病気で長い期間にわたり治療した後に亡くなる方もいますし、突然命を落とす方もいます。
家族が亡くなると喪主・遺族は通夜や葬儀の準備に追われ、悲しみの中でさまざまな準備や手続きを行わなくてはなりません。
いただいた香典の中には、住所が明記されていない場合もあります。
とはいえ葬儀中は、それを確認する余裕もないため、香典返しの段階になって住所がわからずお礼のしようがないこともあるでしょう。
香典返しを贈る住所がわからないとき、また住所の書き方なども、きちんと知っておくことが大切です。
香典返しをしたくても相手の住所が不明
本来、香典返しは四十九日を終えた忌明けに、喪主がお礼の気持ちを込めて相手先に持参するものとされてきましたが、近年では住宅事情などから香典返しの品を郵送するケースがほとんどと思われます。
それでは住所がわからないときはどうするべきでしょうか。
先方の住所がわからないときの基本的な対処法
不祝儀袋に住所が書かれていなくても、会葬者名簿(芳名帳)に書かれているかもしれません。
まずは参列者の名簿で名前を探し、住所が記載されているかどうか確認します。
それでも住所が書かれていない場合、不祝儀袋に何か他の文面が書かれていないか、メモがないかを調べましょう。
参列者の中には「香典返しは不要です」という気遣いから、わざと芳名帳に住所を書かない方もおられます。
その場合は不祝儀袋に「香典返しは辞退させていただきます」などの言葉が書かれていたり、手紙を入れて意志を伝えてくださることもあるのです。
住所を調べる具体的な方法
連名で香典をいただいた場合、代表の方以外の住所が書かれていないこともあります。
この場合、代表の方に連絡し、「それぞれに香典返しをしたいので住所を聞きたい」と伝え、教えてもらいましょう。
その際、「一人一人に返礼は必要ない」といわれたら、代表の方にまとめて送れば問題はありません。
同僚の方々から連名で香典をいただいた場合は、職場で皆さんがすぐに分けられる個包装の焼き菓子詰め合わせなどを一箱、代表の方に向けて香典返しとして贈るのがおすすめです。
また、ご近所の方が葬儀に参列してくださった場合に、香典に住所が書かれていないこともあります。
「近所だから書く必要もないだろう」とあえて書かない方も多いでしょう。
この場合、顔と名前がわかれば、ご近所の方に「香典返しを贈りたいので住所を知っている方はいませんか?」と聞くとよいでしょう。
住所がわからなくても、自宅の場所を知っていれば持参すれば問題はありませんし、自営業など職場もご近所で所在地がわかるなら、そちらに持参するのもいいでしょう。
近所の方などは後のお付き合いもあるので、住所がわからなくても自宅がわかるようなら持参し、お礼の気持ちを伝えましょう。
基本的な香典返しのマナーも押さえよう
葬儀に参列する機会は多くても、葬儀を執り行う側になるのは人生の中で1回、2回あるかどうかという人が多いでしょう。
香典のマナーについてはある程度知識を持っているとしても……香典返しのマナーとなるとわからない人も多いのではないでしょうか。
礼儀知らずとならないよう、香典返しの由来や各宗教の香典返しの違いなどを理解しておくと安心です。
まずはそもそもの香典返しの由来を知ろう
葬儀の際、故人の霊前に供えるのが香典(香料)で、仏教の思想がベースにあります。
香典として供えられるのは現金の他、供花、線香、食べ物などもあります。
昔は人が亡くなると四十九日までが忌中とされ、遺族は喪服で過ごしていました。
葬儀の準備などは近隣の方が行い、食事の炊き出しなど手間も費用も掛かったことから、相互扶助として香典を贈るようになったといわれています。
当初はお米を持ち寄るのが一般的でしたが、お金を持っていくようになったのは江戸時代からといわれています。
しかし、「香典返し」の慣習は最初からあったわけではなかったようです。
喪主は香典を持ってきてくれた人の名前と住所、金額を記録しておき、先方の家庭で後日不幸が合った際、いただいたのと同じ額を香典として持っていきました。
香典返しの慣習はここから派生したと考えられています。
仏教の弔事マナー
人が亡くなってから四十九日経つまでの期間を「中陰(ちゅういん)」「忌中」ともいいます。
中陰の期間が満ちて「満中陰(まんちゅういん)」を迎えるのが「忌明け」で、この世でさまよっていた故人の魂があの世に到達し、無事成仏したとして法要を行い、香典をくださった方々へ感謝とお礼の気持ちを込めて香典返しを行うのが一般的です。
しかし地域性や宗教による違いがあり、四十九日後ではない場合もありますし、香典返しを行わないこともあります。
キリスト教の弔事マナー
キリスト教にはもともと香典という慣習はなく、仏教のように忌明けという考え方もないため香典返しもありません。
しかし日本の場合、風習として古くから香典の歴史があることに影響を受けてか、キリスト教においても香典の代わりに御花料・御ミサ料・弔慰金などを贈る慣習が一般的に見られます。
