原料や製法、飲み口の違いによって、さまざまな種類がある日本酒。せっかく飲むなら、よりおいしい飲み方で味わいたいですよね。
料理とお酒の選び方から飲むときの温度など日本酒初心者でも、もっとおいしく楽しむための飲み方を紹介します。
目次
おいしい飲み方1.料理に合わせて日本酒の種類を選ぼう
日本酒のおいしい飲み方1つ目は、料理に合わせて選ぶ方法です。
日本酒は、製法や醸造アルコール使用の有無などによって、大吟醸酒や吟醸酒など8種類に分類されます。
これらはどれも香りや味わいに違いがありますが、日本酒を飲み慣れていないとどれを選んでよいのか悩んでしまうかもしれません。
まずは気軽に日本酒を楽しむために、食べたい料理に合わせて日本酒を選んでみましょう。
料理と日本酒のマリアージュを意識しよう
料理と日本酒の組み合わせを意識するときに重要なのが、日本酒の「香り」と「味わい」です。
香りや味わいを決める要因の1つに、原料となる米の「精米歩合」があります。日本酒は製造過程で米を削るのですが、残った米の割合を精米歩合として数字で表します。
精米歩合とは、日本酒の製造過程でどの程度お米を削り取ったかの割合を表す数字です。
例えば、精米歩合40%と記載されている日本酒は、お米全体の60%を削り取って原料に使用しているということです。
お米の表面にあるたんぱく質やでんぷんなどの栄養素は、日本酒にとっては雑味となってしまいます。そのため、削る量が多い、すなわち精米歩合が低いものほど、雑味の少ない日本酒となります。
≪精米歩合における日本酒の分類≫
- 大吟醸酒・純米大吟醸酒 50%以下
- 吟醸酒・純米吟醸酒 60%以下
- 特別本醸造酒・特別純米酒 60%以下
- 本醸造酒・純米酒 70%以下
精米歩合が高い日本酒は、香りが高くすっきりとした味わいです。逆に、精米歩合が低い日本酒は、香りは抑えめでコクのある味わいになっています。
料理に合った香りや味わいの日本酒を選ぶことで、料理と日本酒のベストな組み合わせ「マリアージュ」を楽しむことができるでしょう。
お刺身・サラダに「薫酒(くんしゅ)」
日本酒は、さらに香りの強さ・味わい深さの度合によって大きく4つのタイプに分けられます。
「薫酒(くんしゅ)」は、香りが強く味わいが爽やかなタイプの日本酒です。精米歩合が低い「大吟醸酒」や「吟醸酒」がこのタイプになります。
果実のような華やかでフルーティーな香りが特徴で、苦みやうま味が少なく軽い味わいが特徴。料理の味を邪魔しないので、素材を味わうお刺身・サラダ・フルーツによく合います。このほか、味あっさりとした味付けの魚の塩焼きや蒸し鶏などの料理にぴったりです。
豆腐・チーズに「爽酒(そうしゅ)」
「爽酒(そうしゅ)」は、控えめな香りとフレッシュな味わいを楽しめる日本酒で、4つのタイプの中で一番飲み口がすっきりと感じられるお酒です。「生酒」「本醸造酒」がこのタイプになります。
果実味を感じる控えめな香りとお酒本来のほんのりとした苦みが、爽やかな味わいを引き立ててくれます。
主張が強くない日本酒のため、幅広くどんな料理ともよく合います。繊細な味の豆腐やフレッシュチーズ、香りがよい蕎麦などと相性が抜群です。
煮魚・すき焼きに「醇酒(じゅんしゅ)」
「醇酒(じゅんしゅ)」は、ふくよかな香りとコクのある味わいが特徴の日本酒です。
米本来が持つまろやかでしっかりとしたうま味と、樹木や石といった芳醇な香りを楽しむことができます。「純米酒」がこのタイプになります。
米の味わいに近いため、「白米に合うおかず」といわれるようなしっかりとした味付けの料理が最適です。
煮魚やすき焼き、バターを使った洋食にもぴったり。4つのタイプの中でも特に料理に合う日本酒です。
角煮・うなぎの蒲焼に「熟酒(じゅくしゅ)」
「熟酒(じゅくしゅ)」は、熟成された重厚な香りと味わいが特徴の日本酒です。長期間熟成された「熟成酒」や「古酒」がこのタイプになります。
ドライフルーツやスパイスを感じさせる複雑な香りで、甘みと酸味のバランスもよく、とろりとした味わいです。
角煮やうなぎの蒲焼などの濃い甘みを強く感じる料理と相性が抜群で、食事と一緒に少しずつ飲む飲み方が合っています。スパイスの効いた料理や、ラムやマトンなどのクセのある肉料理にもよく合います。
好みで選ぶ「甘口」「辛口」
ここまで、香りと味わいで日本酒を紹介しましたが、日本酒は「甘口」と「辛口」という点でも分けることができます。
