A5ランクのお肉は最高においしいお肉だと思われがちですが、実はランクはおいしさで決まるわけではありません。
ランクに惑わされず本当においしいお肉を見つけるために、ランクの決まり方や、三大和牛に負けない注目のブランド牛などを紹介していきます。
目次
牛肉のランクの決め方は?
牛肉のランクは、日本食肉格付協会が決定しています。
A5のように「アルファベット+数字」が組み合わさっていますが、アルファベットは「歩留(ぶどまり)等級」、数字は「肉質等級」を示しています。
つまり、2つの軸からランクが決められているのです。
それぞれの等級についてはのちほど詳しく解説しますが、簡単にまとめると次の通りです。
- 歩留等級
・その牛から商品となるお肉がどれくらい取れるかを示している
・A~Cまであり、Aが最高ランク - 肉質等級
・肉の色沢、肉の締まりときめ、脂肪の色沢と質、脂肪の交雑から評価される
・1~5まであり、5が最高ランク
つまり、A5ランクのお肉は、「牛肉として食べられる部分が多く、霜降りで色沢が良いお肉」ということになります。
お肉のおいしさでランクが決まっているわけではないことに注意が必要です。
牛肉のランクを決める:歩留等級とは?
歩留とは、「1頭の牛から取れる、商品として食べられるお肉の量」を指します。
牛を解体して牛肉を取り出すとき、まずは内臓や皮などを取り除き、「枝肉」にします。その後、さらに骨や余分な脂肪やくず肉などを取り除いて、部位ごとの「部分肉」にします。
このとき、枝肉の重量に対してどれくらいの部分肉がとれるのかによって、A~Cの歩留等級が決まるのです。
歩留等級はあくまでも牛肉の生産や取引に関するランク付けです。一般消費者がおいしいお肉を選ぶためには、あまり歩留等級を気にしなくても大丈夫ですよ。
歩留等級のランクを決める基準は?
歩留等級を決めるとき、まずは「歩留基準値」(枝肉の重量にする部分肉の重量)が計算されます。
歩留基準値=67.37+{0.130×胸最長筋面積(cm²)}+{0.667×「ばら」の厚さ(cm)}−{0.025×冷屠体重量(半丸枝肉kg)}−{0.896×皮下脂肪の厚さ(cm)}
そして、歩留基準値がわかったら、次のようにランクが決められます。
A | 歩留基準値が72以上で標準より良い |
B | 歩留基準値が69~72未満で標準程度 |
C | 歩留基準値が69未満で標準以下 |
牛肉のランクを決める:肉質等級とは?
肉質等級とは、文字通りお肉の質を評価した等級のことで、次の4つの項目から決められます。
- 脂肪交雑
- 肉の色沢
- 肉の締まり及びきめ
- 脂肪の色沢と質
それぞれの項目に対して5を最高とする5段階評価がおこなわれ、その中でもっとも低い評価がそのお肉の肉質等級となるのです。
たとえば4項目のうち3項目が5、1項目が4とされた場合、肉質等級は4級となります。
脂肪交雑
脂肪交雑とは、お肉の「霜降り度合い」のことです。
霜降りの度合い(脂肪交雑基準)は、ビーフ・マーブリング・スタンダード(B.M.S)と呼ばれる基準で、No.12を最高として12段階評価されます。
そしてB.M.Sによる評価を5等級に区分したものが、脂肪交雑の等級とされます。
等級 | B.M.S |
5等級:霜降りがかなり多い | No.8~12 |
4等級:霜降りがやや多い | No.5~7 |
3等級:霜降りが標準程度ある | No.3~4 |
2等級:霜降りがやや少ない | No.2 |
1等級:霜降りがほとんどない | No.1 |
肉の色沢
肉の色沢とは、お肉の赤身の色や光沢を評価したものです。
