「出産祝い用の封筒って決まりがあるの?」「結婚式で使う祝儀袋とどう違うの?」と、マナーについて疑問を持つ方は多いようです。
慶び事の際、紅白の飾りの付いた封筒に現金を包むのをよく見かけますよね。正しくは「ご祝儀袋」、または「のし袋」「金封」等と呼びます。
ご祝儀袋の使い分けは水引(紅白の飾りひも)によって判断できます。
たとえば出産祝いに適した水引と、結婚式に適した水引は形が違うので、それぞれにふさわしい場面で使うのがマナーです。
今回は、出産祝いに使うご祝儀袋の選び方や表書きの書き方を紹介します。出産祝いを郵送する際の宛先についてもご紹介しますので参考にしてくださいね。
目次
出産祝いの封筒(ご祝儀袋)、水引は「蝶結び」
はじめに、出産祝い用の「水引」についてご説明します。
水引とは日本の伝統的な贈答マナーの一つであり、ご祝儀袋の周りに付けてある、布などでできている紐のことを指します。慶事用は紅白の色のものが主流です。
水引には様々な結び方があり、使うシーンによって選ぶべき形が異なります。出産祝いにふさわしい水引は「蝶結び」です。
蝶結びは別名「花結び」とも呼ばれています。紐を引っ張ると簡単に解けて、また簡単に結び直せることから「何度あっても良い縁起ごと」の時に使用されるものです。
出産は何度あっても嬉しいお祝い事ですので、蝶結びの水引を選んでください。
間違って蝶結び以外を出産祝いに使ってしまうと「これ以上子供が生まれないように」という意味に受け取れてしまい、大変縁起が悪く失礼に当たります。
出産祝いにNG「結び切り・あわじ結び・梅結び」
水引は蝶結びの他にも、「結び切り」「あわじ結び」「梅結び」などがあります。水引の端が上向きで、紐が固く結ばれており、どれも簡単には解けません。
これら3種の結び方は、一般的には出産祝いにふさわしくないとされています。
- 結び切り…固く結ばれて解けないことから「一度きりでありますように」という意味で、結婚式や快気祝いなどのお祝い事で使用する。
- あわじ結び…「あわび結び」とも呼ばれる。アワビの形を模したような結び方で複雑になっているため、「結びつきの強さ」を表すとされ、こちらも結婚式に適している。
- 梅結び…結び切りやあわじ結びよりもさらに高度な結び方で簡単には解けません。華やかな見た目からも、結婚式で高額を包む場合に使用されることが多い。
このように水引には様々な種類がありますが、出産祝い・入学祝い・開店祝いなどの、何度あっても嬉しい慶び事には「蝶結び」がいちばん適しています。
出産祝いに印刷された水引の封筒はNG
出産祝いには、印刷された水引の封筒は避けましょう。
なぜなら、印刷された水引の封筒は、少額を包む場合やお心付け用に使われる簡易形式からです。
正式なご祝儀袋を購入する時間がなかったからといって、コンビニなどで水引が印刷された封筒を選んでしまうと失礼に当たります。
近しい友人や身内に贈るなら使用しても問題にならないかもしれませんが、職場関係や目上の人に贈るときには必ず実物の水引がついている正式なご祝儀袋を選びましょう。
出産祝いに「水引10本」の封筒はNG
水引が10本になっているご祝儀袋は「結婚式用」です。出産祝いのご祝儀袋にはふさわしくありません。
水引が10本のご祝儀袋には、「5本が2倍=喜びが2倍、喜びが重なる」などの意味が込められており、結婚式に適しているといわれています。
出産祝いのご祝儀袋は、水引の基本的な本数・5本の封筒を選びましょう。
「寿」と表書きしている封筒は結婚式用
ご祝儀袋の表書き(お祝いの名目)に「寿」と書かれたものは、結婚祝い用です。
「寿」という言葉は、お祝い事やおめでたい響きがありますね。でもこの言葉は、結婚式専用で使われる表書きの言葉です。
出産祝いに表書きが印刷されているものを選ぶなら、「御祝」と書かれたものを選びましょう。
▼出産祝いのご祝儀袋選び、水引についてお悩みの方はこちらで詳しく説明しています▼
デザインものの封筒は相手との関係性による
最近では、おもちゃや動物をモチーフにした水引や、フェルトなどの素材でできた出産祝い用の封筒も販売されています。
このようなおしゃれにこだわったデザインのご祝儀袋は親しい友人や家族に赤ちゃんが生まれたときに贈ると喜ばれるでしょう。
反対に、職場の上司や取引先の人、目上の方などに出産祝いを贈る場合は、伝統的なご祝儀袋を使うことをおすすめします。
可愛いデザインだからといって、どんな相手にもおしゃれ優先でキャラクター付きのご祝儀袋を贈ってしまうと、相手から「慶事マナーやTPOをわきまえない人」と見られてしまうかもしれません。
伝統的なデザインがふさわしい場合とカジュアルでも許される場合、それぞれを判断して上手に使い分けましょう。
封筒の表書きの書き方は?
