「スタウトビールという名前はよく聞くけれど、どんなビールなの?」と気になっている人もいるでしょう。
スタウトとは、深いコクと香りで世界中の人気を集めている黒ビールのスタイル(種類)です。
黒ビールの魅力と歴史、ぜひ試してほしいおすすめの品を紹介します。
目次
「スタウト」ってどんなビール? クラフトビールとは?
「クラフトビール」とは、小規模醸造家が原料や製法にこだわってつくるビールのこと。
各国の醸造家が開発に取り組んできた種類(ビアスタイル)の中に、「スタウト」と呼ばれるものがあります。
黒い色で奥深い魅力を持つスタウトの特徴をくわしく解説します。
焦がした麦芽でつくる真っ黒なビール
「スタウト」は、アイルランドの「ギネスビール」の創業者、アーサー・ギネス氏がつくったビアスタイル。真っ黒な見た目をした、いわゆる「黒ビール」の一つ。
深い黒色になるまでじっくりとローストした麦芽を原材料に使っていることが、黒さの理由です。
スタウト(stout)には「強い、確固とした」という意味があります。
チョコレートやナッツ、コーヒーに例えられる特有の香りと、ロースト麦芽が生み出す深いコクと苦味が特徴。名前の通りどっしりとした存在感のあるビールといえるでしょう。
スタウトは「エールビール」の一種
世界のビールをおおまかに分類すると、キレ・喉ごしを楽しむ「ラガービール」と、多様な香り・味わいが魅力の「エールビール」の二種に分けられます。
「スタウト」は、エールビールに分類されるビールです。
エールビールは大量生産には向いていませんが、ビールごとの個性が際立っているのが特徴。
エールビールの一種である「スタウト」は、数少ない黒ビールの一つでもあります。深い味わいを存分に堪能しながら、ロースト麦芽のコクを味わえるのが特徴です。
力強い麦の旨味が特徴。【スタウト】のおすすめ
焦がし麦芽が生み出す、濃厚なコク・旨味が特徴のスタウトビール。
ここからは国内クラフトビールメーカーがこだわりを持って醸造するスタウトビールのおすすめ銘柄情報を紹介します。
京都醸造「黒潮の如く」
職人のまち・京都にある京都醸造は、ウェールズ・アメリカ・カナダ出身の創業者3人で始めたブルワリー。ここで作られるスタウトが「黒潮の如く」です。
黒色麦芽のしっかりとしたロースト感と、ベルジャン酵母で発酵させることにより生まれるフルーティーな香りが、絶妙なバランスで調和した銘柄です。
深いコクがありつつもさっぱりとした味わいで、穏やかな苦味の中にココアやチョコレートのような甘い後味が残ります。
香ばしさとフルーティーさが、ほどよく溶け合ったユニークなスタウトです。
網走ビール「監極の黒」
北海道網走の醸造所(ブルワリー)網走ビールがつくる「監極の黒」。
網走にある監獄をイメージしてつくったというスタウトは「黒を極めると、こうなる。」のキャッチコピー通り、どっしりとした味わい。
厳選した5種類の麦芽を使った黒ビールは深いコクがありながらも、口当たりはまろやかで飲みやすいため、黒ビールデビューにおすすめの銘柄です。
ベアードブルーイング「島国スタウト」
静岡県沼津市にてクラフトビールづくりを行うベアードブルーイングの「島国スタウト」。
深く焙煎したモルトを使っているため、ドライで飲みやすい口当たりながらも、強い風味を持つ「アイリッシュドライスタウト」に分類される黒ビールです。
芳醇な香りやコクを持ちながら、アルコール度数は5.0%と控えめ。毎日でも飲めるさっぱりとした味わいに仕上がっています。
松江ビアへるん「縁結麦酒スタウト」
島根県松江市のブルワリー、松江地ビール ビアへるんが届ける「縁結麦酒スタウト」。
原材料に乳糖を追加することにより、まろやかな口当たりとやわらかい甘味が感じられるのが特徴。「ミルクスタウト」という種類のスタウトビールです。
麦のロースト香はしっかりと持ちつつも、飲み口はまろやかでほのかな甘さを後味に感じられます。
「黒ビールに興味があるけど、苦すぎるのはちょっと…」という人にこそ、おすすめしたい銘柄です。
いわて蔵ビール「黒蔵」
岩手の酒蔵が営むブルワリー、いわて蔵ビールの『黒蔵』は、水にこだわり、無濾過・無殺菌の新鮮な味わいが特徴。
黒砂糖やコーヒーを思わせるようなビターな香りと、濃厚でしっかりとした苦味があります。
ロースト感や苦味の余韻が長く残るのが特徴。アルコール度数は7.0%と高めなので、ゴクゴク飲むというよりは、グラスに注いでゆっくりと楽しんでもらいたい銘柄です。
飲み比べてみたい【ポーター】のおすすめ
「ポーター」は、黒ビールのスタイルの一つで「スタウト」の起源ともいえるビールです。
元々は1720年ごろ、イギリス(ロンドン)のパブで流行していたビールで、これを真似ようと、各地のブルワリーが試行錯誤を重ねていました。
しかし、水質の差や、原材料の麦芽が高価だったといった要因が重なり、製品化にはなかなか至りませんでした。そんな中、アイルランドのギネス社がローストした大麦を使って生み出したのが「スタウト」なのです。
