仕事でミスをしたり、子どもがトラブルを起こしたりした場合、菓子折りを持って謝罪に行くことがあります。相手への誠意が必要なシーンだけに、どのようなお菓子がふさわしいのか、迷うこともあるでしょう。
今回は、謝罪の菓子折りの渡し方と押さえておきたい基本的なマナー、誠意が伝わるようなお菓子選びについてご紹介します。
目次
菓子折りを謝罪の場に持っていく理由
お詫びのしるしとして、謝罪には菓子折りを持参して訪問するのがマナーです。
謝罪の気持ちを形にすることで、ただ言葉で謝るよりも誠意が伝わりやすくなります。
菓子折りに手間や費用をかけることによって、相手を尊重する姿勢や、事態を重く見ている気持ちを表現できるでしょう。
贈り手としては、謝罪を形にするのなら置き物や実用品でもいいのではないかと思うかもしれません。
しかし、手元にいつまでも残るものを贈ると、もらった側がその品物を見るたびに嫌な気持ちを思い出してしまいます。
お互いに嫌な気持ちを残さないためにも、消えものであるお菓子を選ぶのが無難でしょう。
謝罪の菓子折りの渡し方とタイミング
謝罪の際には、菓子折りの渡し方とタイミングも重要です。
菓子折りを謝罪相手に会ってすぐに渡すのは、物で解決しようという考え方に見られてしまうこともあるため避けてください。
菓子折りを渡すタイミングは、相手が謝罪をしっかりと受け止めてくださった後にしましょう。
そして、「心ばかりの品物ではございますが、どうぞお納めください」という言葉と共に、紙袋から取り出して、正面を相手に向けて差し出します。
ただし、カフェなどの外出先で菓子折りを渡す場合は、相手が持ち帰りやすいよう紙袋のまま渡しても構いません。その場合は、「袋のまま失礼します」と、さらに一言添えましょう。
菓子折りを渡すときには、「つまらないものですが」という言葉がよく使われますが、謝罪の場合はこの言葉は不向きです。
相手によっては「つまらないものを持ってきたのか」と受け取られてしまう可能性もあるため注意しましょう。
謝罪の菓子折りの相場
謝罪の内容によって菓子折りの相場には幅がありますが、一般的には3,000円~10,000円ほどとされています。
高すぎる菓子折りは「物で解決しようとしている」と、相手にマイナスの印象を持たせてしまうこともあるため、注意してください。
ビジネスシーンでの謝罪であれば、価格帯は
- 軽いミス:3,000円程度
- 重要なミス:5,000円程度
上記を目安にするといいでしょう。
また、子ども同士の軽いトラブルであれば、3,000円~5,000円程度で問題ないでしょう。たとえば、「自分の子どもが相手の子どもを怪我させてしまった」などのケースです。
交通事故の謝罪に、菓子折り持参で出向くケースもあります。車や自転車で相手に軽い怪我をさせてしまったなどの場合は、5,000円~10,000円程度と少し高額なものが適切でしょう。
謝罪の菓子折りの選び方
謝罪の際にはどのようなお菓子がふさわしいのか、いざとなると迷ってしまうものです。ここでは、謝罪の際に渡すのにふさわしい菓子折りの選び方を、詳しくご紹介します。
落ち着いたパッケージ、紙袋を選ぶ
謝罪時に渡すお菓子は、簡易包装ではなく、しっかりとした化粧箱に入っているものを選びましょう。
包み紙や紙袋などのパッケージ類は、落ち着いた色味のものがベストです。
そもそも謝罪というものは、謝罪相手の記憶に長く残らないほうがいいとされています。
お菓子自体も華やかな形や色使いのものは避け、なるべく控えめなものを選ぶことがお詫びの場面にふさわしいでしょう。
ずっしりと重みのあるお菓子を選ぶ
人の心理は不思議なもので、「菓子折りの重さは、謝罪の気持ちの重さ」と無意識に感じる人もいます。