甘口か辛口かは、日本酒の発酵過程で生まれる「糖分の割合」によって決まります。日本酒に含まれる「糖分が多いもの=甘口」「糖分が少ないもの=辛口」になるのです。
ただし、糖分とはいっても砂糖のような甘さがあるわけではありません。日本酒の原料である米に含まれている糖は「多糖類」と呼ばれ、糖そのものに甘みは無いのです。
そのため、「甘口=濃厚で深い味わい」「辛口=すっきり淡麗な味わい」と覚えておくとよいでしょう。
なお、日本酒に含まれる糖分の量は「日本酒度」としてラベルに記載されています。
水に対して糖分の比重が大きい・小さいで表されるため「-(マイナス)=甘口」「+(プラス)=辛口」になります。
また、「甘口」「辛口」かの判断は、大吟醸酒などの酒の分類や、薫酒や爽酒といったタイプで行うことはできません。
料理と組み合わせる場合は、甘い味付けの料理には甘口の日本酒を、塩味が強い料理には辛口の日本酒がよく合います。自分の好みも踏まえて、甘口・辛口を選ぶとよいでしょう。
おいしい飲み方2.日本酒の温度にこだわる
日本酒のおいしい飲み方2つ目は、温度にこだわる飲み方です。
日本酒は、常温の20℃程度でもおいしく味わえますが、冷やしたり温めたりすることで違った味わいを楽しむことができます。
温度で異なる3つの飲み方を紹介します。
冷やした飲み方「冷酒」
冷蔵庫などで5〜15℃程度に冷やした日本酒を「冷酒」と呼びます。
冷やすことで香りが引き立つため、大吟醸酒や吟醸酒などの華やかな香りの強い日本酒におすすめの飲み方です。
また、雑味も抑えられるため、すっきりと軽快なのど越しを楽しむことができます。
≪冷酒の温度による名称≫
5℃ :雪冷え
10℃ :花冷え
15℃ :涼冷え
常温で飲む「冷や」
「冷や」は、その名前から冷やした飲み方と間違われやすいですが、20℃程度の常温で日本酒を楽しむ飲み方です。
冬は冷たくきりっとした味わい、夏はまろやかな口当たり、と季節に合わせた変化を味わえます。
冷やは米本来の持つうま味を感じられるため、特に純米酒におすすめの飲み方です。ただし、酒が持つ雑味もそのまま感じられるので、丁寧に造られた日本酒のほうがよりおいしく味わうことができます。
温かくした飲み方「燗酒」
「燗酒」は、日本酒を30℃以上に温めて味わう飲み方です。燗酒の中でも30〜40度を「ぬる燗」、45〜60度を「熱燗」と呼び、それぞれに細かい名称があります。
≪ぬる燗の温度による名称≫
30℃ :日向燗
35℃ :人肌燗
40℃ :ぬる燗
ぬる燗は、どれも米の香りや味が引き立つまろやかな風味を感じられる温度です。
≪熱燗の温度による名称≫
45℃ :上燗
50℃ :熱燗
55~60℃ :とびきり燗
熱燗は、温度を高くすることで米のうま味と甘みが一層際立ち、日本酒らしい風味をしっかりと味わうことができます。
おいしい飲み方3.酒器にこだわる
日本酒のおいしい飲み方3つ目は、酒器にこだわる飲み方です。日本酒にはこだわりを持っていても、酒器はあまり気にしていない人は多いかもしれません。
実は、日本酒は酒器によって香りや味の感じ方が変わってきます。選び方のポイントや、好みの酒器を見つけるコツを紹介します。
味を左右する素材
日本酒を口に含んだときの味わいは、酒器の素材によって大きく左右されます。
例えば、「ガラス製」の酒器は無味無臭で口当たりもよく、酒器そのものが主張をしないため、お酒の味だけをダイレクトに味わうことができます。見た目にも涼やかなことから冷酒や発泡酒に向いており、繊細な味を楽しみたいお酒によく合います。
「陶器」は厚みがあり、やわらかな飲み口が特徴。「磁器」は焼成することでガラスのような材質になるため、すっきりとした口当たりを楽しめるほか、手に持ったときに温度を感じやすいので、燗酒にも向いています。
抗菌作用のある「錫(すず)」は、日本酒の持つ雑味や角を取り、口当たりをまろやかにするとされています。
見た目の好みだけではなく、日本酒の種類に合わせた素材の酒器を選ぶことも、より楽しめる飲み方といえるでしょう。
香りを楽しむなら口の広いものを
日本酒の香りをより楽しみたいのなら、飲み口が広い酒器がおすすめです。
飲み口が広がっている酒器は、空気と接する面積が大きく、ふんわりと香りが広がります。空気と触れて日本酒が酸化されることで、アルコール臭さを飛ばして香りの成分を揮発してくれるのです。
反対に、飲み口が狭い酒器は香りを閉じ込め、匂いを強く感じさせます。鼻を近づけるとまっすぐに香りを感じることができます。