次に、ご祝儀袋の表書きの書き方について解説していきます。
出産祝いの表書きは「御祝」「御出産御祝」
表書きは、「御祝」や「御出産御祝」がおすすめです。
このほかにも「御出産祝」「祝御出産」などの書き方もあり、間違いではありませんが、これらは4文字なのであまりおすすめできません。4文字は「4=死」と不吉な連想をしてしまうとされているからです。
相手によっては縁起をかつぐ方もいるかもしれませんし、普段なら気にならないことも出産祝いや結婚式などお祝い事の際には気になってしまうという場合もあるでしょう。
できれば4文字の表書きは避けたほうが無難です。
中央下部の名入れ部分は自分の名前を
表書きの直下、水引よりも下の名入れ部分に自分のフルネームを縦書きで書きましょう。
これは、「誰からの出産祝いなのか」が明確にわかるようにするためです。
名前を書く時には「御祝」などの表書きの文字より、少しだけ小さめに書くと全体のまとまりがよく、バランスを整えることができます。
黒の毛筆または筆ペンで書く
出産祝いの封筒(ご祝儀袋)に文字を書く時には、基本的に「黒の毛筆」または「黒の筆ペン」を使います。
筆の扱いに慣れていない方は難しいかもしれませんが、心を込めて丁寧に書くことが重要です。
もしも、どうしても筆で書くのが難しいと感じたら、毛筆タッチに近いサインペンを使用しましょう。現在では、筆ペンの文字に似せて書けるサインペンなどが売られていますので、そういったものを利用しても良いですね。
身近な筆記用具として、鉛筆やボールペン・万年筆がありますが、これらをご祝儀袋の表書きに使用することはNGとされています。
普段使っているため書きやすいものですが、正式なお祝い事のときには不向きですので注意してください。
また、色は必ず「黒」を選びましょう。間違っても「薄墨色」の筆ペンは使わないでください。薄墨色の筆ペンは、お葬式や法事で使われる香典袋などに使用される、不祝儀専用のものです。
必ず濃い黒を使用してください。
出産祝いの封筒、連名の書き方は
続いて、出産祝いを複数人で出し合って贈る場合の、連名の書き方についてご説明します。
2人の連名の場合
連名になる相手と上下関係がある場合は、右から格上・年長者、その左に次の格の人という順番で書きます。
このときの名前の配置は、目上の人の名前を中央に置き、目下の人をその左に書く、というケースが一般的ですが、最近では2人の名前全体が左右中央になるようにバランスを取る書き方も増えてきています。
また、連名にする相手が友達同士などの同等な立場なら、五十音順か年齢順に並べて書きましょう。
夫婦連名で贈る場合は、世帯主(主に夫)の名前をフルネームで中央に書き、その左側に妻の下の名前だけを記入します。
このとき、妻の苗字は省きます。夫婦別姓なら2人ともフルネームで記入します。
3人の連名の場合
3人の連名の書き方についてご説明します。
3人の中で上下関係がある場合も、右から格上・年長者、その左に次の位の人、その左に一番下の位の人という順番です。配置は2人の連名の場合と同様です。
一般的にはご祝儀袋の中央に一番格上の人の名前を書き、その左側に後の2人の名前を続けます。しかし近年では、3人のうち真ん中の人の名前が中央になるようバランスを取る書き方も増えています。
友人同士の場合は、五十音順か年齢順にします。
4人以上の連名の場合
4人以上の人数で連名にする場合には、ご祝儀袋の表書きに全員の名前を書くことは避けましょう。
4人以上になるときは、ご祝儀袋の表書きに代表者1名の名前をフルネームで書き、その左側に少し小さめの文字で「外一同」もしくは「他一同」と書きます。