ポーターは、チョコレートモルトやカラメルモルトを原材料に用いています。スタウトと比べるとロースト香は抑えめで、甘い風味が強いのが特徴です。
ここからは、ぜひスタウトと飲み比べて違いを楽しんでほしい「ポーター」のおすすめ銘柄を紹介します。
ベアードブルーイング「黒船ポーター」
静岡県沼津市ベアードブルーイングの「黒船ポーター」。
チョコレートやバニラを思わせる甘い香りが豊かで、まろやかかつすっきりとした口当たりです。
口に含むとコーヒーのような苦味を最初に感じ、後から甘味と酸味がやってきます。
深い苦味ですが、甘味と酸味で調和されるため全体としてはすっきりとした印象のポーターです。
ヤッホーブルーイング「東京ブラック」
長野県軽井沢町のビールメーカー・ヤッホーブルーイングの「東京ブラック」。
コンビニ等でも販売されているクラフトビールなので、ヤッホーブルーイングの名前を知っている方は多いのではないでしょうか。
本場イギリスのポーターの味を、国内で新鮮なまま楽しめるようにと開発された「東京ブラック」は、グラスの向こう側が見えないくらい深い黒色をしています。
クリーミーな泡としっかりとしたコク、ココアのようなロースト香を感じながらちびちび飲んで楽しむのがおすすめです。
【スタウト】【ポーター】をもっとおいしく飲むためのコツ
「スタウト」「ポーター」は、飲むときの温度や、合わせたい食べ物に特徴があります。
「スタウト」と「ポーター」をよりおいしく飲むポイントを紹介します。
飲みごろ温度は「ぬるめ」がベター
「スタウト」と「ポーター」の飲みごろ温度は「ぬるめ」がおすすめです。
一般的にビールと聞くと「キンキンに冷やして、グビグビ飲む」というイメージがあるかもしれません。
しかし、冷えた状態では黒ビールの魅力の一つである芳醇(ほうじゅん)な香りを感じにくくなってしまいます。
「スタウト」「ポーター」を楽しむ前には、冷蔵庫から出して少し常温で置いておき、「ぬるめ」の温度にまで戻すのがベターです。
【飲みごろ温度の目安】
- スタウト…15度前後
- ポーター…11度前後
グラスに注いで香りを楽しみつつ、ゆっくりじっくりと味わいながら少しずつ頂くのがおすすめの飲み方です。
デザートと一緒に楽しむのがツウ
「スタウト」「ポーター」はデザートとペアリング(=相性のよいお酒と食事を組み合わせること)して楽しめるビールです。
黒ビールのロースト香と深いコク、ほのかな甘味のある後味は、チョコレートやバニラアイスなどのスイーツと組み合わせればいっそう引き立ちます。
スイーツとビールは一見すると意外な組み合わせですが、黒ビールの特徴と魅力を堪能できるツウな飲み方といえるでしょう。
ペアリングは色が似ているもの・味わいが似ているものを組み合わせるのが基本。
たとえば濃い色のビールには濃い色の食べ物を、味わいが濃厚なビールには同じく濃厚な食べ物を合わせるとよいでしょう。
【スタウト・ポーターのおすすめペアリング】
- 焼き肉
- すき焼き
- 牡蠣料理
- 燻製たまご
- チーズ
- ナッツ
濃い味の料理、香ばしい料理がよく合います。
ペアリングに慣れてきたら、あえて薄い色・味の料理と組み合わせると意外な発見があることも。
いろいろな料理を試して、あなたのベストペアリングを見つけてみてください。
注ぎ方で異なる味わい「ハーフ&ハーフ」アレンジ
「スタウト」「ポーター」と淡色のビールを混ぜて飲む「ハーフ&ハーフ」も黒ビールの楽しみ方の一つです。
黒ビールの強いコク・香りと、淡色ビールの爽やかさが調和することで、飲みやすくも味わい深いビールになります。
「スタウト」「ポーター」単体だと「苦味が強すぎるかも」という人にも安心しておすすめできる飲み方です。
「ハーフ&ハーフ」は注ぎ方によっても味わいが異なります。
黒ビールを先に注ぐと泡は黒くなり、黒ビールの甘い香りを感じる仕上がり(=ブラックトップ)になります。
一方、淡色ビールを先に注ぐと泡は白くなり、スキッとした爽やかな香りを感じる仕上がり(=ホワイトトップ)にできます。
「ハーフ&ハーフ」の名前の通り、黒ビールと淡色ビールの比率は1:1が基本ですが、好みによって比率を変えてもまた違った味わいを楽しめるでしょう。
飲み比べやペアリングを楽しんでほしい「スタウトビール」
「スタウト」は「ポーター」に改良を加えて生まれた黒ビールのスタイルで、焙煎した麦の豊かな香りと、深いコクが特徴です。
一般的なゴクゴク飲むビールとは違い、ぬるめの温度でゆったりと少しずつ味わうのがおすすめの飲み方。
ブルワリーごとの「スタウト」を飲み比べたり、「ポーター」との違いを楽しんだり、お気に入りの食べ物と組み合わせて自分ならではのペアリングを見つける楽しみもあります。
ここで紹介したことを参考に、あなたならではの「スタウトビール」の楽しみ方に出会ってくださいね。