通夜や葬儀に行けない人が誰かに託し、その人が代理として葬儀に参列することがあります。
葬儀に代理で参列する人は、通常の参列者とは違った心得が必要です。
この記事では、「代理を依頼する場合」「代理で葬儀に参列する場合」それぞれの心得やマナー、代理で香典返しを受け取った後の対応を詳しく解説します。
目次
【代理を依頼】通夜や葬儀に代理を立てる心得
ここでは、自分自身が通夜や葬儀にどうしても参加できない場合に、代理をお願いする際の心得についてご紹介します。
そもそも代理の参列は失礼ではないか?
まず気になるのは、葬儀に本来参列する予定だった人が代理の人に参列を頼むのは、遺族の人たちに失礼ではないかということ。
結論から言うと、事情があってどうしても参列できない場合に、親しい人に代理で参列してもらうことは、失礼にはあたりません。
代理の人が故人と面識がなかったとしても、マナー違反ではないとされています。
代理を立てれば、ご遺族に弔意を伝え香典もお渡しできます。
引き受けてくれる方に礼を尽くしてお願いするとよいでしょう。
参列できない本人がするべきこと
香典を代理の方に託す場合には、喪主側に配慮して、以下の対応をしましょう。
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弔意を伝える弔電を葬儀会場へ送る
- 後日遺族の方に参列できなかった非礼をお詫びする
また、代理の方に対しても充分な気配りが必要です。
香典袋は本人が自分で用意し、芳名帳に記帳する本人の氏名・住所・電話番号・会社名・役職名などもきちんと代理人に伝えてください。
【代理で参列】香典を持参する際のマナー
ここからは、葬儀の参列に代理を頼まれたときのマナーを解説します。
服装・アクセサリー
葬儀に出席する際の服装は、通常の参列者と変わりません。
男性は略礼服が基本となりますが、ブラックスーツもよいとされています。
女性の場合も基本は喪服ですが、黒無地のワンピースやアンサンブルでも問題ありません。
男女ともに結婚指輪や華美でない腕時計以外のアクセサリー類はつけないのが原則です。
特に「光り物」と呼ばれる金属系のアクセサリーはマナー違反とされています。
女性がアクセサリーをつけるなら真珠が好ましいとされています。その由来は真珠が「涙」を意味するものだからです。
真珠は粒の大きすぎるものは避け、8mmくらいまでを目安としましょう。
ネックレスは一連の首に沿うものを選びます。二連、三連は「不幸がつながる」という意味からも避けたほうが無難です。
代理で託された香典の渡し方
葬儀会場の受付では、まず自分が誰の代理で参列したかを告げた上で、「この度はご愁傷様でございます」などのお悔やみの言葉を丁寧に伝えます。
その後に一礼をし、受付の方から見て文字が見えるように香典を渡します。
代理で参列したとしても一連の流れは変わりません。
香典袋はそのままで持ち運ぶのは礼を欠きますので、葬儀会場まで袱紗に包んで持参しましょう。
受付で並んでいるときに早々と袱紗から取り出すのも失礼になりますので、タイミングに気をつけましょう。
葬儀会場の受付では、自分は誰の代理で参列したかを受付で告げた上で、喪主側である受付の人に丁重にお悔やみの言葉を伝えます。
記帳は「本人」の氏名・住所に(代)を添える
受付の担当者に香典を渡したら、芳名帳に記帳します。
芳名帳は、喪主側が香典返しを準備する際に、参列者の情報を確認するものです。
そのため代理で参列したときには、代理人の情報ではなく、参列を託した本人の情報を書き記します。
具体的には、以下のような情報です。
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氏名
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住所
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電話番号
- 会社の名称・役職名
事前にその人の情報を確認して、受付で正しい記帳ができるよう準備しておきましょう。
芳名帳へ正しい情報を書き記したあとに、名前の左横へ小さい括弧をつけて(代)と小さく書きます。
もし本人の代わりに妻が参列する場合は、(内)と小さく書きます。
代理で参列しているしるしなので、忘れずに書くようにしましょう。
なお、預かってきた香典とは別に自分の香典も渡す場合は、自分の氏名・住所などを別に記帳してください。
香典袋の準備も代理で行う場合
代理で葬儀に参列して香典を渡す場合の、香典袋の表書きについて解説します。
