コンセプトは「一度食べると忘れられなくなる味」
どの商品も大変ご好評とのことですが、特におすすめは?
女将:
『鯛のかぶと煮』です。西明石ホテル1Fの日本料理店「ぜんさく」の名物メニューで、40分かけてじっくりと炊いています。タレがトロッとしていて、一見、濃そうに見えるのですが、食べてみると上品な味わいなんです。ふわっとした白身は適度に脂が乗っていて、タレに漬けながら召し上がっていただくと、なんとも言えない旨味を感じていただけます。私自身、レシピは把握しているのに、なかなか同じようにはできなくて。手前味噌で恐縮ですが、私がこれまで食べたかぶと煮で一番美味しいと思います(笑)。
── お客様からのお声にも「料亭感が出せちゃいます」とありますね。
女将:
はい。「一度食べると忘れられなくなる味」をコンセプトに、何度も何度も試作を重ねてできあがったのが現在の商品です。鯛は厳選した国産マダイだけを使用しています。鯛のお顔って、人間と同じでいろんなサイズがあるんですよ。大きい顔があれば、小顔もあって。それぞれの大きさに応じて包丁を入れる適切な場所があります。そのため、入荷してきた鯛を一匹一匹きちんと見て、特徴をとらえ、職人さんが丁寧に調理していくんです。

一度食べたら忘れられない味が温めるだけで
── ちなみに、熟練の職人さんを擁する「ぜんさく」さんは、どのようなお店ですか?
女将:
「明石の旬を味わう」をコンセプトに、鯛・たこ・穴子など明石のグルメやお酒を40年に渡ってご提供してきた日本料理店です。「明石めで鯛や」のメニューは全てここから誕生しました。1階には掘りごたつ式の個室、2階には100名様までOKの宴会場をご用意し、さまざまなお祝い事などでご利用いただいております。
通販事業を始められたのは最近とのこと。きっかけは何だったのですか?
女将:
2020年からのコロナ禍で、西明石ホテルの宿泊部門と飲食部門が共に大きく売り上げを落としてしまいました。また、お客様がお越しになれない状況が続くなか、「家でも、『ぜんさく』の鯛のかぶと煮を食べたい」というお声をたくさんいただいていたんです。
── それで、その2つの課題をクリアするために「明石めで鯛や」さんを始められたと?
女将:
タイミング的にはそうなりましたが、実はコロナになるもっと前から通販事業の構想は頭の中にありました。ただ、資金の問題もあり、商品化して郵送するという具体的な計画までは立てられなくて。現在のマンパワーと設備で何ができるかを考えたとき、一番最初に可能と判断したのが『鯛のかぶと煮』の商品化だったんです。うちの長年の名物で、全国にファンの方々もいらっしゃる。それで、しっかりとコンセプトを固め、屋号を「明石めで鯛や」に決め、事業計画も立ててオンラインショップをオープンしました。
── 初めての通販事業のすべり出しは順調でしたか?
女将:
けっこう大変でしたね(苦笑)。最初は真空パックではなかったので液もれがあったり。鯛の顔って、けっこうエラが張ってるから、普通の袋だったら破けたりすることもあって。現在の真空パックに行きつくまで、少し時間がかかりました。