肉の色沢を評価する基準(牛肉色基準)として、ビーフ・カラー・スタンダード(B.C.S)というものがあります。
B.C.Sではお肉の色が淡い方から順にNo.1~7に分けられ、淡すぎず濃すぎないNo.4がもっとも良いとされます。
肉の色沢の等級は、このB.C.Sと肉の光沢の評価に基づいて次のように決められているのです。
等級 | B.C.S | 肉の光沢 |
5等級 | No.3~5 | かなり良い |
4等級 | No.2~6 | やや良い |
3等級 | No.1~6 | 標準 |
2等級 | No.1~7 | 標準に準ずる |
1等級 | 上記以外 | 上記以外 |
肉の締まり及びきめ
肉の締まり及びきめは、お肉の食感に関わる要素です。
- 締まり
締まりが良いほどしっかりとした肉質で弾力がある - きめ
筋繊維の束の細さから評価され、細いほどきめが細かく肉質が柔らかい
お肉の締まりやきめは肉眼で判断され、次のように等級付けされます。
等級 | 締まり | きめ |
5等級 | かなり良い | かなり細かい |
4等級 | やや良い | やや細かい |
3等級 | 標準 | 標準 |
2等級 | 標準に準ずる | 標準に準ずる |
1等級 | 劣る | 劣る |
脂肪の色沢と質
脂肪の色沢とは、お肉の味を引き立てる脂肪の色と光沢のことです。
脂肪の色沢・質の等級は、「脂肪の色」と「脂肪の光沢と質」の2つの要素を組み合わせて決められます。
- 脂肪の色
・ビーフ・ファット・スタンダード(B.F.S)という基準により7段階評価される
・白い方が良いとされ、No.1に近いほど白い - 脂肪の光沢と質
・目視で5段階評価される
等級 | 色 | 光沢と質 |
5等級 | No.1~4 | かなり良い |
4等級 | No.1~5 | やや良い |
3等級 | No.1~6 | 標準 |
2等級 | No.1~7 | 標準に準ずる |
1等級 | 上記以外 | 上記以外 |
海外と日本の牛肉ランクはどう違うの?
A5ランクのように「アルファベット+数字」でお肉をランク付けするのは、日本独自の方法です。海外では別の方法でお肉の格付けがされています。
たとえばアメリカン・ビーフは、牛の種類、性別、成熟度、脂肪交雑という4つの評価基準から、8つのランクに分けられています。
その中で日本に流通しているのは、プライム・チョイス・セレクトという上位3ランクのお肉です。
- プライム
・高級レストランでも扱われる、非常に優れた肉質のお肉
・アメリカン・ビーフから少ししか取れない高級品 - チョイス
・プライムよりも手ごろな価格で、バランスの取れた肉質のお肉
・日本で一番流通している - セレクト
・チョイスよりもさらに手ごろな価格
・赤身が多く、低脂肪・低カロリー
牛肉のランクに迷ったら専門店で買うのがよい理由
お肉を選ぶとき、肉質等級は霜の量や食感を判断する目安になります。しかし、お肉のおいしさは血統・月齢・飼料などにも大きく左右されます。
- 血統
お肉の甘みや口当たりに影響するオレイン酸の量を左右する - 月齢
お肉の旨味を際立たせる脂の融点を左右する - 飼料
放牧され牧草をメインに食べて育った牧草牛は、鉄・タンパク質・オメガ3脂肪酸などの栄養価が豊富
お肉のランク付けには、上の3要素は考慮されていません。
素人がこれらの要素を踏まえておいしいお肉を見分けるのは難しいもの。だからこそ、本当においしいお肉を買いたいときは、取引先の畜産農家にまでこだわっている専門店を利用すると安心です。
贈り物のギフト対応をしてくれる専門店もあるので、大切な人に自信を持っておいしいお肉を贈りたい場合はとくにおすすめです。
牛肉のランクにこだわるならブランド牛はいかが?
