「和牛」と「国産牛」の違いをご存じですか?
共に「日本産の牛」とイメージされる言葉ですが、実は両者には大きな違いがあるのです。
和牛と国産牛の違いから、「日本三大和牛」と呼ばれる品種のルーツまで、詳しく解説します。
目次
「和牛」と「国産牛」「輸入牛」の違いを分かりやすく解説!
牛肉を購入するときやレストランなどで、「和牛」「国産牛」の文字をよく見かけるでしょう。
これらには明確な違いがあり、それぞれ定義づけられています。
「和牛」は牛の品種による区分ですが、「国産牛」「輸入牛」は牛の飼育地・牛肉の加工生産地による区分なのです。
4品種のみが名乗ることができる「和牛」
「和牛」は、国産牛の中でも、厳格な規定に当てはまる以下の4品種のみが名乗れる呼称です。
- 黒毛和種
- 褐毛和種
- 日本短角種
- 無角和種
和牛とは、食肉用として改良が重ねられてきた上記4つの在来種の総称であり、なおかつ日本国内で生まれ育った牛を指す用語です。
ちなみに、一般に流通している牛肉で和牛と表記されているもののうち、90%以上を黒毛和牛が占めます。
和牛はすべての個体が血統を証明するトレーサビリティ(追跡可能性)制度のもとにあり、厳しく品質管理されています。
和牛はいまや日本国内だけでなく、海外でも最高品質の牛肉として人気を集めるようになってきました。
ただし、海外で「Wagyu」とローマ字表記され流通している牛肉は、実はオーストラリア産やアメリカ産など海外生まれのものです。
海外で和牛品種の飼育が始まったのが1990年ごろ。その後、オーストラリアが日本よりも先に「Wagyu」の名を商標登録したことで、海外産の「Wagyu」ブランドが誕生することになったのです。
海外旅行をしたときにWagyuを見かけても、日本産の牛肉ではないのでご注意を。
国内での肥育期間が一定以上あるものが「国産牛」
「国産牛」とは、牛の品種や産まれた場所に関わらず、日本国内で一定の肥育期間がある牛のことを指します。
たとえばアンガス種やヘレフォード種などの外国種でも、日本国内で3カ月以上肥育された、もしくは全肥育期間のうち日本国内で飼育された期間が最も長い牛なら、すべて「国産牛」と名乗れるわけです。
また、日本で育てていない牛であっても、日本に輸入してすぐ国内で食肉加工された場合は「(日本で産出された)国産牛」とされます。
国産牛という名前を見ただけだと「日本で生まれ育った牛」というイメージを持たれがち。
しかし、実際には「海外数カ国を渡り歩いた末、最後の6カ月間だけ日本で育てられた牛」のようなケースもあり得なくはないのです。
外国で生まれ、外国で生産された加工肉が「輸入牛」
一方、外国で飼育され、現地で食肉加工した後、日本に輸入された牛肉を「輸入牛」と呼びます。
現在、日本で消費される牛肉のおよそ7割が輸入牛です。最も割合が高いのがオーストラリア、次いでアメリカとなっています。
輸入牛は、国産の牛肉と比較して赤身が多く、脂肪分が少なめであることが特徴です。
参考▶その4:お肉の自給率:農林水産省
参考▶農林水産物輸出入統計 農林水産物品目別実績(輸入) 貿易統計(輸入) 1 農産物(畜産品) 牛肉 年次 2021年
希少価値の高い「和牛」の4品種。それぞれの違いを確認
純国産の牛肉である「和牛」とは、
- 黒毛和種
- 褐毛和種
- 日本短角種
- 無角和種
上記4品種のことを指します。
4品種それぞれの特徴をみていきましょう。
黒毛和種
黒毛和牛は、日本で飼育している和牛の90%以上を占めています。
研究開始から100年以上、国内在来種と海外のブラウンスイス種やシンメンタール種を交配させ、品種改良を重ねて開発された品種です。
黒毛和牛は一般的な肉牛に比べて小柄ながら、赤身にまでサシ(霜降り)が入っており、優れた肉質と脂肪の豊かな甘みが特徴。
日本における最高品質の牛肉として扱われています。
【黒毛和種の代表的な銘柄牛】
- 神戸ビーフ(兵庫県)
- 松阪牛(三重県)
- 近江牛(滋賀県)
- 米沢牛(山形県)
褐毛和種(あかうし)
褐色の体毛を持つことから別名「あかうし」とも呼ばれる褐毛和牛。肉質は赤身が多く、脂肪分が少ないのが特徴です。
明治中期から大正にかけて熊本・高知で飼育されていた在来種に、外国種を交配させ品種改良したのが誕生のきっかけといわれています。
褐毛和牛は朝鮮牛と交配させた「高知系」、デボン種・シンメンタール種と交配させた「熊本系」の2系統に区分され、それぞれが品種改良を継続しました。
