この記事では、結婚祝いの贈り物にふさわしい熨斗(のし)紙の選び方と、表書きのマナーを解説します。
「冠婚葬祭の贈り物にはのし紙を付けるもの」と、なんとなく知っている方は多いでしょう。しかし、「のし紙には複数の種類があり、贈る目的によって使い分けなければいけない」というところまではあまり知られていません。
慶事用ののし紙だけでもいくつかの種類があり、水引の結び方で意味合いが異なります。結婚祝いにふさわしくないのし紙を使ってしまうと、先方から「マナーを知らない失礼な人だ」と思われてしまう可能性もあるのです。
今回は、大人として知っておきたい「のし紙の知識」をまとめました。ご祝儀袋の選び方や記入方法もご紹介しますので、結婚祝いを贈る前にぜひチェックしてください。
目次
結婚祝いの贈り物にのし紙は必要?
親しい間柄の方へ結婚祝いのプレゼントを贈る場合、「仰々しくなるから」と、のし紙を付けるべきか迷う方がいらっしゃるようです。
結婚は人生の大きな節目であり、特別なお祝い事です。
目上の方や職場の方に贈るお祝い品はもちろんのこと、親しい間柄こそ正式なお祝いであることを示すのし紙を付けましょう。
「のし紙」の由来
結婚祝いなどの慶事の品には、贈る名目と贈り主を書いた掛け紙をかけ、それを水引でくくり、掛け紙の右上に「熨斗(のし)」を包んだ「熨斗飾り」をつけて贈るのが正式です。
「熨斗」とは、熨斗飾りの真ん中にある黄色いものを指し、「熨斗あわび」を表しています。
あわびは神聖な食べ物として、昔から神様へのお供え物に使われてきました。やがて日持ちのする熨斗あわびが用いられるようになり、あわびの身を薄く削ぎ、押し伸ばして乾燥させた熨斗あわびは、長寿や慶びが長く続くよう願う縁起物として慶事の贈り物に添えられるようになりました。
現代では簡略化され、熨斗飾りと水引を印刷した「のし紙」を用いるのが一般的です。
慶事の贈答品にのし紙を掛けることによって「改まった気持ちで祝福の品をお贈りします」と礼を尽くす姿勢を示せます。
慶事の贈答品に「熨斗」を添えるのは、昔から引き継がれている正式なマナー。伝統にならい、祝福の気持ちを込めてのし紙を掛けることをおすすめします。
【結婚祝いの贈り物】のし紙の選び方ポイント
慶事用ののし紙にはいくつか種類があり、贈るシーンによって使い分けられます。ここでは結婚祝い用ののし紙の選び方について詳しく解説していきます。
1.結婚祝いに使うのし紙は「熨斗飾り」付きを
のし紙は、正式な祝賀の贈答品を表すものであり、「熨斗あわび」を包んだ「熨斗飾り」がついていることに由来します。
のし紙の右上に印刷されているものが熨斗飾りで、和紙に包まれた黄色く細長い部分が熨斗あわびを表しています。
結婚祝いの品には、縁起物である熨斗飾りが付いたのし紙を選んでください。
2.結婚祝いの水引は「結び切り」または「あわじ結び」
「水引」とは、 細いこよりにのりをひいて乾かし固めたもので、進物用の包み紙などを結ぶのに用います。のし紙では、中央に印刷されています。
水引には贈り物が未開封であると保証する意味や、魔よけの意味があるといわれています。水引の結び方には「何度あっても良いこと」「繰り返さず一度きりにしたいこと」、それぞれの意味を表す結び方があります。
- 結び切り(ま結び)……一度結ぶとなかなかほどけないため、二度と繰り返さないという意味をもつ。
- あわじ結び(あわび結び)……一度結ぶとほどくのが難しいため、結び切りと同じ意味で使われる。両端を引っ張るとさらに固く結ばれるため「末永くお付き合いを」という意味も込められる。結び切りが発展した形といわれている。
- 蝶結び(もろわな結び)……ほどけても何度でも結び直せるため、何回繰り返してもめでたい慶事をあらわす。
結婚は「繰り返さず一度きりにしたいこと」です。そのため、結婚祝いの水引は「結び切り」または「あわじ結び」がふさわしいとされます。あわじ結びは華やかに見えるため、結婚祝いに好んで使う人が多いようです。
3.結婚祝いの水引は「10本」「紅白または金銀」
結婚祝いののし紙を選ぶ際は、水引の本数や色にも注目しましょう。
結婚祝いでは、水引の本数が「10本」ののし紙を使うのが一般的です。
