「ビールと言えばラガー!」という会話を交わしたことはありませんか?
しかし、面と向かってラガービールとは何かを聞かれると、説明できない人は多いかもしれません。
日本のビール文化に根付くラガーの定義とその魅力を知れば、大好きなラガーがより深く楽しめるようになるでしょう。分かりやすく解説します。
目次
ラガービールとは何のこと?
一口にビールと言っても、実は100種類以上あるのをご存じですか? ビールの種類は「ビアスタイル」とも呼ばれ、発酵の方法・原料・地域などによって分類されます。
ラガービールとは、このビアスタイルを大まかに分類した種類のうちの一つ。ここで詳しく解説します
ラガーは日本人に親しまれているビールの種類
そもそもラガービールとは、製造過程でおこなわれる発酵の種類によって、ビールを分類したうちの一種です。
ビールの発酵は「下面発酵」「上面発酵」「自然発酵」の3種類。このうち自然発酵のビールは世界的にも少なく、あまりつくられていません。
普段、私たちが楽しんでいるビールは「下面発酵」か「上面発酵」のどちらかでつくられています。
「下面発酵」で造られたビールが「ラガー」、「上面発酵」でつくられたビールが「エール」です。
ラガービールの持ち味は、黄金色の液体とスッキリとした味わい、キリッとしたのど越し。
「ラガーこそビールの中のビールだ」と感じているビール好きさんは多いことでしょう。
それもそのはず。ラガービールは日本のビール市場の90%以上を占めるといわれています。日本だけでなく、世界的にもスタンダードなビールとして知られているビアスタイルなのです。
ゆっくり味わうのが「エールビール」
一方、上面発酵でつくられるエールビールは、まるでワインのように奥深い風味を楽しめるのが特徴です。
エールにもさまざまな種類があり、それぞれ色や香り、味わいが異なります。フルーティーで豊かな香りや、深い味わいを持つものも少なくありません。
味に個性があるため、料理によって合わせるエールビールの種類を変えて楽しむ味わい方もできます。ゆったりと時間を取って楽しめるのがエールビールの魅力です。
ラガービールをさらに分類
ラガービールをチェックしていると、「ピルスナー」と書いてあるのを目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
ピルスナーとはラガービールをもっと細かく分類したビアスタイルの名前です。
このようにラガーというビールの中にも多種多様なビアスタイルが存在します。よりおいしく味わえそうな1本を見つけ出す手がかりに、ラガーの主なビアスタイルを知っておきましょう。
チェコ発! 日本市場の約9割を占める「ピルスナー」
ラガービールの種類でよく見られる「ピルスナー」は、19世紀にチェコで生まれたビアスタイルです。
特徴は淡色の液体と、4~5%程度の低めのアルコール度数。キリッとした爽やかなのど越しやホップの苦味が味わえるのはピルスナーだからこそ。
「ビールはやっぱりゴクゴク味わいたい!」という人はもちろん、キンキンに冷やしたビールでのどを潤したいときにもおすすめのビールです。
苦味を抑えた「ヘレス」
「ヘレス」は、ドイツの南部に位置する都市ミュンヘンで生まれたラガービールです。
ピルスナーがドイツに伝わり、これに対抗してヘレスが作られたといわれます。
そのため製造の流れや色合いはピルスナーに似ています。
一方で、ピルスナーよりもモルト(麦芽)の風味が強く、甘みまで感じられるのが特徴。ホップの苦味が抑えられているのもヘレスの魅力でしょう。
苦いラガーが苦手な人や、普段飲んでいるピルスナーとは異なる味わいを楽しみたい人は、ヘレスを試してみてはいかがでしょうか。
オクトーバーフェストで用いられる「メルツェン」
ドイツ生まれのラガービール「メルツェン」は、ドイツ語で「3月」という意味。
3月から仕込みが始まり10月まで半年間の間熟成されるため、この名が付けられました。
メルツェンは、オクトーバーフェスト(9月下旬から10月初旬までドイツで開催されるビールの祭典)に提供されるビールでもあります。
半年間にも渡る熟成期間はビールの中では長い方で、この間にホップの香りは薄れてしまいますが、まろやかな味に仕上がるのが特徴。
夏も貯蔵しなければならないため、アルコール度数が5~6%前後とやや高い特徴もあります。美しい赤褐色や淡色のメルツェンをストレートグラスに注いで、色を楽しみながら飲むのもおすすめです。
アルコール度数の高い「ボック」
「ボック」はドイツ北部のアインベックで14~15世紀ごろに生まれたとされています。
17世紀ごろからはドイツ南部ミュンヘンを中心に製造されるようになった、
歴史あるラガービールです。
「雄ヤギ」という意味を持つボックは、その名の通り雄のヤギのように力強い味わいをしています。
ボックの力強さの秘密の一つがアルコール度数です。
