結婚や出産などのお祝いをくださった方に、返礼として贈る品物のことを「内祝い」といいます。
しかし、お相手や自分が喪中の場合、「内祝いを贈っても大丈夫なものか」と悩んでしまいますよね。
「喪中」とは、故人が亡くなってから喪が明けるまでの期間のこと。親等などで期間は異なりますが、おおよそ一年間を指します。
また、亡くなってから四十九日間(仏式の場合)を「忌中」といい、忌中の期間が終わると「忌明け」します。
この記事では「喪中の期間と内祝いの時期がかぶる場合」について、お相手・自分、それぞれの立場ごとに対応方法を解説します。
判断に迷っている方は、ぜひご自分のケースに当てはめて参考にしてください。
【相手が喪中の場合】内祝いを贈る注意点
「喪中」とは、遺族が故人の冥福を祈って喪に服し、お祝いごとに関わるのを慎むべき期間とされています。
喪中・忌中のいずれにしても、遺族は法要や各種手続きなどで慌ただしく、なかなか心が落ち着かない時期。
本来、結婚・出産の内祝いは「お祝いをいただいてから1カ月以内」に贈るのがマナーですが、お祝いをくださったお相手が喪中の場合、内祝いをどうするべきか確認していきましょう。
四十九日(忌中)を過ぎれば贈ってOK
結婚や出産のお祝いをいただいた方にお礼の気持ちを込めて贈る内祝いは、相手が喪中であっても贈ることはできます。むしろ、お祝いをいただいて返礼をしないほうが礼儀に反します。
ただし、贈るタイミングには十分な配慮が必要です。
身内を亡くして間もないうちは、悲しみも大きく心の余裕もないので控え、四十九日が過ぎてから贈りましょう。
故人が亡くなって四十九日までの期間を「忌中」といい、忌中の期間を終えると「忌明け」となります。
一般的に「忌明けをすれば(忌中を過ぎれば)内祝いを贈ってもよい」とされています。
<三浦先生からのひとこと>
出産は時期が選べるものではありません。身内の不幸も同様です。 結婚は時期が選べますが、「忌中」あるいは「喪中」を避けることが多いです。 出産祝いや結婚祝いを贈る時期は、出産や結婚の1カ月以内が目安ですが、1カ月以上経ってからお祝いをくださる方も少なくありません。 出産祝いや結婚祝いは「喪中」でも贈れますが、四十九日までの「忌中」は避けて「忌明け」してから贈るのが一般的なマナーです。 そして、出産祝いや結婚祝いをもらったら、返礼(内祝い)をするのが礼儀。1カ月以内を目安に返礼品を贈るのがマナーとされています。 こうした兼ね合いで、出産祝いや結婚祝いの返礼をする時期が喪中になる場合があるわけです。 |
喪中の方へ贈る内祝いは挨拶状(お礼状)にも配慮を
内祝いを郵送する際は、挨拶状(お礼状)を添えるのがマナーです。
とくに喪中であることに触れ、故人を偲ぶような文章を無理に入れる必要はありません。シンプルにお礼を述べるような文章を心掛けましょう。
また、喪中の相手への挨拶状は、文面にも心遣いが必要です。
- 忌み言葉を使わない(例:亡くなる、終わる、別れる、切れる、失う など)
- 重ね言葉を使わない(例:ますます、つぎつぎ、いよいよ など)
- 句読点は使用しない(句読点が「区切り」や「終わり」などを連想させるため)
- 「ご健勝のことと存じます」「お元気でお過ごしのことと存じます」などの挨拶はしない
【忌明け後、喪中の相手に内祝いを贈る際の文例】
拝啓
立秋の候 過ごしやすい季節となりました
この度は 心のこもった品物をいただきありがとうございました
最近のご事情を伺い 言葉に尽くせぬ思いでおります
お力になれることがありましたら、どうぞお申し付けください
季節の変わり目に体調など崩されませんよう なにとぞご自愛ください
略儀ながらまずは書中をもちまして御礼申し上げます
敬具
先方の忌明けを待ち「内祝いを贈る時期」が遅れる場合
お相手の忌中を避けることで、本来の内祝いのタイミングから遅れる場合は、先にお礼状だけを送り、いただいたお祝いへの感謝を伝えましょう。
品物は、お相手が四十九日法要を終えて忌明けし、落ち着いたであろう時期に贈れば問題ありません。
【忌中の相手に内祝いを贈る際のメッセージ】
拝啓
初冬の候 冬の息吹を感じる頃となりました
この度は お気持ちのこもった品物をいただきありがとうございました
