日本で古くから親しまれている日本酒の「古酒(こしゅ)」とは、長期間熟成させたまろやかで香り高いお酒です。
中には希少なものもあるため、ちょっと贅沢な自分へのご褒美用はもちろん、お酒好きな方への特別なプレゼントにもぴったり。
日本酒の古酒の種類や飲み方、おすすめのペアリングを紹介します。
日本酒の古酒とは?
年代物のヴィンテージワインやウイスキーのように、日本酒にも長期間熟成させた「古酒(熟成古酒)」というものがあります。
古酒とはどんなお酒なのでしょうか? まずは定義や歴史を解説します。
古酒の定義に明確な決まりはない
日本酒の古酒には、国で明確に定められた規定はありません。
しかし、古酒の製造・技術交流を目的として酒造会社で結成された「長期熟成酒研究会」では、古酒を以下のように定義付けています。
- 3年以上熟成させた清酒
- 糖類を添加したお酒は古酒に含まない
古酒は熟成させたお酒なので、新酒とは違った芳醇な香りと味わいが楽しめます。
醸造方法や熟成期間によって口当たりや味わいも変わってくるので、明確な定義がないことで、酒造会社それぞれの個性が楽しめるでしょう。
鎌倉時代から嗜まれる歴史
一説によると、日本酒の古酒は鎌倉時代から嗜まれていたといいます。当時からすでに貴重な品としてふるまわれており、江戸時代には新酒の3倍程度の価格で取引されることがあったようです。
グレードの高い清酒として扱われていた古酒ですが、酒税の負担から明治初期以降は数が減っていきます。しかし、戦後に税制が見直されるようになってからは、少しずつ人気を取り戻しつつあるんだとか。
現在は「知る人ぞ知る小粋な日本酒」として注目されています。
日本酒の古酒の種類
古酒は熟成の期間や方法によって「濃熟タイプ」「中間タイプ」「淡熟タイプ」の3種類に分けられます。それぞれの特徴についてチェックしていきましょう。
濃熟タイプ
「濃熟タイプ」とは、
- 本醸造酒
- 純米酒
上記の日本酒を常温で熟成させた古酒のことを言います。熟成の年月を経るごとに、香りや味わいの変化が大きくなり、お酒本来の持ち味がしっかりと楽しめるようになります。
熟成期間が長いものは色味が濃く、完熟フルーツのような甘く芳醇な香りを放つため、年代物のワインやウイスキーを飲むように「濃厚な味わいを堪能したい」という人におすすめです。
また、もともと本醸造酒や純米酒をよく飲む人で、気分転換で「いつもと違った味わいに挑戦してみたい」という人にもぴったりでしょう。
淡熟タイプ
「淡熟タイプ」とは、
- 吟醸酒
- 大吟醸酒
上記のお酒を低温で熟成させた古酒のことです。吟醸酒や大吟醸酒本来の上品な香りや味わいを残しながら、適度な苦味がプラスされています。
クセが少なく、淡泊で爽やかな味わいなので、初めて古酒を飲む人にぴったりでしょう。
風味が濃すぎないので、料理そのもののうま味を引き立ててくれます。塩味の効いたおつまみのほか、スイーツとの相性も抜群です。
中間タイプ
濃熟タイプと淡熟タイプ、両方の特徴をあわせ持つのが「中間タイプ」。中間タイプに使われるお酒は、
- 本醸造酒
- 純米酒
- 吟醸酒
- 大吟醸酒
上記の日本酒からつくられます。熟成させるときに、低温から常温、もしくは常温から低温と、環境を変化させるのが特徴です。
濃熟タイプよりも味わいや風味の濃さはやや控えめではあるものの、さっぱりしすぎているわけではないので、ほどよい濃厚さと甘みを楽しめます。
「濃い味が好きだけど、濃熟タイプに挑戦するには勇気がいる」という人にも向いているでしょう。
また、少し酸味を持つものもあり「甘いだけのお酒では物足りない」という場合や、同じ酸味のきいた料理に合わせたいときにもおすすめです。
日本酒の古酒は自宅で作れる?