煎餅やクッキーなどの軽いお菓子では、「ミスを軽く受け止めているのか」と誤解されてしまうこともあるので注意してください。
反対に、ゼリーや羊羹のようなずっしりとした重さがあるお菓子の場合は、「事の重さをしっかりと受け止めています」という印象につながります。
そのため、謝罪時に贈るお菓子は、重みのあるものを選ぶことをおすすめします。
高級感のあるお菓子がおすすめ
一般的に、親しい友人や家族に贈るなら見た目が綺麗なお菓子が喜ばれます。
しかし、謝罪の場面で贈るお菓子は、高級感があって落ち着いた雰囲気のお菓子のほうが適切です。
有名な老舗の和菓子など、ワンランク上の印象があるお菓子だと、相手を尊重する気持ちが伝わりやすいでしょう。
謝罪の場合は、お菓子の品物自体よりも、相手への敬意や謝罪の気持ちをしっかり伝えるほうが重要です。
そのため、流行のお菓子やチープな印象のあるお菓子は、気持ちが浮ついていると誤解されないためにも避けてください。
謝罪の菓子折りマナー
謝罪時に持参する菓子折りを選ぶ際に、押さえておきたいマナーについてご紹介します。知らないうちにマナー違反を犯さないよう、しっかりチェックしておきましょう。
要注意! 「のし紙」の基本マナー
あらたまった贈答品は、包装紙の上から「のし紙(掛け紙)」を掛け、格式高い贈り物であることを表すのがマナーです。
ここで、のし紙と掛け紙の違いを整理しておきましょう。
現代の「のし紙」とは、紅白の水引(飾り紐)が印刷された右上に、和紙でできた縁起物の「のし飾り(のしあわび)」がついた、慶事用の飾り紙を指します。
一方、「掛け紙」とは、お悔やみ事の贈答品に使われるものです。黒白や銀色の水引が印刷されており、おめでたい印の「のし飾り」は付いていません。
現代では、贈答品の上につける紙を、慶事用・弔事用の区別なく「のし紙(掛け紙)」と呼ぶことが増えているため、両者は混同されがちです。
しかし、本来両者はまったく違う意味を込められたものであり「のし紙(掛け紙)」を、場面に応じて使い分けるのが贈答マナーの基本です。
水引も種類ごとに意味が違う
謝罪用の菓子折りは、のし紙に印刷された水引の「結び方」にも気をつけましょう。
水引は結び方によってさまざまな意味を持ち、その種類には「蝶結び」や「あわじ結び」「結び切り」などがあります。
- 蝶結び:何度も結び直すことができることから、出産や入学など何度あってもめでたい慶事の贈り物に使う。
- 結び切り:一度結ぶと解けない形になっていることから、二度と繰り返すことがないようにという意味がある。結婚祝いや快気祝いなど。
- あわじ結び:両端を引っ張ると固く結ばれることから、結婚祝いにふさわしい。
謝罪に適したのし紙(掛け紙)の体裁
- 紅白の水引
- 水引の結び方は「結び切り(ま結び)」
- 右上の「のし飾り(のしあわび)」は付けない
つまり、「紅白水引ののし紙から、右上ののし飾りを抜いた状態のもの」がお詫びの品にふさわしいとされています。一般的な「のし紙」「掛け紙」とは違う形式であるため、注意が必要です。
紅白の水引が付いていると「おめでたい色なので不謹慎に思われないか」と心配する方がいます。しかし、紅白の色はもともと「厄払い」の意味が込められているため、謝罪の品に使っても問題はないとされています。
ただし、右上の「のし飾り(のしあわび)」はめでたさを象徴する縁起物なので、謝罪の場面にはふさわしくありません(※ただし、のし紙や水引の体裁は地域によって慣習に違いがあるため、身近な年長者やギフト専門店に確認されることをおすすめします)。
また、地域によってはのし紙の代わりに
- 無地の短冊のし
- のし紙を付けず包装紙のみ
上記の体裁を取る例もあります。