慶事の水引は、一般的なお祝いで「5本」、高額なお祝いだと「7本」と、奇数にするのが基本ですが、慶事の中でも特におめでたい結婚祝いの水引だけは「10本」を用いることができます。
結婚祝いだけ偶数の「10本」で良しとされるのは、5本の水引を2束にした10本を用いることで「両家が結ばれる形を表す」、5の倍数で「喜びが重なる」などの意味合いで縁起が良いとされるためです。
水引の色については「紅白」はお祝い事全般に使われ、「金銀」は限定されたお祝い事に使われます。
結婚祝いではどちらの色を使っても良いとされています。
また、近年ではのし紙のデザインが多様化しており、おしゃれで華やかなものが増えています。気心知れた友人に贈る結婚祝いなら、凝ったデザインののし紙を使って結婚祝いに華を添えるのもいいでしょう。
【結婚祝いののし紙】表書きの書き方
のし紙の中央上部には、贈り物の名目を表す「表書き」を書き入れ、中央下部には贈り主の名前を「名入れ」します(両方をあわせて「表書き」と呼ぶこともあります)。
ここでは結婚祝いにふさわしい表書きの書き方についてみていきましょう。
表書きの書き方「贈り物の名目」
のし紙の中央上部に記入する表書きには、この贈り物がどのような意味をもつものなのかを表す「贈り物の名目」を書きます。
結婚祝いでは「壽」「寿」「御祝」「御結婚御祝」などの表書きにするのが一般的です。なお、表書きに「祝御結婚」や「御結婚祝」と書くケースも見受けられますが、人によっては4文字を縁起が悪いと気にする場合もあるため、避けたほうが無難でしょう。
表書きの書き方、「名入れ」は贈り主である自分の名前を
「贈り物の名目」の下、水引の中央下側には贈り主の「名入れ」をします。
この部分は意外と間違える人が多く、手紙を書くのと同じ感覚で「贈る相手の名前を書いてしまった」という失敗談が後を絶ちません。
名入れとは、「受け取った方が、誰からの贈り物なのかすぐわかるよう、贈り主の名前を書くもの」と覚えておきましょう。
<三浦先生からのひとこと> 表書き・名入れは、毛筆で書くようにしましょう。筆ペンを使えば手軽です。色は黒。くれぐれも弔事向けの薄墨で書かないよう注意してください。ギフト専門店やデパートで贈り物を購入すると、サービスで表書き・名入れをしてもらえるので、毛筆で書く自信がなくても安心です。 |
また、結婚祝いを複数名で贈る場合、名入れ部分の書き方が変わるので、以下でご説明します。
夫婦・家族連名の場合
夫婦連名で結婚祝いを贈る場合は、名入れ部分の中央に夫の名前をフルネームで書き、その左側に妻の下の名前だけを書くのが基本です。
夫婦+子どもの家族連名なら、夫の名をフルネームで名入れ部分中央に書き、左側に妻・子どもの順番で、下の名前だけを書きます。
名入れには苗字だけを記載する方法もありますが、同じ苗字の親戚から新郎新婦に結婚祝いが届くと混乱させる可能性があるため、フルネームで書いておいたほうが親切でしょう。
複数名の連名の場合
家族以外の方との連名の場合は、3人以下と4人以上で名入れの書き方が変わります。
【3人までの連名】
- 全員の名前をフルネームで並べて書きます。
- 右側が上位になるため、目上の方の氏名を一番右側にしましょう。
- 特に序列がない場合は右から五十音順、または年齢順に書きます。
【4人以上の連名】
- 水引中央の下に代表者の名前をフルネームで書き、その左側に「外一同」あるいは「外○名」と書くのが基本です。
- 職場や組織の方から贈る場合には「一同」または「有志」を用いて記載する方法もあります。
- 「一同」は全員を指すので、職場の所属部署全員からお祝いを贈る場合は「〇〇部一同」と書きます。
- 「有志」は同じ志を持つ人が集まった場合に用いる言葉です。そのため職場の所属部署でお祝いを渡すことに賛同した人からのお祝いなら「〇〇部有志」と書きます。
「一同」と「有志」は混同されることがありますが、意味が異なります。「有志一同」と書くのも誤りです。
「外○名」「一同」「有志」を用いた場合は、別紙にお祝いを出した全員の名前を書いて封入し、誰がお祝いに参加したかが分かるようにしておきましょう。
結婚祝いの贈り物、「内のし・外のし」の判断は?