お肉のランクの決まり方を見てみると、おいしさよりもほぼ見た目でランクが付けられていることがわかりますよね。
お肉を品質面で判断する場合なら、ランク付けは参考になります。しかし、おいしさにもこだわってお肉を選ぶなら、牛のブランドにもこだわることがおすすめです。
ブランド牛とは、和牛の中でも各地域ブランドが定める厳しい基準を満たしたお肉です。基準はブランドによって違いますが、各ブランドのこだわりや工夫が詰まっているため、味も期待できるのです。
なお、「和牛」とは日本の在来種で、品質の良い特定の品種を指します。日本国内で飼育・加工したお肉を広く指す「国産牛」とは別ものなので注意しましょう。
牛肉のランクがすべてじゃない! ブランド牛3選
ブランド牛と言えば神戸牛・松坂牛・近江牛の三大和牛、あるいは米沢牛も加えた日本四大和牛が有名。しかし、高級なのでなかなか手が出にくいものです。
一方で、実はリーズナブルなブランド牛の中にも、高級ブランド牛に近い味わいのお肉や、特定の調理法に適したブランド牛があることをご存じでしょうか?
比較的手ごろな価格なら、ちょっとしたお祝いや贈り物、自分へのご褒美にも選びやすいですよね。食べ比べもしたくなるような、個性豊かな隠れた人気ブランド牛をご紹介します。https://gift-shop.jp/gs/thumbnail/AG_MMT48/big/ag_mmt48_1.jpg
三田和牛
三田和牛は、神戸牛や但馬牛などの高級・高品質なブランド牛とほとんど同じ肉質でありながら、リーズナブルな価格で流通できるよう開発された銘柄です。
三田和牛は寒暖差の激しい環境の中、三田市の良質な水や草・飼料で育てられた牛です。
食肉としては次のような特徴があります。
- 細かく柔らかく、引き締まった肉質
- 美しく細かい霜降りが入っている
- 脂肪の質が良く融点が低いため、繊細でコクのある味わい
三田和牛は、素材を生かした味わいをぜひ楽しんでいただきたいブランド牛。
大切な人との記念日にステーキにして食べたり、お世話になった人への贈り物にしたりするのにおすすめですよ。
但馬牛
但馬牛は良質な筋繊維を持つ赤身と、その良質な赤身にとろけるような甘さを加えるサシが魅力のお肉です。
但馬牛は肉質の良い強い遺伝子を守ってきた純粋な日本由来の牛で、日本三大和牛をはじめとする和牛ブランドのルーツとなっています。
たとえば神戸牛は、但馬牛の中でもさらに厳選された牛肉のことなのです。しかし、神戸牛に選ばれず但馬牛として流通しているお肉も、肉質は神戸牛に近く、しかも神戸牛に比べると価格がリーズナブルです。
但馬牛は赤身とサシの上質さを堪能できる調理法がおすすめ。ステーキやすき焼きにして食べるとおいしいですよ。
豊西牛
豊西牛は、脂身が少なくヘルシーな味わいが特徴の、北海道の牛です。
豊西牛のポイントは、こだわり飼料です。
北海道産の原料を発酵処理したものを飼料に混ぜて牛に与えることで、お肉の旨味と多汁性が増しています。これにより、霜が少なく引き締まった肉質ながら、噛むほどにおいしさが広がるジューシーさが生まれるのです。
豊西牛は霜降りが苦手な人や赤身のおいしさを堪能したい人にぴったり。
ステーキはもちろん、ローストビーフやハンバーグにして食べるのもおすすめです。
まとめ
牛肉のランクは、歩留率や目視で判断した肉質の良さを表す基準です。
高いランクが必ずしも味のおいしさに直結しているわけではないことに驚いた方も多いのではないでしょうか。
ランク付けにこだわらなくても、実はおいしいお肉がたくさんあるのです。
高級なブランド牛を一度買うのも素敵ですが、リーズナブルながらおいしいお肉を知って、食べ比べをするのも楽しい体験です。
さまざまなランクや産地が異なるブランドの牛肉を食べ比べて、自分好みのお肉探しをしてみませんか?