基本的には、代理を依頼する本人に香典袋を準備していただくことが望ましいでしょう。
ただし、遠方に住んでいる場合や急なことで間に合わない場合なども想定されます。
代理人も代筆の仕方を知っておくと安心です。
表書きは薄墨で、宗教による違いにも注意
香典の表書きは、託した本人が書いたように体裁を整えます。
「代理人が書いた」という情報は不要のため、書き方は、基本通りで問題ありません。
まず、表書きは薄墨で書くのが通例です。
仏教の表書きは「御霊前」や「御香料」あるいは「御香典」と書きます。
神道の表書きは「御玉串料」や「御神前」あるいは「御榊料」としましょう。
キリスト教であれば「御花料」とすればカトリックとプロテスタントの双方で使えます。
なお、カトリックは「御ミサ料」、プロテスタントは「忌慰料」と書くこともあります。
喪家の宗教自体がわからないときにオールマイティに使えるのが「御霊前」です。
ただし、浄土真宗だけは「御仏前」と表記しましょう。
香典の中袋にも忘れず記入
香典の中袋には香典の贈り主の住所氏名を書きます。
金額は、旧字体の漢数字を使うのが基本です。
これは数字を改ざんされにくいことと会計をしやすくする意味合いがあります。
代理で託された連名の香典の場合
こちらも代理であるかどうかは関係なく、香典の贈り主に応じて書きます。
そもそも香典は本来、できるだけ個人で用意するのが望ましいものなので、連名を避けるべきとされています。
やむをえず香典を連名で贈るときには3名までにとどめましょう。
連名の場合、右側から立場が上の順で書いていきます。
同じ立場の人が並ぶ場合は右から五十音順としましょう。
代理参列で香典返しを受け取る場合
代理で葬儀に参列した際、即日返しの香典返しをもらうケースがあります。
代理で参列した方は、香典返しを受け取ってよいのか、受け取った品をどのように本人に渡すか、悩む場合があります。
ここでは代理で参列した葬儀の香典返しについて解説します。
代理で参列して香典返しをもらう場合
香典返しは従来、四十九日後に届けられるものでしたが、近年は葬儀の当日に渡す「即日返し」が増えています。
代理で参列した葬儀で香典返しを渡された場合はそれを預かり、後日、本人に届けましょう。
一律に同じ品物を渡される場合と、渡した香典の金額に応じてふさわしい香典返しを渡される場合があります。
また、受付で番号札をもらって、葬儀終了後に受付で番号札によって香典返しを受け取るケースもあります。
会葬御礼と香典返しの違い
「香典返し」は贈った香典への返礼品ですが、「会葬御礼品」は香典返しと別に渡す粗品のことで、当日の参列者全員に渡されるものです。
代理として葬儀に出席すると、本人の分の会葬御礼品も渡されることがありますが、これは葬儀にちゃんと出席した証しにもなるので必ず受け取って本人に渡してください。
ただし、1人分ならともかく、会社あるいは部署の連名で香典を託された場合は、多くの会葬御礼品を受け取ることになり、持ち帰るのが大変になるかもしれません。
そんなときは事情を伝えて会葬御礼状だけを預かるという方法もあります。
香典返しは本人へ手渡しで届けるのがベスト
預かった香典返しを託した人へ届けるベストな方法は「手渡し」です。
香典返しは遺族からの感謝の気持ちが込められた大切な返礼品であり、代理で預かったのであれば、その人へ渡すまでが責任と考えられます。
また、会社や取引先関係の代理であれば、責任を持って代理を務めることは仕事と同じく重要なことです。
相手が受け取ったことを確実に見届けられる「手渡し」が最適な方法といえるでしょう。
香典返しを郵送する
自宅が遠方で参列が難しい人から、代理として参列を依頼されることがあります。
その場合は香典返しを手渡しで届けるのは現実的ではないため、郵送や宅配便で送ることになるでしょう。
当日の式典終了後に、まずは本人に電話かメールで連絡をとって、香典返しや会葬御礼品をどのようにするべきか、希望を尋ねると安心です。
訪れる機会まで預かって欲しいと言われることもあるでしょうし、会社などの自宅と別の場所に送って欲しいと言われることも考えられます。
葬儀の代理は事前にマナーを押さえて
葬儀に代理で参列するのは、記帳のマナーや香典、香典返しの取り扱いなど、気を遣うことが多いものです。
依頼する人は、きちんと感謝の意を代理人に伝え、手を煩わせないよう、事前の準備を確実にしましょう。
代理人を引き受ける方は、当日慌てたり、喪主側に失礼があったりしないよう、代理としての心得を押さえておくと安心です。
弔事のマナーに則り、遺族の方に心からのお悔みを伝えましょう。