お悲しみのなか お心遣いをいただきまして誠に恐縮でございます
心ばかりの御礼の品を 忌明けにあらためてお贈りいたしますのでご受納ください
これから寒さが厳しくなってまいりますので どうぞご自愛くださいませ
敬具
なお、事前にお礼状を送付するなら、忌明け後は品物のみお送りしても構いません。
写真付きメッセージカードは避けたほうが無難
結婚内祝いには挙式の写真、出産内祝いには赤ちゃんの写真が入った挨拶状(メッセージカード)を付けて贈るのが主流になりつつあります。
お披露目を兼ねた写真付きメッセージカードは、微笑ましいものです。しかし、喪中の相手に贈るものとしてふさわしいとはいえません。
内祝いとは本来「幸せのおすそわけ」といった意味をもちます。
挨拶状やメッセージカードは、派手な色・柄を避け、地味な用紙を使うことをおすすめします。
内祝いの品として避けるべきもの
喪中の相手に内祝いを贈るときは、相手の気持ちを考慮し、以下の品物は避けましょう。
お酒・鰹節 | 祝いの場で用いられるため |
日本茶 | 仏事の際の贈答品として定番の品 |
縁起物をモチーフにしているお菓子 | ウサギ(子孫繁栄、飛躍)、ツル・カメ・松(長寿) |
肉・魚など生もの | 仏教では「四つ足生臭(よつあしなまぐさ)」といわれる肉や魚はタブーとされているため |
内祝いで選びがちな以下の品物も、悲しみのなかにいる相手の気持ちを考慮して避けた方が無難です。
- 華やかで派手なデザインやラッピング
- 赤や白のアイテム
- ギフトカード、現金
- かわいらしいキャラクターもの
- 品物自体がユーモアのあるもの
また、お相手が喪中の場合は「ご不幸を連想させる品物」は避けましょう。
- 白いハンカチ…亡くなった方のお顔にかける白布に似ているため
- 刃物…「(縁が)切れる」など、縁起が悪いとされる
- 櫛…「苦(く)」や「死(し)」といった忌み言葉を連想させる
内祝いの贈り物にかけるのし紙
先方に礼を尽くす贈り物には「のし(熨斗)紙」をかけるのが贈答マナーです。
しかし、喪中の場合には配慮が必要です。
喪中ののし紙の表書きは「御礼」にする
通常、内祝いの表書き(贈り物の名目)には「内祝」と記載しますが、喪中の相手に「祝」という文字を使うのはふさわしくありません。
そのため、結婚祝いや出産祝いをいただいた方への感謝の気持ちとして、表書きは「御礼」として贈ります。
結婚と出産の水引の間違いに注意!
のし紙には水引がついていますが、「結婚」関連の祝い事と「出産」関連の祝い事では、ふさわしい水引が異なります。
結婚関連 | 紅白・結び切りの水引 |
出産関連 | 紅白・蝶結びの水引 |
結婚や快気祝いなど、人生で一度だけが望ましい慶事では、一度結ぶとほどけにくい「結び切り」の水引が印刷されたのし紙を使用します。
出産や新築など、何度くりかえしてもめでたい慶事には、何度でも結び直せる「蝶結び」の水引が印刷されたのし紙を使用します。
<三浦先生からのひとこと>
喪中であっても忌明けをすれば返礼の品を贈ってもよい、のし紙をつけてもよいと言われていますが、お相手の心情に寄り添うことが大切です。 例えば、お子様や伴侶をなくされ底知れぬ悲しみの中にいる方に対し、慶事を意味するのし飾りや紅白の水引がついた「のし紙」をつけないという選択もあります。 お祝いをくださるような親しい間柄であればこそ、お相手の気持ちを慮りながら御礼をしてください。 |
【自分が喪中の場合】内祝いを贈る際の注意点
自分が喪中の場合、結婚や出産に際してお祝いしてくれた方に対し、返礼として内祝いを贈っても問題はないのでしょうか。
以下で「自分の慶事と喪中が同時期に重なってしまった場合」の内祝いについて、注意点を解説します。
先方に気を遣わせないためのエチケットとしてチェックしておきましょう。
四十九日(仏式の場合)を過ぎてから贈ればOK
内祝いとは、結婚や出産のお祝いをくださった方へ感謝を伝える返礼品のことです。
また、出産の内祝いは、生まれた赤ちゃんの名前のお披露目も兼ねています。
そのため、自分が喪中であっても、いただいたお祝いに対して内祝いを贈ることは問題ありません。
一般的に、内祝いは「お祝いをいただいてから1カ月以内に贈るのが目安」とされています。