一般的なビールはアルコール度数が4〜5%であるのに対し、ボックはおよそ6%以上が主流。商品によっては14%を超える高アルコール度数のものも存在します。
麦芽をローストしているため、液体は金色よりもやや濃い色をしているのも特徴です。香りと味をガツンと味わいたいときは、ボックを楽しんでみてはいかがでしょうか。
赤い麦芽を使用した「レッドラガー」
「レッドラガー」は、原料にレッド麦芽(赤大麦)という特別な種類の麦を採用してつくられたラガービールです。
通常の麦と比べて赤い色が特徴の赤大麦を使ったビールは、きれいな深い赤色の液体をしています。
味わいにはコクがあり、ホップの香りも堪能できるレッドラガーは、グラスに注ぐと見た目の美しさも楽しめます。
カラメル風味の黒ビール「デュンケル」
ドイツで生まれた黒ビールの一つ「デュンケル」は、黒というよりもこげ茶色に近い色味をしています。
このような色味をしているのは、原料の麦芽をローストしているためです。
麦芽を焦がして使うことで、まるでカラメルのような風味が際立ちます。
苦味はあまりなく、甘みやコクを実感できるデュンケルは、ラガービールが苦手な人でも飲みやすいと評判です。
漆黒なのに苦味控えめ「シュバルツ」
「シュバルツ」はデュンケルと同じく、ラガービールが苦手な人にも好まれている黒ビールです。
デュンケルとの違いは麦芽のロースト具合にあります。
デュンケルよりも高温で強くローストした麦芽を使っているシュバルツは、チョコレートやコーヒーを彷彿とさせる香ばしさが魅力です。
見た目の色の濃さからは濃厚な味がイメージされることがよくありますが、イメージに反して濃厚な風味はありません。
意外とあっさりとした風味で、ゴクゴクと楽しめます。
個性あふれるラガービールを楽しむならクラフトビールで!
日本人になじみ深いラガービールは、蓋を開けてみると多種多様な味わいがあることが分かりました。
これら個性あふれるラガービールを楽しむなら「クラフトビール」に目を向けてみるのがおすすめです。
醸造者のこだわりがつまったオリジナルビール
クラフトビールとは、つくり手のこだわりを発揮してつくられるビール。
一方で、近年は大手ビールメーカーもクラフトビール市場に参入するなど、ビール市場全体が盛り上がりを見せています。
味わいや風味の違い・希少性・おしゃれなパッケージといったポイントからも、クラフトビール市場はますますの発展が期待されています。
クラフトビールの「Craft」は、英語で「工芸」「技術」などを意味し、小規模な醸造所の職人たちが
ラガー×クラフトビールのおすすめ8選
クラフトビールの醸造所ではエールビールがよく造られているイメージがあります。
しかしエールビールだけに収まらず、日本人のビールとして生活に馴染んできたラガービールづくりに挑む醸造所も少なくありません。
醸造所それぞれのこだわりを堪能できる、おすすめのラガーを紹介します。
ベアードブルーイング「沼津ラガー」
静岡県沼津市にある醸造所・ベアードブルーイングには、設立の地である沼津の漁港をパッケージに描いたラガービール「沼津ラガー」があります。
沼津ラガーはやや暗めのオレンジ色の液体にしっかりした泡が特徴です。一口飲むとあっさりめのコクを感じられます。
ゴクゴクと飲むうちにホップの華やかな香りとともに、モルト由来の甘みやささやかな酸味を味わえるのも大きな魅力。
ラガーの持ち味であるキレのよさにプラスされた上品な軽やかさを感じられます。
エチゴビール「ピルスナー」
新潟県のエチゴビールは、日本で初めて地ビールをつくった醸造所としても知られています。
昔ながらのピルスナースタイルを、エチゴビールが独自で解釈してつくったビールが、こちらの「ピルスナー」です。
やや濃い金色のビールを口に含むと、モルトの芳醇な香りと旨味がたっぷりと味わえます。
心地よいのど越しがありながらも、しっとりとした口当たりなので、いつもよりゆったりとビールを楽しみたいときにふさわしい1本です。
いわて蔵ビール「金蔵」
岩手県にある日本酒の酒蔵から生まれたブリュワリー。
こちらの「金蔵」は、琥珀色の液体とふんわりした泡が美しいピルスナーです。
口にすると、ピルスナーらしい刺激と苦味、そして味わい深さを楽しめます。ゴクッと飲み干したときにスッと抜けていくようなキレも大きな魅力です。
金蔵ならではの力強い味わいは、ガツンと飲みごたえのあるクラフトビールを飲みたいときにぴったりです。
ベアレン醸造所「THE DAY / TRAD GOLD PILSNER」
岩手県のベアレン醸造所では、ビールの本場であるドイツ南部から設備や技術を受け継いだビールマイスターが醸造をおこなっています。
「THE DAY / TRAD GOLD PILSNER」は、伝統的なピルスナースタイルのビールです。
伝統の製造方法を大切にしつつ、歴史的に使われているホップを採用し、キリッとしたのど越しと苦味を楽しめる味に仕上げられました。