代表者以外の名前は、和紙や奉書紙(ほうしょし)を「別紙」として用意し、全員の氏名を書き並べてご祝儀袋の中に入れておきます。
これは連名のお祝いを受け取った赤ちゃんの両親が「誰がお祝いに参加してくれたか」を確認できるようにするためです。
別紙に書く時は、まず紙の上段中央部分に「御祝」など、ご祝儀袋の表書きと同じ名目を記入します。
次に、下段に格上・年長者から順に、右から左へと名前を配置していきます。
友達同士なら五十音順か年齢順に並べましょう。文字の大きさはすべて同じに統一します。
出産祝いの封筒に入っている「中袋」の書き方
ご祝儀袋の中に入れられているシンプルな袋を「中袋」または「中包み」と呼びます。
中袋には贈り主の氏名・住所・金額などを書きますが、こちらも「黒い毛筆」または「黒い筆ペン」で書くのがマナーです。
住所などを書く欄が細く、筆では書きにくい場合はボールペンなどでも問題ありません。
表側には包んだ金額を記入する
中袋の表側には、包んだ金額を記入します。このときのルールは、「旧字体・漢数字・縦書き」が一般的ですが、難しいなら通常のアラビア数字(1、2、3)でも構いません。
旧字体の漢数字は以下を参考にしてください。
- 5,000円…伍阡円(または、伍阡圓)
- 10,000円…壱萬円(または、壱萬圓)
- 20,000円…弐萬円(または、弐萬圓)
- 30,000円…参萬円(または、参萬圓)
- 50,000円…伍萬円(または、伍萬圓)
- 0,000円…七萬円(または、七萬圓)
- 80,000円…八萬円(または、八萬圓)
- 100,000円…拾萬円(または、拾萬圓)
結婚式では、不吉な連想をしてしまう可能性のある数字は避けますが、出産祝いでも同じ考え方です。
一般的な出産祝いでは、40,000円、60,000円、90,000円は包みません。ただし、20,000円は包んでも問題ないとされています。
結婚式では、基本的に偶数の金額は「割り切れる=別れる」という意味から包みませんが、出産祝いなら20,000円でもそこまで気にする必要はないとされています。
もし、複数人で出し合った結果、包む金額が40,000円になってしまう場合には、30,000円を現金で包んで残りの10,000円でプレゼントを別に用意するのもおすすめです。
旧字体には「書き換えを防ぐ」意味も
また、金額を書く際には必ずはじめに「金」という文字を書きます。例えば、「金伍阡円」「金壱萬円」などです。
「金」をつけたり旧字体の漢数字で書くのは、簡単に数字を書き変えられないようにするという意味があります。
もしも「一万円」と書いてあれば、「十万円」と簡単に書き変えることができるからです。
金銭トラブルを避けるためにも、旧字体の漢数字で、はじめに「金」という文字をつける慣習があるのです。
裏側の左下に名前と住所を
中袋の裏側には、贈り主の名前と住所を書きます。
これも、ご祝儀袋から中袋だけを取り出して整理するときに「誰からの出産祝いなのか」がわからなくなるのを防ぐためです。
一般的には、中袋の裏側左下あたりに書きますが、裏面の中央あたりに書くこともあります。どちらでも問題なく、マナー違反になることはないので書きやすいところでOKです。
基本的には、名前も住所も縦書きです。ただし、住所で使う番地などの数字に関しては、無理やり漢数字にしなくても構いません。漢数字で書く場合は、旧字体ではなく通常の漢数字で大丈夫です。
また、裏側に包んだ金額を記入する欄が印字されている中袋もあります。
欄が印字されている場合には、表側に旧字体の漢数字で金額を書く必要はありません。どちらかに記入すれば大丈夫です。