「内のし」「外のし」とは、のし紙を掛ける体裁のことです。
・内のし……贈り物の箱に直接のし紙を掛け、その上から包装紙で包む
・外のし……贈り物を包装紙で包み、その上からのし紙を掛ける
結婚祝いの贈り物に掛けるのし紙を、「内のし」「外のし」のどちらにすべきか、明確な決まりはありません。
しかし、お祝いを渡す状況に合わせて使い分ける配慮は必要です。
結婚祝いの贈り物では、包装紙の外側にのし紙をかける「外のし」が基本です。誰からの贈り物かが先方にひと目でわかるようにするためです。
ただし、結婚祝いの品を配送で贈るなら、「内のし」が良いでしょう。のし紙の上から包装紙で包むので、配送中にのし紙が破れるのを防げます。
結婚祝いの「祝儀袋」基本マナー
結婚祝いに現金を贈るときに使う儀礼用の袋を、一般的に「祝儀袋」と呼びます。
祝儀袋の選び方と表書きの書き方は、基本的にのし紙の場合と同じです。ただし、祝儀袋は豪華でサイズが大きくなるほど高額向けになるので、包む金額とつりあう祝儀袋を使うようにすると良いでしょう。
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- 5万円以上…あわじ結びまたは輪結びなど華やかな水引のもの。檀紙(だんし:ちりめん状のシワがある最高級和紙)の二段重ね、鶴亀松など縁起の良い飾りをあしらった豪華なもの。
- 2、3万円…水引の色は金銀や紅白。結び切りやあわじ結びの水引が掛けられているもの。
- 1万円以下…水引や熨斗飾りなどが印刷されたもの。
祝儀袋のパッケージに記載されている金額目安を参考にするとわかりやすいでしょう。
祝儀袋に入れるお金は「新札」を用意するのがマナーです。これは『このめでたい日を心待ちにし、きちんとお祝い金も準備していました』という気持ちを表すためとされます。
中袋にお札を入れる際は、袋の表側とお札の表側(肖像画があるほう)を合わせ、肖像画が上にくるように入れるのが正しい入れ方です。
結婚祝いの贈り物を渡す時期にも気を付けよう
結婚祝いは、本人から結婚報告や結婚式の招待状を受け取ってから渡すのが基本です。
招待状を受け取る前にお祝いを贈ると、招待を催促しているようで新郎新婦に気をつかわせる可能性があります。また、式に招待されているかどうかでお祝いの内容も変わります。
結婚式に招待されなかった場合は、結婚式の後ひと月以内にお祝いを渡すと良いでしょう。
結婚式をしない場合は、結婚の報告を受けてからなるべく早い時期に渡します。
結婚祝いののしデザインが多様化
昨今はおしゃれなのし紙のテンプレートが豊富です。
ピンク色のもの・花模様が散りばめられたもの・新郎新婦のオリジナルイラストを入れられるものなど、華やかなデザインが多く見受けられます。
親しい友人などに贈る結婚祝いなら、このようなカジュアルなテンプレートを活用してもいいでしょう。
ただしデザインに気を取られて結婚祝いにふさわしくない水引の数や結び方を選ぶことのないよう気をつけてくださいね。
結婚祝いに「蝶結び」はマナー違反
お祝いの品にのし紙を掛けず、プレゼントする品をラッピングしたい方もいらっしゃるでしょう。
「相手に気をつかわせないカジュアルな贈り物にしたい」「相手の好きな色やデザインを使って華やかな贈り物にしたい」その気持ちはとても素敵です。
ただし、ラッピングには注意が必要です。
一般的にラッピングにはリボンを添えたり、カラーテープでリボン結びにしたりしますが、何度も結び直せる蝶結び(リボン結び)は結婚祝いには縁起が悪いとされています。
また、のし紙とリボンを一緒にかけるのもNGです。
さらに、ラッピングに使うアイテムの色にも配慮が必要です。弔事に使われる「黒と白」「黄と白」の組み合わせを、慶事の贈り物に用いるのは不適切と感じる人が多いため避けましょう。
まとめ
のし紙は「贈る側の礼を尽くす姿勢を表わすもの」です。
結婚する2人の門出を祝って贈る品物には、ぜひのし紙を掛けましょう。
お祝いの気持ちを表すには、伝統的なマナーを守ることも大切。結婚祝いにふさわしいのし紙や祝儀袋を選べるよう、ご紹介した内容をぜひお役立てください。