贅沢な味わいのあるベアレン醸造所ならではのピルスナーで、リッチな晩酌の時間を過ごしませんか。
コエドブルワリー「COEDO 瑠璃-Ruri-」
埼玉県川越市にあるコエドブルワリーは、ドイツから設備を取り寄せ、現地のマイスターを招いてビールづくりを学んで誕生しました。
この真摯な姿勢と日本人らしい感性は「COEDO 瑠璃-Ruri-」にも表現されています。
美しい金色の液体に華やかな香りと苦味が大きな魅力。爽やかな風味と軽やかな後味で、エレガントな味わいでありながら、思わずゴクゴク飲んでしまう人も少なくありません。
エチゴビール「こしひかり越後ビール」
日本初の地ビールを生んだエチゴビールでは、原料にお米を使った珍しいラガー「こしひかり越後ビール」も人気です。
ビールの原料である大麦麦芽・小麦麦芽・ホップに加え、新潟県産のコシヒカリを使っているユニークな一本。
このお米の効果も相まって「こしひかり越後ビール」にはキレのある後味とのど越しがプラスされました。
苦味が効いた辛口の味わいは、のどの乾きをビールで潤したいシーンにもぴったり!和食と一緒に楽しむのにも向いています。
ベアレン醸造所「イノベーション レッドラガー」
岩手県のベアレン醸造所では、レッド麦芽を使ったラガービール「イノベーション レッドラガー」も登場しています。
原材料には、麦芽とホップしか使っていません。
コクの中にホップの香りを感じられる味わいには、甘みと酸味、そして苦味も含まれています。
特別な赤い麦芽を使っているからこそ、美しい赤色をしているのが特徴です。
ぜひグラスに注いで、まるでカクテルのような色を楽しんでみてはいかがでしょうか。
ベアードブルーイング「修善寺ヘリテッジヘレス」
ベアードブルーイングの「修善寺ヘリテッジヘレス」は、ラガーの苦味が抑えられたヘレススタイルのビールです。
醸造にはデコクションマッシュ製法と呼ばれるドイツの伝統製法を取り入れ、味わいに深みをプラスしています。
手間暇をかけた製法によりつくられた修善寺ヘリテッジヘレスは、まろやかな飲み口とクリアな後味が魅力。
ライトな味わいはそのままに、苦味が控えられているため、苦いラガーが苦手な人も思わずゴクゴク飲んでしまうかもしれません。
ラガービールをおいしく味わうためにマスターしたい2つのこと
好みに合いそうなラガーは見つかりましたか?
製品や醸造所によって、多種多様な表情のあるラガービールは、自宅での晩酌の時間を充実させてくれます。
そんなラガービールをもっとおいしく味わうためには、グラスの洗い方や注ぎ方にもこだわってみてはいかがでしょうか。
【1】グラスの洗い方
ラガービールの味を心ゆくまで堪能するには、きめ細かい泡を作ることが最重要です。
ビールの泡は酸化や炭酸の抜けを防ぐ役割を担っています。泡が早く消えてしまうと、その分、酸化が進んで炭酸が抜けやすくなり、味が悪くなってしまうのです。
きめ細かい泡を作るためには、まずビールを注ぐグラスの洗い方を見直してみましょう。
きれいに洗っているつもりでも、目に見えない油分やホコリが付着していることは多いもの。そのままのグラスではビールの泡が早く消えてしまいます。
ビールグラスを洗う際は、以下のポイントに気を付けて洗いましょう。
- ビールグラス専用のスポンジで洗う
- 洗剤はきちんと洗い流す
- グラスは網の上などの風通しのよい場所に伏せて置き、自然乾燥させる
早く乾かしたいからと布巾などを使ってしまうと、細かな糸の繊維がコップに付着し、ビールの味わいに影響を与えてしまいます。ホコリが付かないよう伏せて、自然乾燥させるようにしましょう。
【2】ビアバーさながらの味わいを実現する「三度注ぎ」
ラガービールの味をキープする泡は、きめ細かく長持ちする泡です。
そんな泡を家庭で作るには「三度注ぎ」という方法に挑戦してみましょう。
三度注ぎとは、ビールの泡を立てながら3回に分けて注ぐ方法のことです。
一気にグラスへ注ぐ方法と比べ、香りを長く楽しめて、飲み終わりまでの味の変化が楽しめることが分かっています。
- グラスを置いて高めの位置から構えて、グラスの半分の位置まで勢いよくビールを注ぐ
- 粗い泡が落ち着いたら、グラスの縁からそっとビールを注ぎ、グラスから泡がふっくらと盛り上がった時点で止める
- 泡が落ち着いたら、最後にグラスの縁からゆっくりとビールを注いで仕上げる
奥深いラガービールの世界を堪能しよう
日本に流通するビールのほとんどを占めるといわれるラガービール。
市販で味わえるのど越しがおいしいビールとしてピルスナーが有名ですが、ラガービールはそれだけではありません。
細かいビアスタイルに分類すると、ひと口にラガーといっても多種多様な個性があることをお分かりいただけるでしょう。
苦味を抑えたヘレスや香ばしくコクの深いシュバルツなど、さまざまなラガーからお気に入りの味わいを探してみませんか?
奥深いラガービールの世界は、今まで以上にビールの楽しみ方を広げてくれるかもしれません。