しかし、身内が亡くなって四十九日まで(仏式の場合)の「忌中」と呼ばれる期間、遺族は悲しみの中で法要の準備やさまざまな手続きに追われるでしょう。
その場合、一カ月以内に贈るという目安に合わせようと、無理をする必要はありません。
四十九日法要を終えて「忌明け」し、気持ちに余裕ができたタイミングで内祝いを贈っても問題はなく、それが一般的になっているからです。
四十九日が過ぎるのを待つことで、内祝いが大幅に遅れると見込まれる場合には、先に先方へお礼状だけを送り、感謝の気持ちを伝えましょう。
お礼状の文例
喪中で内祝いの贈り物が遅れる場合のお礼状には、以下の要素を記載しましょう。
- 自分の慶事に対してお祝いをくださったことへの感謝
- 喪中のため、内祝いを贈るのが四十九日を過ぎてからになること
また、文面を考える際は以下の点にも注意が必要です。
- 「祝」という言葉を避ける
- お相手に対しても「ご健勝」「ご清祥」「お慶び」などのおめでたい言葉を避ける
- 句読点は使用せずに空白を使用する(句読点が「区切り」や「終わり」などを連想させるため)
これらを踏まえた、「自分が喪中の場合のお礼状」の文例は以下の通りです。
<出産内祝いのお礼状の例文>
拝啓
向暑の候
○○様はお変わりなくお過ごしでしょうか
先日は 長男○○の誕生に際しまして過分なお心遣いをいただき誠にありがとうございました
忌中のため 御礼のお品は四十九日が過ぎてから贈らせていただきます
暑さ厳しき折柄、くれぐれもお身体にはご留意ください
敬具
<結婚内祝いのお礼状の例文>
拝啓
春の暖かさが感じられる頃となりました
○○様はお変わりなくお過ごしでしょうか
この度は私どもの結婚に際し過分なお心遣いをいただきまして誠に有難うございました
忌中につき 御礼のお品は四十九日が過ぎてから贈らせていただきます
寒暖定まらぬ時期ですので、くれぐれもご自愛くださいませ
敬具
なお、事前にお礼状を送付するなら、忌明け後は品物のみをお送りしても構いません。
内祝いの品として避けるべきもの
自分が喪中の場合、内祝いを贈る際は「弔事を連想させる品」を避けたほうがいいでしょう。
具体的な品物の例は以下の通りです。
日本茶 | 弔事の際の贈答品としてよく使われるため |
白いハンカチ | 亡くなった方のお顔にかける白い布を連想させるため |
櫛 | 「苦(く)」や「死(し)」といった忌み言葉を連想させるため |
刃物 | 「(縁が)切れる」ことから縁起が悪いとされているため |
内祝いの品にかけるのし紙
慶事のギフトには、「のし(熨斗)紙」をかけるのがマナーとされています。
使用するのし紙は、結婚や出産など、慶事の種類によって異なります。
間違えないように注意が必要です。
結婚関連 | 紅白・結び切りの水引 |
出産関連 | 紅白・蝶結びの水引 |
表書き(贈り物の名目)は「御礼」がおすすめ
内祝いののし紙の表書きは「内祝」にするのが一般的です。
しかし、喪中の場合は「祝」という文字の使用を控えましょう。
先方からお祝いをいただいたことへの感謝の気持ちとして、表書きには「御礼」と記載して贈るようにします。
喪中の内祝いについて総まとめ
●喪中に返礼(内祝い)をするケース
①出産祝いや結婚祝いをもらった後で、相手または自分の身内に不幸が生じてしまった |
⇒喪中ではあるけれど、「忌明け」してから返礼する |
②相手または自分は喪中だが、「忌明け」後に出産祝いや結婚祝いをもらった |
⇒喪中ではあるけれど、1カ月以内を目安に返礼する |
※マナーとして、先方から忌中に出産祝い・結婚祝いをいただくことはないと仮定しています。
結婚や出産にあたってお祝いをいただいたら、返礼として1ヶ月以内をめどに内祝いの品を贈り、感謝を伝えるのが基本的なマナーです。
しかし、自分やお相手が喪中の場合は、内祝いの本来のタイミングにこだわる必要はありません。
故人が亡くなって間もない「忌中」の期間を過ぎれば、内祝いの品を贈っても差し支えないという見方が一般的です。
相手が喪中の場合も、自分が喪中の場合も、基本的な考え方は同じです。
内祝いの品にのし紙を掛ける場合は、表書きを「御礼」にするという点にはご注意ください。
喪中の内祝いは、お相手も自分も負担にならない範囲で、失礼のない対応を心がけましょう。