独自の製法で40分かけて炊き上げる
── それは大変でしたね。しかし、その真空パックを実現できたからこそ、お店の美味しさをお届けできているのでは?
女将:
本当にそうです。届いたら器に盛りつけて温めるだけで「ぜんさく」伝統の味とおもてなしをお楽しみいただけます。料理が苦手な方、学生さん、単身赴任のお父さん、そうした方々にも同じ美味しさを味わっていただけるよう、日々尽力しております。
「チーム明石めで鯛や」でブランド向上に取り組む
女将さんはメニューの監修もされているそうですね?
女将:
週1回、メニューに関するスタッフ会議を実施しています。私も厨房に入らせていただき、たたき台としてメニューの完成イメージをイラストに描き、スタッフにお伝えするんです。絵は下手なんですけど(笑)。通販事業はスピード感が大事。だから、運用や現場、総合、業者様と、それぞれのグループLINEをフル活用して情報共有しています。私は「仕事のバトン」と言っていて、いかに落とさず次につなげるかが重要です。
── 鯛料理についても細かくリクエストされるのですか?
女将:
こだわりはお伝えしますね。例えば『鯛しゃぶ』も昔からコース料理の一品として出していましたが、薄すぎても厚すぎてもダメなんです。口に入れたときの大きさをすごく大事に考えていまして。鯛のしゃぶしゃぶですから、あまり薄過ぎたらお箸で上げたときにポロッと崩れてしまうし、反対に厚過ぎれば口の中でモサモサしちゃう。それもちょっとイヤだなぁと。では、どんな厚みがよいかというと、私の人差し指の幅(笑)。男性の人差し指ですと厚過ぎるので、そこもかなりこだわっているポイントです。
── それにしても、女将さんは運営会社の専務取締役でもあるのに八面六臂の大活躍ですね。
女将:
いえいえ(笑)。父親の跡を継ぐため西明石ホテルに入社してから約20年が経ち、いろんなことをやらせていただきました。ベッドメイクやお掃除から始まり、バスの運転まで。お客様に喜んでいただきたいというその一心で、さまざまなことをやらせていただきました。今は「チーム明石めで鯛や」という意識で取り組んでおります。
「明石めで鯛や」を始められてから何か変化はありましたか?
女将:
通販事業を本格的にやらせていただくようになり、「鯛を余すことなくご提供する」という取り組みに力を入れております。鯛の身はしゃぶしゃぶに、ほぐし身は鯛そぼろに、切り落としの鯛は漬け(づけ)に、という無駄をなくした食材の利用です。また、「サスティナブル明石」の事業の一環として、色落ちした明石海苔を使って新メニューを開発するという取り組みも進めています。こうした企画を通して、社内でもSDGsへの意識が高まりました。食を通じて一人ひとりができるSDGsをお客様にもご案内できたらと思います。

食べる幸せのお手伝いがテーマの
明石めで鯛や
── 素晴らしいですね。最後に、今後の抱負をお聞かせいただけますか。
女将:
通販事業は始まったばかりなのに、たくさんのお客様にご利用いただいて、本当に嬉しく思っております。今後は「明石めで鯛や」のブランド向上はもちろんのこと、明石の味を全国にお届けして、みなさまの“食べる幸せ”のお手伝いの場を増やしていきたいですね。そして、味だけではなく、みなさまの心に残る商品をお届けできるよう、スタッフ一同頑張らせていただきます。
鯛といえば、おめでたい魚の代表選手。お祝いの席では、よく尾頭(おかしら)付きの姿焼きが出されます。
どうして縁起物とされているのですか?
明石めで鯛やさんの名前を初めて耳にしたとき、「なんちゅうおめでたい屋号なんや!」と、そのド直球ネーミングに衝撃を受けました(笑)。古くから鯛が縁起物となってきた理由のひとつも、まさにここにあります。ズバリ、「目出鯛(めでたい)」の語呂がいいから。納得の理由ですね。
語感以外にもいくつか理由はあります。まず、鯛が長寿の魚だから。マダイの寿命は20年~40年で、他の魚に比べて長生きなので縁起が良いとされてきました。また、紅白模様という鮮やかなルックスも縁起物にふさわしく、見た目が単純に豪華である点も、特別な食卓を華やかに彩ってきた理由といえます。

鯛はご長寿のお祝いにもぴったり
そんなお祝いの席に欠かせない鯛ですから、ご自宅でお祝い事を開くときは、通販で鯛料理を取り寄せタイですね(失礼しました・汗)。お食い初めは料理を赤ちゃんに食べさせるマネをするだけですが、祝い鯛があれば、よりいっそう豪華になります。長寿のお祝いも、主役はお年寄りですから、古くからの縁起物の鯛があれば喜ばれるはず。私も還暦祝いには大好物の鯛料理を食べたいので、アーツセレクションで予約しようと思います! 通販で鯛を取り寄せられるなんて良い時代です(笑)。