謝罪に伺うシーンはそれほど頻繁にあるものではないため、慣れない贈答マナーに迷う上、失礼に当たることがないか気を遣うものです。
菓子折りを購入するときはのしのマナーに間違いがないよう、贈答品の扱いに慣れているギフトショップなど、専門店で購入することをおすすめします。
スタッフに「お詫びの体裁ののし紙(掛け紙)を付けてほしい」と相談するのが安心でしょう。
謝罪の品に付けるのし紙の書き方
謝罪ののし紙(掛け紙)に書き入れる「表書き(贈り物の名目)」は
- 御詫び
- 深謝
- 御挨拶
などが一般的です。
水引の上には表書きを、水引の下には贈り主である自分の名字を記載します。
謝罪の菓子折りにおすすめのお菓子
ここではどのようなお菓子がお詫びの席にふさわしいのか、具体的にご紹介します。お菓子選びの参考にしてください。
羊羹
羊羹はひかえめな見た目でありながらも高級感があり、ずっしりと重みがあることから、謝罪の菓子折りの定番としてよく利用されています。
また、羊羹の製造方法から「固める」という意味を連想させてくれるため、謝罪の話がうまくまとまりますようにとの願いを込めることもあります。
高齢者のいる家庭への謝罪であれば、世代を問わず好まれる羊羹の贈り物が向いています。特に有名な老舗和菓子店の羊羹であれば、高級感があって誠意が伝わりやすいでしょう。
羊羹を選ぶ場合は、できれば個包装になっていてすぐに食べやすいものがおすすめです。
ゼリー
ゼリーの見た目は涼しげで、洋菓子でありながらも重量感がある菓子折りになります。暑い時期に謝罪用のお菓子を選ぶのであれば、ゼリーは特におすすめです。
小分けになっているため、社内や家庭で複数人で分けていただくにも重宝します。
子どもはどちらかというと渋い和菓子よりも、ゼリーなどの洋菓子のほうを好む傾向があります。そのため、自分の子どもが相手の子どもにケガをさせたなどのトラブルでも、ゼリーが役立つでしょう。
まんじゅう
まんじゅうもまた、重量感があって控えめな印象があり、謝罪の場にもふさわしい定番和菓子の一つです。特に老舗の和菓子店のものであれば十分に格式があるため、謝罪用のお菓子に適しています。
まんじゅうの場合も、切り分ける必要がない個包装になっているものが召し上がっていただくのに便利です。人数が多い取引先への謝罪には、部署の人数に配慮した個数を選びましょう。
カステラ
カステラは子どもから高齢者まで食べやすいお菓子です。見た目が美しく上品なので、謝罪の雰囲気を乱すこともありません。
カステラというと、一本型の大きなサイズを切り分けて食べるイメージがありますが、最近は個包装のカステラも種類が豊富になってきました。
取引先の会社へ謝罪する際のお菓子として選ぶ場合は、社員の方々が分けやすい個包装されたものがいいでしょう。
まとめ
適切な菓子折りを渡すことは、謝罪をする際に欠かせないマナーです。
とはいえ、いきなり菓子折りを先方に渡すのではなく、まずは言葉と態度で心からのお詫びをすることが最優先です。
その結果、先方に謝罪を受け入れていただけたタイミングで、TPOに応じた菓子折りを渡すことが大切です。
菓子折りは3,000円~10,000円程度の予算で、謝罪の内容によって適した金額のお菓子を用意しましょう。
謝罪用の贈答品に適したのし紙(掛け紙)は、一般的は慶事用・弔事用ののし紙とは形式が違います。
ギフト専門店などでスタッフに相談し、体裁をしっかり確認してください(※のし紙の体裁は地域によって慣習に違いがあるため、身近な年長者やギフトショップのスタッフに確認されることをおすすめします)。
真摯な謝罪の気持ちを伝えるためにも、菓子折りの選び方にまで細やかな配慮を忘れないようにしましょう。