爽やかで香りを楽しみたいときは飲み口が広いものを、しっかりとうま味を感じたいのであれば飲み口が狭いものを選ぶとよいでしょう。
ツウな飲み方が楽しめる「升」
日本酒をよりツウに楽しむなら、升で飲むことをおすすめします。升を使った日本酒の飲み方には、2つのパターンがあります。
1つ目は、升の中に置いたグラスに、なみなみと日本酒を注ぐ「もっきり」という飲み方です。
わざとこぼして注ぐのは、お酒を楽しむためのパフォーマンスとされています。
そのため、もっきりに飲み方のルールはありません。グラスの日本酒から先に口を付けたり、升の日本酒を空いたグラスに移したりして楽しみましょう。
グラスの下に置くものが、升ではなく小皿の場合もあります。
もう1つが、升に直接日本酒を注いで飲む飲み方です。木製升の場合、ヒノキなど木の香りを日本酒と一緒に楽しむことができます。
升から直接日本酒を飲む場合は、角ではなく面の部分に口を付けてすするように飲むのが正しい飲み方です。
とはいえ、この飲み方ではこぼれてしまうことがほとんど。そのような場合は、角から飲んでも問題ありません。
升を使って、いつもと違った日本酒の楽しみ方をしてみてはいかがでしょうか。
おいしい飲み方4.+αして楽しむ
ここまで、日本酒のおいしい飲み方を3つ紹介しましたが、最後に紹介するのは日本酒に他の飲み物を「+α」して楽しむ飲み方です。
ロックやお茶割りで楽しむ焼酎のように、日本酒も自由にアレンジを加えて飲むことができます。
日本酒カクテル
一般的にストレートで飲むことが多い日本酒ですが、日本酒と他の飲み物を混ぜた「日本酒カクテル」が新しい日本酒の楽しみ方として注目を集めています。
ウイスキーやラムなどの洋酒とは違い、日本酒は香りや味わいに極端なクセがありません。カクテルベースに使われるような洋酒と比べて度数も低くて飲みやすいため、実はカクテルにもぴったりのお酒なのです。
日本酒カクテルの中でもおすすめの組み合わせを紹介します。
日本酒ハイボール
炭酸水で日本酒を割る「日本酒ハイボール」は、炭酸の爽快感と日本酒の風味を楽しめるカクテルです。炭酸水と日本酒を2:1の割合にすることでアルコール度数も下がるため、お酒が弱い人でも飲みやすくなります。
レモンやミントを添えて風味をプラスしたり、炭酸水をサイダーやジンジャーエールなどの加糖のものに変えることで、より飲みやすく味わうことも可能!
簡単に作れるので、初めて日本酒カクテルにチャレンジする人にもおすすめです。
日本酒の緑茶割り
焼酎の飲み方として有名な「緑茶割り」は、日本酒にもよく合う飲み方です。緑茶の苦みを日本酒の甘みが打ち消し、まろやかな味わいが楽しめます。
日本酒の緑茶割りは、1:1の割合がおすすめ。冷たい緑茶で割って氷を入れればすっきりと、温かい緑茶で割ればホットでおいしく飲むことができます。緑茶の味わいを強めたい場合は、粉茶を足してもOKです。
また、緑茶を製氷皿に入れて凍らせた「緑茶氷」を日本酒に入れることで、冷たい緑茶割りを作ることもできます。氷で味が薄まらずにどちらのうま味も味わえておすすめの飲み方です。
日本酒アールグレイ
日本酒は、紅茶との相性も抜群! 緑茶だけでなく紅茶でも日本酒カクテルを楽しんでみましょう。
日本酒と水を1:3の割合で割り、アールグレイのティーバッグを入れてしばらく置いておきます。アールグレイの美しい琥珀色が映えるよう、ガラスの酒器で楽しむのがおすすめです。
なお、日本酒アールグレイを作るときは、アールグレイの香りを邪魔しない、香りが控えめの純米酒がおすすめです。
日本酒コーヒー
全く異なる組み合わせに感じられる日本酒とコーヒーも、深い味わいが絶妙にマッチする組み合わせです。
カップ一杯のコーヒーに、好みの量の日本酒を入れるだけでOK。ホット・アイスどちらのコーヒーとの組み合わせもおすすめです。好みに合わせて、生クリームや砂糖を加えてもおいしく味わうことができます。
日本酒の緑茶割りと同様に、製氷皿で凍らせた「氷コーヒー」に日本酒を注ぐ飲み方もおすすめ。カフェラテが好きなら、にごり酒と組み合わせることでとろりとした濃厚な味わいが楽しめます。
料理や好みに合わせておいしい日本酒の飲み方を見つけよう
日本酒は、一緒に味わう料理や飲む温度、使用する酒器によって、味わいや香りが異なって感じられる非常に繊細なお酒です。
しかし、飲み方に厳密なルールがあるわけではありません。
銘柄それぞれの個性にあった自分だけのベストマッチを探して、自由に楽しく日本酒を味わってみましょう。