そのお返しとして、返礼品を準備することが通例で、これがキリスト教の香典返しにあたります。
一般的にカトリックは逝去から30日目に行う追悼ミサの後、プロテスタントでは逝去から1か月後、昇天記念日に返礼品をおくります。
神道の弔事マナー
仏教では故人が無事、極楽浄土に旅立てるように葬儀を行いますが、神道では故人が家の守護神になるとされているため、神葬祭を行います。
神道では死は穢れという思想があるため、葬儀の際は穢れが神棚に入らないよう白い紙を貼って守ります。
そのため、神葬祭は神棚封じとも呼ばれます。
神道の場合の香典は御玉串料、御榊料、御霊前などと呼ばれます。
香典返しもそもそも仏教の考えに由来を持つものなので、神道には関係ありませんが、日本国内で行われてきた古くからの慣習ということで、仏教の香典返しと同じように、返礼品を用意します。
ハスの花が描かれていない掛け紙(のし紙)に、双白の水引、もしくは白銀の水引を使う体裁が一般的に見られます。
表書きは「偲び草」となります。
香典返しの挨拶状の書き方について
宗教宗派によってお礼状など色々と違いがあるため、失礼がないように、文例についても理解しておくといいでしょう。
宗教ごとの挨拶状文例
仏教・神道・キリスト教の文例を解説します
仏教の場合
謹啓
亡父○○儀 葬儀につきまして お忙しい中 会葬を賜りましたこと厚く御礼申し上げます
この度 ○○(戒名)四十九日法要を滞りなく営みましたこと ご報告申し上げます
心ばかりとなりますが 供養のしるしの品をお送りいたします
本来お目にかかるべきところ失礼ではございますが まずは略儀ながら書中で御礼ご挨拶申し上げます
謹白
神道の場合
拝啓
過日亡○○ ○○儀 帰幽の節には御懇篤なる御弔意を賜りましたこと 厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして 五十日祭を滞りなく相営みました
つきましてはさっそく御礼申し上げるところですが 失礼ながら粗状をもちまして御礼のご挨拶とさせていただきます
キリスト教の場合
謹啓
時下益々御清祥のことと存じます
過日亡○○ ○○昇天の節 多大なるご弔意をいただき 厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして 本日五十日祭を滞りなく相営みましたことご報告させていただきます
早速 御礼申し上げたいところ 略儀ながら書中をもって御礼のご挨拶とさせていただきます
謹白
香典返しを寄付した場合の文例
近年では香典返しの慣習自体を略す地域もあります。
また、受け取った香典をボランティア団体などへ寄付する喪主もいます。
香典を寄付した場合、香典をくださった方々へ、香典返しを寄付させていただいたことを報告するのが弔意に対するマナーです。
必ずお礼状を準備し、その中に香典の寄付先団体名などを明記しましょう。
それぞれ宗派によって文章のマナーなどに注意しながら書き、最後に
誠に勝手ではございますが 御芳志いただきました一部を ○○へ寄付させていただき ご返礼とさせていただきましたことご報告いたします
故人の遺志を尊重させていただきましたこと ご了承いただきたくお願い申しあげます
香典返しの金額と準備の流れ
香典をいただき、その後、忌明けに香典返しを贈ることが多いのですが、この時、大体いくらくらいの金額のものを用意すればいいのでしょう。
香典返しのおおよその相場
香典返しの金額は、地域差もありますが、だいたい半返しといわれています。
5,000円の香典をいただいたら大体2,000円から2,500円くらいのものを用意します。
葬儀当日に香典返しの品を渡す場合、地域差はありますが、2,000円から2,500円程度の品を用意し、高額な香典をいただいた方には四十九日の忌明け後に、差額分に相当する別の品物やカタログギフトなどを贈るのがおすすめです。
高額な香典をいただいた場合でも、親類などの場合、地域によっては半返しではなく、1/3から1/4くらいの返礼品でよいとされることもあります。
香典返しの品物を郵送などで送る場合は挨拶状(お礼状)を添えますが、一般的にそこへ住所を書き添えることはありません。
郵送する場合、送り状に住所が記載されますが、相手先に住所を伝える必要がある場合は、挨拶状の封筒の裏に書き添えておくといいでしょう。
▼香典返しの相場に関する詳しい解説はこちら
まとめ
香典返しのマナーは宗教による違いや地域による違いがあります。
地域の慣習や古くからのしきたりなど理解しておくことが望まれます。
香典をいただいた方の住所がわからず、お返しできないということがないように、葬儀の際には受付の方に住所の確認を行ってもらうように頼んでおくといいでしょう。
葬儀から香典返しまで失礼がないように、葬儀、香典、香典返しなど、正しい知識を学んでおきましょう。