お酒には賞味期限がないため、保管条件がよければ自宅で古酒をつくって楽しむこともできます。
自宅で日本酒の古酒を作るときのポイントとはどんなものなのでしょうか。注意点を交えて解説します。
紫外線に当てないようにすれば作れる
自宅で日本酒の古酒を作るときのポイントは「紫外線に当てずに長期保存すること」です。一般的な保存場所としては冷蔵庫・樽・棚やクローゼットなどが挙げられます。
「濃熟タイプ」を飲みたいなら。本醸造・純米酒、「中間タイプ」なら本醸造酒・純米酒・吟醸酒・大吟醸酒、「淡熟タイプ」を飲みたいなら吟醸酒や大吟醸酒を選びましょう。
使うお酒のおすすめは、濾過していない日本酒や、火入れ酒(加熱処理したお酒)です。甘みや酸味のあるお酒の方が風味の変化がはっきりとわかるといいます。
さまざまな銘柄で試して、自分に合った古酒を見つけてみるのもいいかもしれません。
ただし、もともとの風味がよくない日本酒は、古酒にしても味のよいものにならない可能性が高い傾向にあります。
できるだけ本来の状態でおいしく感じられる日本酒で試してみるとよいでしょう。
ちなみに、「日本酒が古くなるとお酢になるのでは?」と疑問に思う方も多くいるようです。
日本酒からお酢をつくるには「酢酸菌」を植え付けた上で発酵させる必要があります。瓶を密閉したまま自宅で熟成させるならお酢に変わることはないため、ご安心ください。
日本酒の古酒の楽しみ方
日本酒の古酒はそのまま飲んでも楽しめますが、ちょっとした工夫でさらにおいしさがアップします。
基本の飲み方や、古酒に合う料理などをチェックしていきましょう。
基本の飲み方
古酒の基本的な飲み方は、それぞれのタイプの熟成時と同じくらいの温度で飲む方法です。
濃熟タイプ | 常温 |
中間タイプ | 低温もしくは常温 |
淡熟タイプ | 低温 |
上記を目安にして飲むと旨味が引き立ちます。
ラガービールのように一気に喉へ流し込むのではなく、できるだけじっくりと味わうように飲むと、繊細な味わいを楽しめるでしょう。
古酒を飲むなら酒器にもこだわろう
古酒を飲むときの「酒器」も、味わいを左右する重要な要素です。
お猪口やぐい呑みなどはもちろん、ちょっと気分を変えたい人はワイングラスに注いで飲んでみましょう。
透明なグラスなら、熟成された古酒の色あいをじっくりと堪能できます。グラスを揺らして、ふわっと充満する香りを吸い込んでから口に運べば、より風味を深く感じられるでしょう。
日本酒ファンはもとより、ワインやウイスキー好きにもぜひ試してほしい飲み方です。
古酒と食事とのペアリングを楽しむ
日本酒の古酒は、幅広い料理と合うお酒でもあります。
例えば、濃厚な味わいとまろやかな口当たりが特徴の「濃熟タイプの古酒」は、中華料理や焼肉、カレーなど、濃い味付けの料理と相性抜群です。
適度な甘みと酸味が特徴の「中間タイプの古酒」なら、同じく甘みや酸味がある酢豚やしゃぶしゃぶ、ドライフルーツなどとよく合います。
すっきりとした飲み口の「淡熟タイプの古酒」は、生ハムやイカの塩辛、グラタンなど、素材のうま味を感じられるような料理と合わせるのがおすすめです。
古酒のタイプによって合う料理は異なりますが、基本的には角煮やステーキ、チーズやベーコンなど、味や風味がしっかりとした料理に負けることなく合わせやすいでしょう。
いつものおつまみに飽きた人や甘い物が好きな人は、古酒にチョコレートを合わせてみるのもおすすめ。古酒の深みと、チョコレートの甘みやビターな味わいがマッチします。食後にほっと一息つきたいときに試してみてください。
日本酒の古酒の味の変化を楽しんで
日本酒の古酒は、熟成期間を重ねるほどに香りが強くなり、本来の日本酒とは違ったまろやかな風味が楽しめます。
芳醇で甘い香りと、しっかりとした深みのある味わいは、フランス料理や中華料理、焼肉など、さまざまな料理と好相性です。
日本酒好きの人はもちろん、ワインやウイスキーが好きな人にもぴったり。いつもとは違ったひと捻りあるプレゼントとして贈っても喜ばれるでしょう。
熟成期間や種類による味わいの変化、飲み方からペアリングまで、好みの味わいの古酒を探求してみてはいかがでしょうか。