その後、1944年に高知系・熊本系を一括して「褐毛和牛」と名付け、日本独自の品種として認定されることになりました。
【褐毛和種の代表的な銘柄牛】
- 土佐牛(高知県)
- 肥後牛(熊本県)
日本短角種
健康志向の高まりにより赤身肉がブームとなっている昨今、注目を集めているのが「日本短角種」です。
低脂肪の赤身肉で、うまみ成分であるアミノ酸の含有量が多いのが特徴です。
日本在来種の南部牛に、外国種のショートホーンなどを交配させることで生まれました。
和牛品種に登録されたのは1957年で、4品種の中では最も新しい種です。
放牧に適した品種で、東北地方(岩手・青森・秋田)および北海道が主な生産地となっています。
【日本短角種の代表的な銘柄牛】
- 八甲田牛(青森県)
- 十和田牛(青森県)
- いわて短角牛(岩手県)
無角和種
「無角和種」は、山口県のみで生産されている、希少性の高い和牛です。
大正時代、山口県に欧米の肉用牛で高い人気を誇るアバディーンアンガス種が輸入され、黒毛和牛種と交配させることで誕生しました。
名前のとおり角を持たない牛で、毛色は黒毛和種よりも深みのある黒色です。
赤身の多い肉質で、低カロリー。肉本来のうまみを味わえる品種です。
【無角和種の代表的な銘柄牛】
- 無角和牛(山口県)
日本三大和牛の素(もと)になった但馬牛
日本三大和牛として知られる「松阪牛」「神戸牛」「近江牛」(もしくは米沢牛)。これらはすべて、黒毛和牛に分類される品種です。
では、そもそも黒毛和牛の素牛(もとうし)は「但馬牛」であることをご存じでしょうか?
「素牛」とは、生後半年~1年の子牛のこと。繁殖牛や肉用牛として肥育される前の牛のことをいいます。
終戦後、純血種の黒毛和牛は絶滅の危機に瀕していました。その頃、優れた遺伝子を持つ但馬牛が見つかり、その素牛(子牛)たちが日本各地の肥育農家に買われていきました。
素牛はそれぞれの土地で飼育されて日本三大和牛として育ち、子孫が繁栄していったのです。
但馬牛(たじまうし)
傾斜の急な渓谷が多い兵庫県但馬の地で、飼育されてきた但馬牛。
但馬牛の肉質は、筋肉の筋繊維が細かいため良質なサシが入りやすく、まろやかでとろけるような食感を生み出しています。
但馬牛の歴史は江戸時代にまでさかのぼり、現在に至るまで純血の血統が維持され続けている、由緒正しい肉牛です。
2009年には但馬牛を素牛とする神戸牛が、アメリカをはじめとする海外メディアにより世界で最も高価な食べ物として取り上げられました。
神戸牛が世界的に人気を高めていることに伴い、その素牛である但馬牛にも注目が集まっています。
リーズナブルに高品質な和牛を楽しむなら「三田和牛(さんだわぎゅう)」
「和牛を食べてみたいけれど、値段が気になる」という人に向けて、注目のブランド牛「三田和牛」をご紹介します。
三田和牛は、神戸牛や但馬牛にも負けない品質の牛肉を、リーズナブルな価格で流通させたいという思いで開発された品種です。
三田和牛として認定されるのは、三田肉流通の振興協議会の指定畜産農家で、生後28カ月以上の期間をかけて肥育された牛のみ。食肉加工も三田市内で行われます。
三田市は上質な水と空気、肥沃(ひよく)な土壌に恵まれ、牛の飼育に適した環境。さらに、寒暖差の激しい気候が牛の肉を引き締め、高品質の肉を生み出すといわれています。
恵まれた自然環境と、厳格な飼育管理によって生産される三田和牛は、美しく細かいサシを持ち、手でさわるだけで脂肪が溶けるほどの極上品質に育ちます。
コクのある味わいととろけるような食感が注目され、新しいブランド牛として三田和牛の認知度は高まってきました。
高品質な和牛をお手頃な価格で手に入れたい人は、三田和牛を試してみてはいかがでしょうか。
「和牛」と「国産牛」の違いを知って純日本の牛肉を味わおう
「和牛」とは牛の品種による区分で、「黒毛和種」「褐毛和種」「日本短角種」「無角和種」の4品種のみが名乗ることのできる呼称です。
一方、「国産牛」は品種や出生地に関係なく、一定期間日本で飼育・食肉加工された牛全般を指す言葉です。
ひと口に「和牛」といっても品種によって味わいは異なります。
また、同じ品種の牛肉であっても、畜産農家の育て方・エサの質・仕入業者の目利き力などによって、お肉のおいしさは大きく変わります。
本当においしい牛肉を楽しむには、大量に仕入れを行うスーパーよりも、プロが一点一点吟味して仕入れを行う専門店からの購入がおすすめです。
今回お伝えした情報を参考に、純日本産の牛肉の旨味を心ゆくまで堪能してくださいね。