もしも、表側に金額を書いてしまった後に裏に欄を見つけたら、欄は空白にしておきましょう。
ご祝儀袋に名前を書くスペースがないとき
近年、赤ちゃんへの贈り物としてガーゼなどで包まれた凝ったデザインのご祝儀袋も多く販売されています。
これは包んであるガーゼを洗って、赤ちゃん用に再利用できるようにとデザインされているものです。
しかし、ガーゼの上から表書きや自分の名前を書くことはできません。もしも、購入したご祝儀袋に名前を書く場所がない場合には、中袋だけに名前と住所を記入しておきましょう。
また、中袋も付属されていないなどで、どこにも名前が書けないという場合には、ご祝儀袋に入るサイズのメッセージカードを準備して、メッセージとともに名前も書いておくことをおすすめします。
ご祝儀袋に添えるメッセージ文例
- ご出産おめでとうございます。母子ともに健康だと伺い、喜びと同時に安心しました。また時間があるときに赤ちゃんのお顔を見せてください。赤ちゃんとご家族のご健康とご多幸をお祈りしています。◯◯(自分の名前)
- 赤ちゃんのご誕生、本当におめでとうございます。元気な赤ちゃんに早く会いたいです。今度お店にも遊びに来てください。赤ちゃんの健やかなるご成長を願っています。◯◯(自分の名前)
こうしたメッセージを添えておくだけで、もらった側はほっこりして嬉しくなるはずです。お金だけ贈るのは気が引けるという方は、ぜひメッセージカードも同封してくださいね。
【出産祝いを郵送】送付状の宛名書きは
出産祝いをご家族に対して贈るのか、生まれてきた赤ちゃんに贈るのか、命がけの出産を終えたママに贈るのか。いざとなると、ちょっと悩んでしまうものです。
実は現金でも品物でも、出産祝いを郵送する際の「宛名書き」を誰にすれば良いのか迷う方が非常に多いのです。
出産祝いを贈る相手は、基本的に「出産を無事に終えた母親」とされています。そのため、出産祝いを郵送する際の送り先は「赤ちゃんのお母さん宛」にしましょう。
例えば、男性Aさんが、友人の男性Bさんに赤ちゃんが生まれたので出産祝いを贈る、というケースを考えてみましょう。この場合、出産祝いの宛先を友人Bさんの名前にするのは適切ではないとされています。
Aさんが出産祝いを贈る相手は、あくまでもBさんの妻です。
間違いやすいですが、出産祝いとは本来、出産を終えたママに対して贈るものですので注意しましょう。
ママと赤ちゃんの連名もOK
出産祝いを贈る時点で赤ちゃんの名前がわかっている場合は、「ママの名前+赤ちゃんの名前」の連名を宛先にしても良いでしょう。
赤ちゃんへの祝福の気持ちも表現でき、より丁寧な印象を与えます。
名前が決まっていない、または名前を知らない場合は、「赤ちゃん」と宛名書きにしてしまうのは不適切です。
このようなときは、やはりママの名前だけを書きましょう。
まとめ
今回は、出産祝いのご祝儀袋について詳しく解説しました。ご祝儀袋は、結婚式の時とは異なるマナーがいくつかあります。
チェックすべきポイントは以下の通りです。
- 蝶結びの水引を選ぶ
- 水引は5本が基本
- 表書きは「御祝」や「御出産御祝」がおすすめで4文字を避ける
- 出産祝いを郵送する際の宛先は、「母親の名前」もしくは「母親+赤ちゃんの名前」を記入する
「出産祝いはお祝い事だから、結婚式と同じでいいだろう」と考えるのではなく、出産祝いには出産祝い、結婚式には結婚式に相応しいルールがあることを押さえておきましょう。
マナーを知らずにいると、せっかくお祝いを贈っても相手が「あまり祝福してくれていないのかな?」と不快な思いをさせてしまう可能性があります。
基本マナーを守り、赤ちゃん誕生を祝う気持ちを相手にしっかり伝えましょう。