字で金額を、裏に住所、氏名を書きます。
漢数字は「壱、弐」などの大字を使うことが多いですが、普通の漢数字でも構いません。
弔事ですので、薄墨で書きましょう。
弔事用の薄墨の筆ペンなども市販されています。
また、香典返しを辞退する場合は、中袋の一番左、住所に続いて縦書きで「香典返しはご辞退いたします」「お返しの配慮は不要でございます」と記載しておくとよいでしょう。
現金の入れる際の注意点
香典の場合は、「突然のことで新札を用意する余裕がなかった」という意味で、古いお札(あまり汚くないもの)、または新札に折り目をつけて包むのがマナーです。
お札の人物が描かれていない裏を正面にして、中袋へ入れます。
袋は、上から下へたたみます。つまり、上側の折返しが、下側の折返しに被さるようにたたみます。
「悲しみは下向きに」と覚えておくと便利です。
香典額は、頭の位の数字が「1」「3」「5」「10」になるようといわれています。
例えば会社の同僚や知人で3,000円~5,000円、近い間柄の友人であれば5,000円〜10,000円、親戚は10,000円~30,000円が相場です。
封筒のサイズ
一般的な不祝儀袋であれば現金書留用封筒に問題なく入りますが、大きめサイズの不祝儀袋だと入らない可能性も考えられます。
なるべく一般サイズの不祝儀袋を選びましょう。
郵便局では、不祝儀袋が入る大きめサイズの現金書留用封筒も用意されています。
お悔やみの手紙を書くポイント
香典に添えるお悔やみの手紙は、より弔意を伝えるためにも、香典とセットで同封したいものです。
気持ちがこもっていれば、長い手紙でなくとも、一筆箋で十分です。
白地の縦書き一筆箋か、便せんを用意します。
言葉遣いの注意点
言葉遣いにも気を付けましょう。難しい単語を使わなくてもかまいません。「葬儀に参列できなかったお詫び」「香典を郵送する旨」「故人の冥福とご遺族を気遣う言葉」があれば十分です。
「拝啓〇〇」「前略〇〇」などの頭語や、「寒気ことのほか厳しく~」など時候の挨拶は、お悔やみの手紙では不要です。
すぐに本題に入っても問題ありません。
また、「重ね重ね」「再び」「たびたび」など繰り返す言葉は、❝重なる❞を連想させるので使用しないよう気をつけます。
墨の色に関する注意点
不祝儀袋と同じく、薄墨で書きます。ない場合は弔事用の薄墨の筆ペンが市販されていますので一本は持っておいても良いでしょう。
鉛筆やボールペンは失礼にあたりますので避けたほうが無難です。
一筆箋の同封方法
一筆箋はそのまま、通常の便せんなら場合は三つ折りにして現金書留封筒に入れます。
お悔やみ状例文
香典を家族葬でも渡したいなら?
最近は、家族や親族だけで執り行われる「家族葬」も増えています。
少子高齢化の影響で、故人が高齢で、喪主も現役をリタイアした世代の場合だと、弔問客・親族ともに少なくなっているケースが考えられます。
そのため、家族葬を選ぶ喪主が増加傾向にあるそうです。
新型コロナウイルスの影響でも増えた家族葬
新型コロナウイルスは葬儀事情にも大きな影響を及ぼしています。
葬儀に集まる参列者や関係者などへの感染予防という観点からも、家族葬を選ぶ方が増えているそうです。
そして、会場として会館などを借りず、友人・知人などの参列者なしで、自宅で、近親者のみのごく内輪で行われる家族葬も多いようです。
家族葬ということで弔問は控えても、故人やその家族との関係性から、「後日、お香典を渡したい」と思う方もおられるでしょう。
ただ、前述したような昨今の事情を考えると、「直接、香典を渡す」ことが、逆に、故人の家族に気を遣わせることになりかねません。
短い手紙を添えて、香典を現金書留で郵送するのがベターといえるでしょう。
香典や供花、弔電を辞退されたら
家族葬の場合、香典や供花、弔電を辞退されることが多いようです。
とはいっても、気持ちとして、「何もしないのは気になる」という場合は、お悔やみ状を書きましょう。
お悔やみ状は、はがきではなく、必ず封書で出しましょう。
香典に同封するお悔やみ状と同じく、「不幸が重なる」を避けるため、できれば文面は便箋1枚で収め、一重の封筒を使います。
通常、手紙を書く場合には「拝啓」「謹啓」などの頭語、時候の挨拶などを最初に書きますが、香典に同封するお悔やみ状と同じく、こちらでも必要ありません。
お悔やみ状文例
故人には生前本当にお世話になりました。皆さまのご心痛はいかばかりかと拝察いたします。
本来であればすぐにでもお伺いしてお悔やみを申し上げたいところですが、時節柄ままならず、誠に申し訳ございません。
まずは略儀ながら書中をもちましてお悔やみ申し上げます
まとめ
葬儀が遠方で行われるたり、出席できないやむを得ない事情があるとき、葬儀が近親者のみで行われる場合などは、香典返しは現金書留で郵送しても失礼にはあたりません。
その場合は、香典を不祝儀袋に入れ、お悔やみの気持ちを伝える手紙を添えて、できるだけ早く送ります。
また、少子高齢化や新型コロナウイルスの影響でも増えている家族葬で、香典を渡すタイミングが難しい場合も、現金書留で郵送しましょう。
香典や弔電、供花を辞退された場合でも、お悔やみ状を送れば、故人を悼む真心が伝わります。